月別アーカイブ: 2012年10月

MTX(メトレート® リウマトレックス®)を飲み忘れたらどうする?

リウマチ患者様の50%以上(当院では70%)の患者様がMTX(メトレート® リウマトレックス®)を継続して内服しています。MTXは平成11年に保険適応が認可されてからは関節リウマチの第一選択薬として大活躍しているお薬です。1錠が2mgで、症状に合わせて2錠から8錠まで増減して使用します。週1回曜日を決めて内服するのが特徴のお薬です。

MTXは内服して3日後(月曜内服なら木曜日)には完全に体内から排泄されて無くなっています。実はこれがリウマチに効く秘密なのです。

MTXは細胞分裂に必要なDNA合成を阻害するお薬なのですが、免疫異常のある細胞が増殖するのを抑えるには、この少量のMTXを週1回、急に与えることが効果的なのです。悪い細胞の寝込みを襲う奇襲作戦(ちょっと卑怯ですが)という感じです。

ですから、たとえば毎週月曜日にMTXを内服していた患者様がその日に飲み忘れたとします。何もあわてることなく、翌日の火曜日に内服すれば良いのです。また次の週は、いつも通りの月曜日にもどして良いのです。なぜなら火曜日に内服したMTXは3日後の金曜日には体の中から完全に排泄され無くなっています。

患者様がいつも何気なく続けているお薬ですが、その理由をご存じか否かで安心感もずいぶん変わってくるのではないでしょうか? 診察室に入ったらどうぞ遠慮なくご質問ください。


リハビリの空き時間帯

開院して3ヶ月が経ち、時間帯によってはウォーターベッドやスーパートラック(腰椎牽引)はしばらくお待ちいただくことがあります。そこで現在の患者様の来院状況をお知らせします。

午前中は11時から12時までが比較的空いています。午後診のある月・水・金曜日は3時から4時半までが待ち時間が少ないようです。ご迷惑をおかけしますが、お越しいただく際のご参考になれば幸いです。


山中伸弥教授ノーベル賞おめでとうございます。

今日の朝刊第一面はうれしい明るいニュースでした。

iPS細胞は皮膚のみならず、心臓や神経、整形外科領域では再生不可能とされてきた関節軟骨の修復治療にも応用できる「魔法の細胞」です。今後はどのようにして安全にiPS細胞に「魔法」をかけることができるかが研究の注目点です。山中教授が記者会見で仰った「本当の社会貢献は臨床応用されてから。さらに研究を急がなければ。」は本当に頭の下がる立派なお言葉でした。

私も大学院時代に2年間臨床を離れて、大阪バイオサイエンス研究所OBIで自身の研究をさせていただいた経験があります。私を直接指導いただいた先生は東京医科歯科大学医学部を卒業し内科に入局した後に臨床から基礎研究に転身されていました。私は大学院卒業後臨床にもどり整形外科医として経験を積みましたが、リウマチの切り札的な治療となっている「生物学的製剤」はまさしく当時の自然科学界における免疫学研究の成果なのです。現在私たちは患者さんとともにその恩恵を受けています。

ノーベル賞を受賞した山中教授をはじめ、日本には優秀な基礎医学研究者がたくさんいます。彼らは病院や診療所ではなく大学や研究所で日夜努力しているのです。しかもその成果を商業的に独占しようとせず、他国の研究者が追従し利用できるように早くから内容を英文雑誌に公表することで全世界から深い尊敬を受けています。私は日本の基礎医学界を牽引する先生方に感謝しながら一人でも多くの病気に苦しむ患者さんを救える臨床家、医師としてこれからも努力を続けたいと強く思う今日の朝刊でした。