月別アーカイブ: 2013年9月

「治験(ちけん)」に対する当院での取り組み(その2)

現在、関節リウマチの関節骨破壊を予防する注射薬の治験を予定しています。このお薬は、欧米では既に「関節リウマチ」に対する政府機関の承認が下りていますが、日本では「骨粗しょう症」に対してのみ厚労省の認可が下りているものです。「関節リウマチ」の患者様は「骨粗しょう症」を合併していることが多いため、当院でも既に「骨粗しょう症」に対する治療として、この注射薬を使用している「関節リウマチ」患者様も多くいらっしゃいます。
一般的に「治験」に参加する患者様のメリットとしては、
・効果が期待できる新しいお薬での治療を早期に開始できること。
・治験参加期間中の一部の検査費用や治療費の負担が免除され、経済的な補助が受けられること。
等があります。一方、デメリットとしては、
・日本国内では未だ確立された実績のない状態での治療に対する不安。
・治験に参加することで個人情報の保護に対する不安
等があるかもしれません。後者の心配されるデメリットに対しては、法令化された治験の実施基準(GCP)が制定されており、全ての治験はその基準の下に実施されます。また数ある治験のなかでも、当院に通院いただいている患者様にメリットが大きいと考えられる治験を私自身が十分吟味した上で皆様にお知らせしたいと考えています。
詳細は後日ご報告いたします。


骨密度が正常でも骨折しやすい病気?

最近は骨密度の低い閉経後の女性だけでなく、糖尿病や慢性気管支炎など呼吸器障害を持つ患者さんが性別にかかわらず、脊椎や大腿骨(股関節周囲)の骨折を起こしやすいことが明らかになっています。骨密度が十分あっても骨折しやすい病気があります。これらの診断と治療に関する話題が学会でよく取り上げられています。

骨はよく鉄筋コンクリートに例えられます。鉄筋はコラーゲンなどのタンパク質で、セメントはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル(骨塩)です。骨密度は「骨塩量」と言われるように後者のミネラル成分の量を測定しているのです。セメントが十分堅くても鉄筋構造が脆弱であれば建物は倒壊してしまいます。骨では前者のコラーゲン構造の強度を規定しているのが「架橋構造」と言われるコラーゲン繊維を束ねる仕組みです。糖尿病や慢性気管支炎の患者様はこの「架橋構造」が早期に変性してしまい骨強度が保てなくなることが最近の臨床研究からもわかってきました。その診断方法となる骨代謝マーカーは「骨粗しょう症」としては保険適応には残念ながらまだなっていません。しかし治療法としては既存の薬の中から選択することができます。

それぞれの患者様の病態に応じた骨折予防の薬剤選択が重要であることがおわかりいただけたでしょうか?これからも当院では専門医の立場として、骨粗しょう症・骨折予防の治療を積極的に進めて参ります。