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京都新聞連載 「気付いてほしい男性不妊」 全8回一挙公開 第2回

4月30日付京都新聞朝刊
②「外来の裏側では」
不妊の原因の約半数は男性側にあると述べましたが、
大方の男性は、「俺は大丈夫だ」と自信を持っています。
一方、女性は「ひょっとしたら自分に不妊の原因があるかもしれない」と思っている方がほとんどです。不思議ですね。
性格、体格、外見などから男性不妊が見分けられるということはまずありません。
がっちりとしたタフそうな人でも男性不妊の可能性があります。
逆に、細くて頼りなさそうな人でも問題ないことがほとんどです。
「男らしい性格」「男らしい体格」など、いわゆる「男らしさ」と男性不妊とは関係がないのです。
しかし、世の男性は勘違いしてしまうのですね。
「男性不妊」であるとは「男」であることを否定されたように思ってしまうようなのです。
男性不妊かどうかは、検査を受けてみなければわかりません。
一般的に、女性側の検査が終了して特に異常がないとなると、男性側の検査を勧められることが多いです。
しかしながら、精液検査や男性不妊外来の受診を勧められても、夫に拒否されることがしばしばあるようです。
「夫に怒られるから」と、言い出せない妻もいます。
時に、私の診察室に来てからでも「自分には関係ない」「不妊治療なんて必要ない」などと根拠のない自信を盾に怒りだす夫すらいます。
結局は「これ以上は検査や受診はしたくない」などと言って、妻を困らせることになります。
「男のプライドが傷つく恐れ」が受診の妨げになるのでしょう。
そのあたりの心情、事情もよく分かった男性不妊専門医は「男の味方」ですので、もっと気楽にしていただいたらよいのに、と思いますね。
近年は、妻の受診と同時にチェックを受けに来られる夫も少しずつ増えてきています。いい傾向です。
子どもは一人ではできませんので、夫婦のどちらが良くてどちらが悪い、という議論は無意味です。ご夫婦で協力し合い、いたわり合って、しっかり立ち向かってほしいと思います。


京都新聞連載 「気付いてほしい男性不妊」 全8回一挙公開

  

 4月23日より毎週火曜日、京都新聞に掲載されました医療コラム「気付いてほしい男性不妊」をブログに再掲載いたします。掲載当時、患者さんからご好評を頂戴しておりましたが、「見損ねた回がある」「はじめから読みたかった」「気付いてほしい男性不妊に気付かなかった」などの声もあり、今回ブログに移植させていただきます。京都新聞さんには許可を取っていないのですが、私が書いたものを再掲載して何か悪いことがあろうか、と見切り発車です。担当してくださった京都新聞社の日下田さんに改めてお礼申し上げます。

 
①「カップルの現状」

 皆さんは「不妊症」と聞いて何を連想しますか。
多くの方が、「女性の悩み」と思われるでしょう。
具体的に、不妊症で悩んでいる身近な女性や、不妊治療を受けていた有名人を思い浮かべる人も多いかもしれません。
 では、「男性の問題」とか「不妊に悩む男性」とか、連想できるでしょうか。
難しいですね。男性不妊で悩んでいる人の話なんて、これまでめったに聞くことはなかったですね。
この連載では、いまだにタブー視されている、「男性不妊の話」をしたいと思います。

 今や、「結婚、妊娠、出産」は当たり前ではありません。
統計によると、初婚年齢は年々上昇を続けており、2010年には平均で男性30.5歳、女性28.8歳となっています。
それに伴い女性の初産の年齢も上がり続け、昨年には30歳を超えてしまいました。
半数以上の方が30歳代で初めて出産を経験する時代になったのです。
 女性は年齢の上昇とともにだんだん妊娠しにくくなり、特に35歳以降は年を追うごとに急激に妊娠能力が低下します。
男性も年齢とともに生殖能力が低下します。
晩婚化と妊娠希望年齢の上昇に伴い、不妊に悩む人も年々多くなっており、
今や8組に1組の夫婦は不妊、とさえ言われます。
 では男性に不妊の原因が見つかることはまれなのでしょうか。
世界保健機関(WHO)によると、不妊で悩むカップルに男性不妊が見つかるのは50%に上るとされています。
言い換えれば、2組に1組は男性側が積極的に協力すれば妊娠できる可能性がある、ということです。
 しかし、実際には女性ばかりが不妊に悩んでおり、不妊は女性だけの問題と考えられています。
また、女性のための生殖医療専門医は多いですが、男性不妊の専門医は全国で数十人しかいません。
その理由は、世の男性が不妊は女性の問題だと思っているから、
不妊の原因が自分にあるとは思っていないために医療機関を受診しないから、だと思います。
 まずは、「男性不妊」の可能性に気付いてほしいです。