京都新聞連載 「気付いてほしい男性不妊」 全8回一挙公開 第3回

5月14日付京都新聞朝刊

③「精液検査」

男性不妊かどうかを判定する重要な検査の一つに精液検査があります。精液を顕微鏡で見るだけの一見単純な検査に思われますが、その解釈には奥深いものがあります。

精液の特徴を示す代表的な要素として、「精液量」「精子濃度」「運動率」などがあります。その他にも「奇形率」「白血球数」などの付属的な要素もあります。これらを総合的に解釈して精液のクオリティーを評価しています。

しかしながら、同じ人の精液でも各要素が一定の値を示すことは少なく、状況によりかなり大きく変動します。精液のクオリティーの変動幅が大きく、いいのか悪いのかさっぱりわからないという事態が容易に起こり得るのです。ですから精液は適当に採取するのではなく、一定の条件を整えて検査に臨む必要があります。

まず、採取の過程が重要です。例えば、前回の射精から何日経過しているか(禁欲期間)は各要素の数値に大きな影響を及ぼします。短期間ですと精子濃度は低く運動率は高めになる傾向があります。逆に、長期間になりますと濃度は高くなり運動率は低くなります。世界保健機関(WHO)の基準では2~7日となっており、私は3~5日目で実施するようにしています。

精液をこぼさずに全量採取することも大切です。実は、射精の前半と後半では精液の成分に大きな差があります。取りこぼしがあると極端にクオリティーが低下します。

また、採取してから検査するまでの温度も重要です。自宅で精液を採取して持参してもらう場合、特に夏や冬の時期には、過度に熱くなったり冷たくなったりしないように注意が必要です。

精液検査の方法にこだわるのは、正確な診断をするため以外にもう一つ別の理由があります。精液検査の結果が悪かった時に「適当に採取したためかもしれない」と、つい自分に言い訳をしたくなってしまうからです。事実に目を向けてもらうためにも、しっかりとした検査をする必要があるのです。