京都新聞連載 「気付いてほしい男性不妊」 全8回一挙公開 第5回

京都新聞5月28日付朝刊

⑤「精索静脈瘤」 

 精液検査の結果、精子濃度が1500万/㍉㍑未満になると「乏精子症」、500万/㍉㍑未満となると「高度乏精子症」と呼びます。また、運動率が40%未満となると「精子無力症」と呼びます。いずれの場合も、何らかのダメージを受けて精液のクオリティーが悪くなった状態と考えられます。

 そのような状態を引き起こす疾患の一つに「精索静脈瘤」があります。

 精巣は精索という血管の束にぶら下がっています。血液は精索の中の静脈を通って心臓へと戻るのですが、逆流してしまう人がいます。すると精索の静脈が膨れ上がって瘤(こぶ)のようになります。これが精索静脈瘤です。

 精索静脈瘤がなぜ精巣に悪影響を及ぼすのか、完全には解明されていません。精巣の温度が高くなる、老廃物がたまる、などの説が有力です。

まれに違和感や痛みを訴える人もいますが、ほとんどは無症状ですので、よほどひどい場合を除いて自分で気付くことはありません。精索静脈瘤の有無は、まず視診と触診で確認します。超音波検査により逆流を確認する方法もあります。

精索静脈瘤はその程度によって、軽度から重症まで分類されます。かつては軽症例も積極的に治療していましたが、治療後の精液所見の改善が限定的だったことから、軽症例は治療を行わなくなりました。

治療は手術療法が一般的です。手術用の顕微鏡を使用した方法では合併症の可能性が低く、手術による傷も小さく、痛みが少ないので、日帰り手術が可能となっています。私は重症例に限って手術をお勧めしていますが、8割程度の方に術後の精液所見の改善が見られています。

比較的簡単に治療ができて、その効果も高い精索静脈瘤ですが、残念ながら見落とされていることも多いようです。妻だけが受診していると、夫の精索静脈瘤はどうしても見過ごされてしまいます。精液のクオリティーが悪いと言われたら、まずは夫が精索静脈瘤をチェックするべきなのです。