京都新聞連載 「気付いてほしい男性不妊」 全8回一挙公開 第6回

京都新聞6月4日付朝刊

⑥「無精子症」

精液検査で精子が一つも見当たらない場合、「無精子症」といいます。無精子症は原因により二つのパターンに大別されます。

まず、精巣の機能は正常だが、精子の通り道のどこかで通過障害が生じ、精液中に精子が出ない場合を「閉塞性無精子症」といいます。

感染症や手術の既往など、閉塞の原因が明らかな場合もありますが、原因不明のこともあります。精巣は正常の働きを保っていますので、手術により精巣に小さな穴をあけ、中身を少量採取することで容易に精子を得ることができます。こうして得られた精子は顕微授精に使用可能であり、その成功率も高いです。

二つ目は、精巣の精子を作る機能が低下しているため、精液中に精子がみられない場合を「非閉塞性無精子症」といいます。精巣の機能低下の原因はさまざまで、遺伝子の異常など先天的な要因の場合もありますが、小児期の抗がん剤治療の影響など、後天的な要因の場合もあります。かつては治療不可能と考えられてきましたが、現在では手術により精子の採取が可能になっています。

非閉塞性無精子症の精巣は、ほとんどの部分がダメになっていますが、部分的に機能が残存している場合があります。つまり、射出精液にあふれ出るほど多くの精子を作ってはいないので無精子症となりますが、生き残っている一部分では、ほそぼそと精子を作り続けている場合があるのです。この部分を顕微鏡にて探し出し、少量の精子を採取する方法が、「顕微鏡下精巣精子採取術」といわれる手術です。こうして得られた精子を顕微授精に使用し、今までに多くの赤ちゃんが生まれています。

この手術が日本にやってきて14年がたちますが、どこでも受けられる手術とは言い難い状況です。非閉塞性無精子症でも赤ちゃんができる、ということすら知らない医師もいて、ときに誤った情報を伝えてしまうこともあるようです。患者さんには正しい知識を元に、正しい選択をしてほしいと思います。