ワクチンの講演会 10月のある土曜日

秋になると朝夕が冷えるため、外来に感染症の患者さんが増えてきます。感染症に対しては予防接種が重要です。この思いを抱いて麻疹・風疹、ポリオについての講演を聴きに出かけました。この時期になると各地で講演会が多く開催されます。もちろん常識的、基本的なことは承知していますが、講演会での勉強は断片的な知識を整理してくれます。

麻疹・風疹は国立感染症研究所の砂川富正先生のお話でした。江戸時代、人々は麻疹を恐れ、麻疹絵という御守りもありました。当時の人々が「命さだめ」として麻疹をこわがったことがうかがえます(図1)。ところが現在(2011年)では予防接種のおかげで100万人あたり3.6人の発症率であります。江戸時代とは雲泥の差であります。しかし麻疹撲滅を宣言するには100万人あたり1人未満の発症率とすることが必要なのです。今のところ沖縄県と茨城県が撲滅を達成しています。なお、日本で発症している最近の麻疹ウイルスはすべて外国株であり、外国旅行をした人は麻疹に要注意です。

次に風疹です。今年は全国的に風疹の発生が多く、特に成人男子の患者が多いことが特徴でした(男性は女性の3倍)。女性は妊娠を考え予防接種を受けることが多いのに対し、男性は受けることが少ないからと思われます。

ポリオについては福岡病院の岡田賢司先生が話をされました。ポリオは不顕性感染が多く、ごく一部の人が四肢麻痺を発症します。ただ治療法が全くなく、予防接種が唯一の有効な手段であります。ポリオの歴史は古く、エジプトの遺跡からポリオ患者と考えられる絵画が発見されています(図2)。アメリカのルーズベルト大統領もポリオにかかっていました。日本では戦後、大流行が起こりました。大流行を防止すべく昭和36年、ソ連から生ワクチンが緊急に大量輸入され、全1300万人の子供に経口投与されました。これにより急転直下、ポリオは激減しました(図3、4)。なお、日本は伝統的に不活化ポリオワクチン(現在、使用されているワクチンです)を研究していたのですが、とても不活化ワクチンでは自然界のポリオに歯がたたなかったのです。生ワクチンによって減少させることが出来たので、ようやく弱毒性ワクチン(不活化ワクチン)でも対応が可能になったというのが実情です。しかし自然界においてポリオは密かに生き続けております。中東地域ではまだポリオの発症があります。隙あれば我々人間の神経に潜入する機会を狙っているといえましょう。

ワクチンの意義をよく理解して健康な生活をおくりましょう。

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図1 麻疹(ましん)絵「麻疹養生弁」

 

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図2 右足の筋肉萎縮がみられる


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図3 ポリオ生ワクチンの緊急輸入を伝える新聞


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図4 小泉重田小児科のホームページから