東京へ 3月16日

日本東洋医学会の関東甲信越支部・東京都部会が開催した教育講演会に参加するため上京しました。テーマは消化器と漢方(図:当日のプログラム)であります。以前からこのテーマで勉強したいと思っていたので、ちょうど良い機会なので参加しました。

先に結論をいうと大変勉強になり、いつも以上に断片的な医学知識の整理がつきました。また初めて聞くこともあって参考となり、臨床の現場においては自分と同じような考え・印象を他の医師も共有していることを確認できました。特に今回は慈恵医大の松岡美佳先生の「炎症性腸疾患(IBD:irritable bowel syndrome)と過敏性腸疾患(IBS:inflammatory bowel disease)」、また足立医院院長・足立秀樹先生の「炎症性腸疾患などと漢方」という両講演が印象的でしたので概略を紹介します。

IBSは大腸、小腸に器質的異常がないのに下痢、便秘、あるいは両者が交代でおこる混在型の3病型があり、いずれも腹痛をともなう疾患です。診断はRomeⅢ基準に従います。IBSは大変に多い疾患であり、患者さんに対しては受容的な態度が必要です。腹痛には小建中湯がよいとのことです。

IBDには潰瘍性大腸炎とクローン病があります。演者の松岡先生も言われましたが、昔は「こんな病気もあるのか」という病気でした。しかしIBDは思っているより頻度が高い疾患であります。ですから最近は注目されており、昔に比べると予後も改善されてきました。患者さんは下痢、腹痛などという消化器症状を長年にわたり再発と寛解(完治したわけではないが、問題ない程度まで状態が良くなること)を繰り返すことになります。IBDのうち潰瘍性大腸炎は直腸に必ず病変があるのに対し、クローン病は回盲部を中心にした小腸に限局する病変であります。それ故、潰瘍性大腸炎では血便があるのに対し、クローン病では血便の無いこともあります。

IBDの治療ですが、潰瘍性大腸炎では5-アミノサリチル酸製剤(サラゾピン、ペンタサ、アサコール)をはじめ、ステロイド、チオブリンが治療の中心になっています。またクローン病も抗TNFα抗体が使用されるようになってから寛解率が上昇してきました。軽症の患者さんであれば、小診療所でも対応可能な疾患となってきました。ただIBS、IBDともに完全によくなることは難しく、患者さんには丁寧な対応が必要とされます。

腹痛、下痢、また血便を訴える患者さんでは、若い人ならIBS、IBDを考慮し、高齢者では体重減少に注意して大腸癌をも見逃してはなりません。さらに東洋医学的アプローチを組み合わせて(これをベストミックスといいます)、患者さんのQOLを高めることが大切であります。IBS、IBDの漢方薬処方においても虚、実という証を踏まえて処方することの大切さをあらためて学ぶことができました。

勉強後は、ホテルのレストランから緑深い皇居を眺望しました。とても素敵な眺めで明日への活動力が湧いてきました。

1
図:当日のプログラム

2
写真:緑深い皇居