台風の襲来、通過 7月14日

夏としては大型の台風が日本列島に襲来し、列島の南沿いをかすめる様に通過しました。台風一過の後は暑くて湿気のある日々がやってきました。各地において大雨や土砂による災害被害が出ており、これに心を痛めております。

報道で台風に対する注意・警戒が促されていたので自宅で諸雑用をかたづけることにしました。ただ1日中家に閉じこもっていますと次第に頭の働きが硬直してくるものです。「それでは」と思い切って小雨であることを見計らい外出し、講演会を聴きにいきました。

今回のテーマは「脂質による腎障害とスタチンの保護作用」というもので演者は熊本大学の大学院・腎臓内科・向山政志教授でした。なかなか内容はアカデミックで最新の研究にもとづき、いかに理にかなった治療を患者さんにしていくかが解説されました。正直なところ大いに考えさせられ、実地臨床における治療を考える上で参考になりました。

そこで帰宅してからスタチンについて復習をすることになりました。

メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)に対しては、今や国を挙げて対策を実施している疾患です。厚生労働省も一生懸命,広報につとめています(図)。メタボリック・シンドロームという疾患はまさにドミノ形式に次々と発展進行していくために「メタボリック・ドミノ」といわれています。メタボリック・シンドロームのひとつである脂質異常症の患者さんに対しては約20年前からスタチンという薬が投与されています。スタチンは良く効く薬で、血中のコレステロールを下げることは多くの研究によって示されています。また心血管イベント、これは心臓などの重症な病気のことですが、その発現にスタチンがブレーキをかけることも知られています。

ところが最近になってスタチンには脂質代謝だけでなく糖代謝や腎機能に対しても影響を与えることが分かってきました。

まずスタチンが持つ糖代謝に対する好ましくない作用についてです。それは、スタチンがインスリン分泌を低下させるというものであり、ここ数年において内外の報告で明らかにされました。これは世界中に大きな影響を与え、アメリカでは糖代謝の悪化、糖尿病発症についての注意書きがスタチンの添付文書に記載される事態となりました。ただ、この件については未だ詳細の不明なところも多く、今後も議論の余地があるようです。ですから現実的な考えとして「糖尿病リスクよりも心血管イベントの抑制効果の方が大きいこと、そこで患者さんの病態を十分に把握した上でスタチン継続投与をすることが必要」とするのが一般的な対応でしょう。

次に腎機能に対する影響です。これについては今回の講演会で詳しく解説されました。最近、慢性腎臓症CKD(chronic kidney disease)の患者さんに対しスタチンを投与したところ、蛋白尿が減少するということが分ってきました。さらにスタチンは糸球体濾過量(GFR)を上昇させる、つまり腎機能を改善するということも分ってきました。ただCKDとなっている糖尿病の患者さんにスタチンを投与した時、腎機能が改善するか否かについて明らかにするためASUKA試験が日本で実施されたところ、その結果は否定的というものでした。つまりCKDとなってしまった糖尿病患者さんではスタチンが腎機能を改善しないという結果だったのです。

以上のようにスタチンが糖代謝、腎機能に与える影響にはまだまだ未知のものがあります。そうとはいえ、スタチンには「心血管イベントの抑制」というメリットがありますので引き続き注意して対応していくことが重要です。

キャプチャ1
図 厚生労働省のホームページから引用