短かった夏 9月11日

今年の夏は7月に暑い日があったものの、8月は一日も夏日がなく雨が降る日々が多くありました。季節はずれの台風、集中豪雨と続き、大きな災害被害ももたらされました。特に広島での土砂崩れの惨状には深く心を痛めるばかりです。早くも9月も上旬が過ぎ去り、これから次第に秋の日々がやってくることになるでしょう。あの本格的な夏、猛暑には今年は肩すかしをされてしまった思いです。

さて秋になって朝夕が冷え込むとともに、風邪をひく人がふえてきます。咳などが出ても「たいしたことはない」と思っていると、思いがけず咳が長引くこともあります。

そこで今回は、咳が長引く疾患として代表的なマイコプラズマ感染症(肺炎)についてお話ししたいと思います。マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという菌により引き起こされる疾患であります。マイコプラズマ菌はいつ頃発見されたかというと歴史は古く1898年のこととされています。発見者はE.ノカルドとE.ルーというフランス人の様です。1937年になってマイコプラズマという名称を与えられました。

マイコプラズマ肺炎は通常の肺炎とは少し異なる経過をとりますので以前は非定型肺炎、異型肺炎などといわれていました。また、かつては4年に1度の流行があったのでオリンピック感染症と称されていました。しかし感染は何時でもあり、周期性はないことが現在では分かっています。またシーズン別にみると秋から冬にかけて患者さんが多くなること、年ごとに増加傾向にあることが明らかにされています(図1、2)。かかる人は学童以降が多いとされていますが、近年は年齢の高い人にも発症がみられ注意が払われています。天皇陛下も数年前にマイコプラズマ肺炎にかかられたことは記憶に新しいところです。

マイコプラズマ肺炎の病状としては頑固な咳、しかも痰のない咳がなかなか治まらないというのが特徴です。診察しても大きな異常がないのにもかかわらず、胸のレントゲンをとってはじめて肺炎が判明することもあります。なお最近は外来で簡単に出来る迅速検査法も開発され、診断の参考に供することが出来るようになりました。

治療はマクロライド系という抗菌剤をまず投与し、有効でなければ薬を変更する必要があります。少し難しいのですが、これはマクロライド系の薬に対し、耐性をもったマイコプラズマ菌が増えているからなのです。このような時、抗菌剤を変更する必要があります。

最近、日本小児科学会から出された提言・主張は大変参考になります(図3)。

大部分の患者さんは外来治療で治ります。しかし、悪化して入院が必要な方も少数ながらおられます。ですから長引く咳があれば「たいしたことない」と自己判断せず受診することが必要であります。

キャプチャ1
図1 マイコプラズマ肺炎 感染症発生動向調査
週報2011年50週(第50号)より

キャプチャ2
図2 マイコプラズマ肺炎基幹定点報告数年別推移(2000~2011年)
国立感染症研究所 感染症情報センター

キャプチャ3
図3 小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方
日本小児科学会による提言・主張 2013.2.19