燈火親しむ頃 9月16日

少し気が早い話と思うのですが、「燈火親しむ頃」といわれる秋がもうすぐやってきます。秋の夜長は静かで気温もちょうど良く、机に向かって読書をし、また文章を書いたりするのには、最適の環境となります。ただ最近では本そのものを読むより、コンピュータのディスプレイに表示される文章を読み、調べ物を検索キーでおこなうことが増えました。また筆記具、紙を使わずにキーボードを叩いて文章やメイルを書くことが多くなっています。ですから、このところはコンピュータが友人となり、様々な勉強をコンピュータで効率よく(?)しております。

というわけでコンピュータも利用し、ここ数日は機能性ディスペプシア(functional dyspepsia、以下FD)という病気について色々と勉強しています。そこでFDを少し紹介してみたいと思います。

FDは最近、注目されている消化器疾患といえるでしょう。ただ一般の人にはもちろん、医療関係者にも馴染みがうすく、まだ広く浸透していないのが現状でしょう。といっても本年4月にはFDの診療ガイドライン(写真1)も出され、その定義をはじめ治療法なども説明がなされております。ですから今後は少しずつですが、急速に知られていくことになるでしょう。

まずFDとはどんな病気でしょう。その定義をガイドラインでみますと「明らかな器質的疾患がなく、食後膨満感・早期満腹感・心窩部痛・心窩部灼熱感のうち1つ以上あり、その症状が6ヵ月以上前からあり最近3ヵ月間は症状を認めるもの」(RomeIIIの診断基準)とあります。これだけでは少し理解が難しく、従来からいうところの慢性胃炎と同じような疾患に思われます。

慢性胃炎は以前、神経質な人における神経性胃炎などと同じように考えられ軽く対応されたかもしれません。しかしFDと慢性疾患とは概念が異なるものであります。大事なことはFDを正しく診断し、適切な治療を行なうこと、そうすればQOL(生活の質)の向上が得られる可能性があるということです。出来れば内視鏡検査をすべきですが、まず十分に問診して薬物治療を優先させることもあります(ただし、この場合、薬物療法は4週間以内にとどめること)。ただFDの人はすぐに治療によって治るわけではありません。それはFDの人の経過は長く、良くなったり悪化したりするからであります。しかも出現する胃の病状・症状は多彩なので対応も容易でないことがあるでしょう。医療提供者とFD患者さんが一緒に治療を続けていくとかなり成果が上がることと期待されます。

FDは少し新しい概念です、完全な対処はすぐには困難かもしれません。適切な薬剤選択、また食事生活習慣を改善しながら少しでもいい方向に向かうことが重要と思います。

ところで秋は芸術の秋です。日常の雑事に取り紛れ、市川猿之助の神戸巡業に行くことを忘れてしまうところでした。先代・猿之助丈の後援会に入ったこともあり、猿之助贔屓も40年以上となります。神戸における当代の猿之助、まことに結構なその舞台姿でした(写真2)。

キャプチャ1
写真1 FDのガイドライン
編集 : 日本消化器病学会

キャプチャ2
写真2 会場に掲示されていた当日の上演スケジュール