ATIS 9月26日

最近、講演会に参加して新しい医学の話を聴いている時、また医学文献を読んでいると気になることがあります。それは聞き慣れない「アルファベットの略号」に出会うというものです。聞き慣れない、つまり、それが意味するところの医学的意義が分からないということなのです。ですから不安感に襲われてしまい、その後は「うわの空」状態になってしまいます。「あれ、自分は不勉強で取り残されているのかしら・・・・」という少しブルーな気分になり、焦燥感を感じるのです。

もともと医学では至便性が高いためでしょう、よくアルファベットの略号が病気を上手く表現するために導入されています。医学略号辞典のような書物が出版されている程です。日常よく使用している略号を元の正式な表現で言おうとしても、得てして言えないこともあります。知っている略号ならスムーズに理解して進むことが出来ますが、知らない略号にぶつかると不安感を吹き消そうとして俄然、勉強欲が刺激されます。

先日も、動脈硬化症について新しい文献を読んでいますとATISという略号の疾患にぶつかりました。「ATISとは何かしら??」と思い、まずはATISをネットで検索しました。するとAutomatic Terminal Information Serviceというものがヒットし、これは飛行場の離着陸情報ということでありました。次にヒットしたものはAdvanced Traffic Information Serviceというもので、これは交通情報を提供するシステムであることがわかりました。どうにも見当はずれなのでATIS、アテロームということで検索するとようやく意味が分かってきました。

ATISとはAthero Thrombosis(A、T、i、sの四文字をとっている)の略号であり、よく知っている医学用語でいうとアテローム血栓症を意味しています。ATISは欧米の学会では一般的に広く使用されている様子です。一方、日本ではATISについては広く使用されていないのが現状でしょう。そこで急いで文献を調べました。すると次第にATISについての全貌が浮かび上がり、色々なことを理解することができました。

ATISとは(勘違いかもしれませんが)ニックネームのようなものであり、正確な内容は「アテローム性の動脈硬化症は種々の虚血性疾患を引き起こすプラーク(粥状動脈硬化巣)の破綻につながる重要な病態ですが、ほとんどの場合は血栓症を併発しています。動脈硬化巣に形成される血栓は、冠動脈や脳動脈、末梢動脈でも同様のメカニズムで惹起され、心筋梗塞や虚血性脳血管障害、末梢動脈疾患を引き起こすことから、近年、これらの疾患はATIS(アテローム血栓症として一括して捉えられるようになりました」であります(図1 サノフィ株式会社のホームページから引用)。

以前は心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患は何れにおいてもアテローム動脈硬化症が進行し、狭窄した動脈内腔の血流障害から生じる疾患と考えられていました。しかし内腔径が狭窄していなくてもプラークが破綻して形成された血栓により疾患が発症してしまうことが分かってきたのです。

自分なりに理解してまとめると、ATISとは最近統一された疾患概念であり、「脳血管障害、冠動脈疾患、末梢動脈疾患」の3疾患をまとめて理解しようというものであります。ただ、考えてみれば現実的には脳血管障害は脳神経内科・脳外科医、冠動脈疾患は心臓内科・外科医、末梢動脈疾患は血管外科医がそれぞれの分野で診ております。しかし、ATISとして統一して考えれば、共通のメカニズムによる疾患群であり、内科・外科を横断的に存在する疾患であります。さらにまた初期のATISに日常、最もよく触れているのはいわゆるホームドクター(かかりつけ医)と考えられます。そこでATISの概念を医師も患者さんも広く周知する必要があります。

糖尿病、高血圧、脂質異常症という生活習慣病の方々においてはATISを常に意識して対応することが大切であります。困ったことにATISの患者さんは死因のトップを占めていることも示されています。ですからきめ細やかな対応が必要とされます。

以上のように新しい概念「ATIS」を捉えることによって、幅広い観点から生活習慣病の対処が出来るのではと考えました。

1
図1 分かりやすいサイトです
サノフィ株式会社のホームページ http://e-atis.jp/
から引用させていただきました