とある週末 6月8日

診療所の業務も金曜日になるとスタッフ一同、だいぶ疲れが蓄積してきます。そして金曜日が過ぎると(当たり前ですが)土曜日を迎えます。土曜日はお父さんが休日ということもあり、午前中の外来診療にお父さんの姿がよくみられます。お父さん自身が患者さんであったり、また予防接種を受ける子どもさんの付き添いということもあります。「明日は日曜日だ、医療機関が休診だ」ということに気付き慌てて受診される方もあります。それやこれやで土曜日の外来が終了しますと、週末で休むことができます。もちろん普段出来ない勉強にも時間を充てることができます。

というわけで、とある週末の土曜日、ゆりの園という大阪の舞洲にある花園に出かけました。また日曜日は知人の邦楽リサイタルを聴きに出掛けました。

ゆりの園という文字通りゆり一色の園があることを今回初めて知りました。神戸から阪神高速を車で走って30分ほどでいくことができます。見事に2万本以上のゆりが咲いており、圧巻の眺めでした(写真1)。大阪湾の波打ち際にまで咲いており、はるか彼方に六甲山脈が遠望される絶景でした(写真2、3)。

次に邦楽リサイタル(図1)です。もともと三弦、筝などの音色は好きなので楽しい日曜日の昼下がりとなりました。宮城道雄の名曲「春の海に」が演奏されたのですが、宮城道雄が神戸の生まれであることを初めて知りました。会場の朝日ホールに隣接している銀行の敷地内に生誕の記念碑があるとのことなので見に行ってきました(写真4)。よく知っている、いつも通る神戸の街にこの様な文化スポットのあることに驚かされました。

このようにリフレッシュし、あとは机に向かっての自宅学習となりました。

今回はメールで配信されてくる医学論文のアブストラクト(抜粋)の幾つかに目を通しました。昔であれば各種の医学雑誌を机の上に積み上げて論文を読み、情報探しをしたものです。本もたまって積み重なると場所をとり、廃棄処分もそれなりに大変でした。しかし本当にネット社会は便利であり、本の山積みから解放され、その恩恵にあずかっています。

さて今回は2つの論文に興味がひかれたので紹介します。いずれもケアネットという医学サイトの中にあったものです。

ひとつは神戸大学感染症内科、山本舜悟先生の記事です。尿路感染症は日常多い疾患ですが、大方の人において予後は良好です。しかし一部に治療に抵抗する場合があります。糖尿病の人、体力の低下した人、尿管カテーテルを挿入している人、授乳婦人などでは治りにくいことは時に経験するところです。これらをいわゆる危険因子として臨床医は認識していることでしょう。しかし本論文によりますと3つの予測因子が重要であることが示されています。それは尿路結石の既往、尿のPHが7以上、腎障害(eGFRが40以下)というものです。これら3因子がすべてなければ泌尿器科的異常の可能性は低いというのです。また反対に3因子がそろっている時は、超音波検査で水腎症がないかを確かめるとともに、より注意して対処することが重要というのです。水腎症、そして尿閉という病態はショックに陥り、予後不良となる可能性もあるからです。

次に握力検査が心血管疾患リスクを予想できるという論文です。この論文はLancetという有名な医学雑誌(オンライン版2015年5月)に掲載されものです。結論を一言でいうと「握力検査で筋力低下が確認されると心血管疾患のリスクが高くなる、つまり握力検査は心血管疾患死亡の予測ができる」ということです。詳細は略しますが、最終的に収縮期血圧よりも握力の方が予測因子として優れていたというのです。かなりユニークで面白い論文だと思います。握力測定は簡単に日常診療で出来ることでもあり、日常診療に取り入れようと考えました。早速、握力計を取り出し、平均握力値の表を横に並べ使用することにしました(写真5)。今後は握力検査を上手に組み入れるべきと論文を読んで考えました。

キャプチャ1
写真1 大阪湾の渚ゆりの花

キャプチャ2
写真2 はるか向こうは六甲山

キャプチャ3
写真3 満開のゆり

キャプチャ4
図1 リサイタルのちらし
(パンフレットより引用 一部抜粋)

キャプチャ5
写真4 宮城道雄の記念碑

キャプチャ6
写真5 握力計と平均値の表8