ダイエットの開始、ステロイド外用薬 6月27日

高血圧、糖尿病などの生活習慣病の患者さんに対して「生活習慣の改善をして下さい」と毎日診察室で御願いしています。なかでも肥満の是正=カロリー摂取の制限=つまり食べ過ぎないことは大きな指導のポイントとなっております。もちろん体重測定や腹囲測定をして注意を喚起しております(図1)。しかし、これほど実現困難(というか実現不可能)なことはないでしょう。とにかく人間は食べることによって速やかに欲求を満たし、ストレス解消をしようとするからです。かくして肥満は止まることをしりません、次第に酷くなってしまいます。かくいう私も肥満であり、これでは患者を説得する資格はありません。そこで一念発起し、自分自身の肥満解消に立ち上がりました。といっても難しいことをしたのではありません、ただ「食事摂取量を減らし、運動をしただけ」なのです。一体験記として参考になれば幸甚です。

まず食事摂取量です。夜間・間食は原則禁止、三度の食事は満腹を避けて腹7分目としました。最初の頃は空腹が襲ってきますが、これをひたすら我慢します、すると慣れとは恐ろしいもので空腹を次第に感じることが少なくなってきました。それどころか反対に次第に常に胃腸の調子がよくなり、体調も良好となってきました。次に運動療法です。運動といっても何も特別なスポーツをせず、ただひたすらに万歩計を装着して歩きました。そして万歩計の記録を毎日とり、あわせて歩行距離をも算出しました。すると自分の歩行した業績が目に見え大いに励みとなりました。

以上の方法で4月5日から肥満解消に立ち上がりました。単に歩行距離を記録しただけではピンとこないので東海道五十三次の踏破に置き換えてみました。すると4月5日にお江戸日本橋を出発したところ、6月16日には京都三条大橋に到着することができました(表1)。500㎞ばかりを歩行したことになったのです。短時間で制覇できたのは、ある程度進むといわゆる「ランニング・ハイ」となり、毎日歩くことが楽しくて仕方がない境地になったと考えられます。さて気になる体重減少、それは約4kg強でした。

さて肥満解消に専念しながら、机の前に座ってステロイド外用薬について勉強しました。ステロイドというとその副作用が一時マスコミで大きく広められたこともあり、大変怖がられている方が多い印象を受けています。しかしステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎に有効な薬剤であり、大変よく処方されています。ただ使用法をきっちりと守らないと副作用に悩まされることになります。そのためにはステロイド外用薬についての正しい知識が必要となります。

東京女子医大の皮膚科・常深祐一郎准教授によりますとアトピー性皮膚炎においてステロイド外用剤は「皮疹の重症度」「皮疹の部位」「年齢」の3つを考えて処方することが大切であります。まず重症度です。ステロイド剤は表2のようにストロング~ウィークの5段階に分けられており、皮疹の重要度により上手くこの中から薬剤を選択します。なお重症度は皮疹の広さには関係がありません。次に部位ですが人間の皮膚の厚さは部位によって異なっており、皮膚の厚さが厚いほど外用剤の吸収は悪くなり、反対に薄いと外用剤の吸収は良いのです。前腕の皮膚の厚さを1.0とすると頭や陰部は皮膚が薄いため吸収が多く、逆に手首は吸収が少ないということになります(図2)。ですから皮膚の厚い部位ではストロングの外用剤、反対に皮膚の薄い部位ではマイルドな外用剤が使われます。最後に年齢です。年齢が低いほど皮膚が薄いので成人よりも1ランク下の外用剤を選択することになります。実際には表2を参照にして処方することになります。

いずれにしろステロイド外用薬は中途半端な使用ですとアトピーの炎症は治まりません。十分な量を必要な期間使用することが大切です。ひとつの目安として成人の人差し指における第一関節から先の量(これを1 Finger Tip Unit :1FTUといいます)を手のひら2枚分の広さに塗るという方法があります。またあまり擦り込むのではなく指や手のひらで薄く塗ること、これを1日2回(入浴後と起床時)実施するのが原則です。最近では血液検査も組み合わせながら上手く治療をしていくことも推奨されています。実際には主治医の先生と十分に相談しながら治療を実施して行くことが大切です。ステロイド外用薬を正しく使用し、副作用を回避しアトピー性皮膚炎を治癒していくこと、これこそが重要なのです。さらにステロイドである程度炎症がおさまれば免疫抑制作用のあるタクロリムスという外用剤も有効なので広く使われています。

キャプチャ1
表1.東海道五十三次の踏破記録

キャプチャ2
図1 日本医師会のホームページ 健康ぷらざから

キャプチャ3
図2 ヒトにおけるヒドロコルチゾンの経皮吸収性の部位差
マルホ製薬のホームページから引用させていただきました

キャプチャ4
表2.(公財)日本アレルギー協会
よくわかるアトピー性皮膚炎から引用