高齢化社会 9月26日

自然災害が日本列島で立て続けに起こりました。鬼怒川の大雨による堤防決壊、阿蘇山の噴火そして地震の頻発等々、まことに心を憂う出来事が起こりました。とりわけ鬼怒川の水害にあわれた上総市をはじめとする被災者の方々に強い思いをはせております。今から約20年前に阪神淡路大震災で体験した自分自身の苦労を思い出し、将来の力強い復興を願っているところです。このような重苦しい気分の中、敢えて高齢化社会という少し重い命題について考えてみました。

今回、国立のがん研究センター中央病院の荒井俣明・院長による「がん医療に見る日本の針路」というテーマで講演を聴く機会があり、高齢化社会と癌について考えました。

まず高齢化社会についてですが、その言葉の定義について再確認しました。言葉の意味を明確に理解していないと各種の統計や報告をみても分からなくなってしまうからです。というわけで少し改めて整理してみました。

よくいわれている高齢化率とは総人口に対する65歳以上の高齢者人口が占める比率をいいます。この高齢化率が7%、14%、21%を越えたとき、それぞれ高齢化社会、高齢社会、超高齢化社会といわれています。これを理解して図1に示された日本の人口推移をあらためてみますと我が国は昭和45年に高齢化社会、平成7年に高齢社会、そして平成22年には超高齢化社会となったことが分かります。さらに平成25年10月1日には高齢化率は実に25.1%に達し(内閣府による報告)、しかも我が国の高齢化率は今後とも上昇し続けるわけです。さらに注目すべきことは、これほど急速に超高齢化国家になった国は、日本をおいて他にはないということです。先進諸国7カ国で比較すると日本に高齢化率は速いスピードで上昇していることが分かります(図2)。これを逆に表現すれば64歳未満の人、なかでも0~14歳の子供が減少するということでもあります。事実、図3の人口ピラミッドを見ると明らかなように我が国では昔は「釣り鐘型」でありました。しかし今は「逆釣り鐘型」へと変わってきています。つまり高齢者の人口が増加し、生産年齢人口が減少しているということなのです。平成24年の現在、高齢者1人に対し現役世代2.4人が支えている状況なのです(図4の騎馬戦型)。

つまり以上のことを言い換えますと、「今後は子どもが減って高齢者が増えていくこと」であり、次第に「総人口が減少していくこと」なのであります。実際に平成23年の1億2730万人をピークに総人口は減少に向かっております。このままいきますと平成72年には1人の高齢者に対し現役世代1.3人で支えるものと予測されています(図4の肩車型)。

以上のことを冷静に分析しますとこれからの日本は成熟国家であること、故に遺憾ながら所得や消費が増えないため経済成長は望めないと推測されます。社会の生産性が低下し、補完能力が低下する時代なのです。つまり「足りない社会」になるのです。

さて、以上のような「足りない社会」である高齢化社会において「がん」という病気への対応はどうなるのでしょうか?これについて荒井氏は講演で重要なポイントを幾つかお話しされました。以下にその一部を抜粋しました。

現在、我が国では毎年およそ75万人の人ががんになり、35万人の人ががん死亡に至っています(35万人ということはジャンボジェット機で実に700機分の乗客数に相当します)。図5をみてもわかる通り高齢者の方にはがんが多いのです。ですから当然ながら高齢化社会では今後、がんの方が増加することが見込まれます。つまり日本は「長寿国家」であるのと同時に「がん大国」になるわけです。ところが高齢の方ががんになられても、国家は足りない社会なのです。そのため「十分な医療資源が確保できない可能性」があるかもしれません。いや、きっと困難と危惧されます。そこで我々は知恵を絞り、様々な有効な工夫をすることが重要になってきます。その工夫のひとつにいわゆるゲノム医療があります。ゲノム医療はまだ先のことと考えがちですし、医療者でもピンと来ないのが正直なところです。しかし近い将来、創薬、遺伝子治療等々が必ず実用化されるでしょう。これにより高齢化社会のガン治療も円滑にいくものと期待したいところです。現段階ではゲノム医療の具体的な成果はまだ見えていません。首相官邸においても本年2月ゲノム医療実現推進協議会が設置され、今後の動向に期待がもたれているところです。

今回は少し異なった視点での考え方が体得できました。

キャプチャ1
図1 我が国の高齢化の推移と将来推計
総務省25年版 高齢化の進展より引用

キャプチャ2
図2 先進諸国7カ国の高齢化率の推移
総務省25年版 高齢化の進展より引用

キャプチャ3
図3 釣鐘型から逆釣鐘型へとうつしつつある人口ピラミッド
総務省の国勢調査からの引用

キャプチャ4
図4 一人の高齢者を何人の非高齢者で支えるのでしょうか
社会保障・税一体改革関連資料(社会保障制度改革国民会議平成24年11月30日)の引用

キャプチャ5
図5 高齢者にはがん患者が多い
2015 国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページからの引用