開業医、その日々の研鑚 10月5日

昔から日本では町医者のことを開業医と呼んでいました。最近では「かかりつけ医、家庭医、プライマリーケア医」等という呼称なども使われています。要は地域に定住し、身近で幅広い視点で患者さんを診る医者のことであります。また近年は御高齢の方の在宅診療に従事する町の医師を「在宅主治医」といったりしています。一方、病院の医師(いわゆる勤務医)は専門性が高いのですが、大病院でも「総合内科医」という分野が確立されています。つまり今や幅広い目で患者さんを診察する医師の養成がなされているのです。まあ開業医であれ、勤務医であれ、幅広い視点で患者さんを診ることが今や要求されている時代なのです。

いうまでもなく開業医、勤務医とも日々現場で絶えまなく患者さんに応対しています。ただ医師の日常業務は煩雑を極め、多忙にとり紛れてしまうものです。したがって常に新しい医学知識を収得し、これを武器として幅広い視点で患者さんを診ることはなかなか困難です。常に新知識を体得し続けることは、不可能に近いことであります。そこには不断の努力、強い意志、等々が必要とされるからです。このような現状の中、医学知識を要領よく取得するためには如何にすればよいのか、この方法について長年考えてきました。その方法の一つとして医学講演会を聴きにいくこと、これが極めて有効な方法であることを最近(今更ながらですが)、再認識しています。講演を聴くと当然、既知のことも多くありますが、素直に知らない知識に触れて感動することもあります。医師とは死ぬまでずっと勉強という研鑚を日々つんでいかねばならない(辛い)職業といえます(もっとも、医師だけに限るわけではありませんが・・・・)。

今回も新しい知見・情報を求めて講演会に出かけました。

藤田保健衛生大学の植西憲達教授による「普通でない超音波検査もみにつけよう!」というタイトルの講演でありました(図1)。同教授が勤務するICUにはハイリスクの患者さんがたくさんおられます。これら重症患者さんでもレントゲン、CTまたMRI等の検査をせねばならない時、検査室へ移動する必要があります。しかし重症患者さんでは検査室への移動でさえ大変な負担です。その点、超音波では患者さんの移動は不要であります。つまり超音波装置の方から患者さんのベッドサイドに移動するわけです。ですから患者さんには身体的負担はないのです。その利便・至便性には高いものがあります。このような利便性を聴いた後、色々な超音波検査の使い方を御教示いただきました。明日からでも日常診療ですぐにも利用できる使用法もありました。特にこの中でも眼球および肺における応用については興味深く拝聴しました。そこで二件について概略を紹介いたします。

眼球に上手に超音波グローブを当てると外から見ただけでは分からない眼球外傷も評価できることが呈示されました。たしかに顔面外傷の患者が意識がなく閉眼している時、その眼球の障害有無は分かりません。このような病状でも超音波を用いれば眼球損傷が観察できる可能性のあることが理解できました。また超音波の動画でみると対応反射も観察できることが示されました。正直、「こんなことも可能なのか」と、これは少し感動致しました。

次に肺における超音波検査の応用についてです。同手技は少し難しいものの、習熟すればかなりの貴重な情報が得られることを今回知りました。その技術習得のための基本的なこととして肺のslidingの消失、B line、Seashore sign、A lineという所見です。これらは重要なポイントです。ただ紙面に書いても分かり難いので割愛しますが、次のYou Tubeなどで分かりやすく解説されています。ご興味のある方は是非、ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=WiwZ9AD8TeQ)
http://pulmonary.exblog.jp/17476051/

現在、一生懸命動画などを観て習熟に努めているところです。小さな気胸についてはレントゲンよりも有効性が高いこともあるということでした。これまで「レントゲン検査、これが気胸には唯一無二という考えだった」のですが少し思いが変わりました。超音波検査は従来の触診をさらに飛躍させた優れた方法だと感じている次第です。

感動的な講演会の後にはすぐ横にある百貨店の屋上に上りました。爽やかな秋の空と神戸の山々を眺望しました。ここの位置からこの角度で神戸の街を見下ろしたのは初めてのことです(写真1、2、3)。そんなこんなで気分も入れ替え、明日からの日々に備えることとなりました。

151007.1キャプチャ図1 当日のレジメ表紙

151007.2キャプチャ
写真1 青い木々と市章山

151007.3キャプチャ写真2 元町通りと須磨の山並み


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写真3 百貨店の屋上に佇む神社