体育の日 10月12日

10月12日は体育の日です。各地の小中学校では運動会がさかんに行なわれました。運動会で精一杯頑張った子どもさん達が、ほどよく日焼けして元気に走っている姿をあちらこちらで見かけます。その元気さに触れるとこちらまで気分が楽しくなってきます。運動の秋、まさに今真っ盛りです。空も青く高く澄んでおります。この良い季節のもと、ただボンヤリしていては勿体ないので私もつとめて体を動かすようにしています。といっても特別な運動をするのではなく、ひたすら歩き回ること、つまりウォーキングに励んでいます。

今年の4月にはじめたウォーキングも先ずは東海道500kmあまりを踏破し、さらに6月17日からは松尾芭蕉の奥の細道コースを歩きはじめました。つまり芭蕉と同じ道を巡って歩くもので特別難しいプログラムではありません。万歩計で歩行距離を記録し、地図上に到達日時を入れていくわけです(図1)。10月初めには歩行距離が700kmとなり、ようやく奥州・平泉に着きました。あの有名な芭蕉の句作「夏草や兵どもが夢の跡」(写真1)を頭の中で反芻(すう)し、あと残り900kmの旅に意欲を燃やしているところです。ただ最近ひとつ困ったことがあります。それはウォーキングという運動によって、お腹が夏とは比較にならないぐらい秋では減るということです。何しろ食欲の秋、季節が良いので運動すればすぐに空腹になってしまうのです。暑い夏の食欲低下が懐かしくてたまりません。今や空腹を耐え忍ぶ日々のウォーキングです(苦笑)。空腹から気を紛らわすため、歩行の途中は神戸の裏小道の風景を楽しむようにしています(写真2)。そうして運動が終了すれば、今度は勉学の秋ということで机の前に向かうことになります。

今回は小児の急性胃腸炎について勉強しました。小児の胃腸炎は本当に外来で診ることが多い疾患です。厚生省の患者調査によりますと表1に示したように外来患者さんの数としては、消化器疾患は呼吸器疾患に次いで第2位を占めています。一般の小児科外来において大部分は比較的軽度なウイルス性胃腸炎です。しかし中には重症で脱水を発症し、そのため入院に至る患者さんも少数ながらあります。このように子どもさんの下痢症は様々な程度にわたる症状を呈し、しかも、その対応については小児科医師によって一律ではないというのが実情です。いわば各々の小児科医師が豊富な経験で対応しているのです。もちろん、これはこれで素晴らしいことです。一方、諸外国では小児の急性胃腸炎についてのガイドラインが多く出されており、ある一定の考え方・対応法が示されているとのことです。つまり比較的対応の統一が計られている様です。ようやく日本でも小児の急性胃腸炎のガイドラインが近日中に発表されることになりました。

今回、同ガイドラインの作成に携わった神戸市立医療センターの上村克徳先生のお話しを聴く機会がありました(図2)。なかなか興味深い話で胃腸炎の治療に対し、考え直すことが幾つかありました。一般に小児科、それも救急外来では輸液を実施し、薬剤処方をすることもよくあります。また必要に応じて便のウイルス・細菌検査、抗生物質、また嘔吐があれば制吐剤が処方されます。しかしこれらの対応については重症ならばともかく、軽・中等症では必ずしも必要ではないというのが最近の考え方です。大部分を占める軽・中等度の胃腸炎では脱水に対しては、点滴よりもむしろ経口補水療法で十分であるということです。また食事療法についてはミルクを稀釈する必要はないこと、下痢が改善して脱水が是正されれば食事は速やかに再開してよいこと、はき止めの薬(制吐剤)は必ずしも一律に使用することはないこと、これらのことが確認できました。

帰宅後、コクラン・レポート(別記注釈)なども参照して調べました。制吐剤は胃腸炎の嘔吐を減少させるエビデンスはないこと、ふらつく等の副作用があること、水分の経口摂取が可能ならば制吐剤がなくても嘔吐は止まること等がわかりました。アメリカの有益な小児科教科書ネルソンには「制吐剤は不要」と書かれています。以上のことは今回のガイドラインに入れられる予定の模様です。ただ留意すべきこととして、ガイドラインとは「決して絶対的なものではない」という点であります。あくまでも「患者と医療者の医師決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文章」ということであります。

近いうちに公刊されるガイドラインは今からに楽しみなものがあります。

注釈 コクラン・レポート
治療と予防に関する医療情報を定期的に吟味し人々に伝えるためのもの
(ウィキペディアから)

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図1 奥の細道  踏破の記録図

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写真1 切手となった芭蕉の句

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写真2 北長狭通のお地蔵さん
「心から鬼も仏もうまれくる」とありました

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1 傷病分類別推計外来患者数
H17年 患者調査 厚生省

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2 講演のレジメ表紙