年の瀬 12月25日

クリスマスを迎え、いよいよ今年も過ぎ去ろうとしています。公園の中を行くと見事なまでに黄色い銀杏の濡れ落ち葉が重なり、絨毯状になっていました(写真1)。その上を静かに靴で踏みしめて歩いてみました。まさに寒い冬が近づき、木枯らしが強くなってくるという風情に満ち溢れていました。

さて年末となって神戸に縁のある人が御二人亡くなられました。その御二人とは野坂昭如氏と水木しげる氏です。

野坂氏は生後間もなくから神戸に住み、少年期に神戸大空襲に遭遇し、その体験を元に「火垂るの墓」という小説を発表しました。火垂るの墓はアニメーション映画となり、今も大勢の人の共感を得ているところです。戦後は神戸を離れ、東京で作家、タレントまた政治家としてマルチな働きをしました。最後まで戦争反対の姿勢を貫き、その生涯の活躍に目を見張った人も多いことでしょう。

水木氏は、いうまでもなく漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者です。いわゆる妖怪漫画の第一人者です。戦後、神戸市兵庫区の水木通りにあったアパートに大家として住み、好きな絵を描いたものの生活は楽ではありませんでした。本名「武良茂」の名前で紙芝居の画を描いてもあまり売れず、水木通に住んでいるので「水木さん」と呼ばれるうちにペンネームが水木となってしまったと、御本人は言われています。現在、「水木サンの幸福論」(日本経済新聞社 写真2)という本を数年ぶりに読み直しをしてみました。「幸福の七か条」という幸せになるための知恵が書かれています。なかなか奥深い含蓄が呈示されており、あらためて味わいを噛みしめているところです。

ところで季節は師走、つまり先生も走るという時候です、ですから講演会のハシゴをして走ってみました。駆け足で回った記録をダイジェスト風に記してみました。

ひとつ目は産業医の研修会でパワーハラスメントについての話でした。演者は労働衛生コンサルタントの角森洋子氏でした。パワーハラスメントとは誰もが知っている言葉です。この言葉は日本で創られたいわゆる和製英語であり(したがって欧米人には通じない)、また法的な定義も明確でないと聴き、少し驚きました。労働者の方々の相談内容としては、以前は解雇が多かったのですが、最近はパワーハラスメントが最も多い状況とのことです(図1)。パワーハラスメントは労働者にとって人権侵害であり、企業にとっても損失が多いものです。その解決に向けて誰もが取り組めば生産性が向上することが期待されます。厚生労働省は①パワーハラスメントに対しての必要性と意義②共通認識をもつ③どのようなことをすれば良いのか、これらをテーマにワーキング・グループを開催しました(図2)。これは平成24年11月のことであり、同報告内容についてはインターネットで読むことができます。また個々の具体的事例について広く広報されており、大変分かり易く参考になるものです。個人的にも大変興味深く読みました。いずれにしろ「パワーハラスメントがないことを確認する安全配慮義務が必要なこと」、これを痛感したところです。

ふたつ目はガラリと変わって笑い学会のオープン講座です。講師は京都西山短大講師の松坂崇久先生、テーマは「笑いからみえるヒトの特徴とは?~チンパンジーと比べながら~」です。いつもながら、笑い学会の会は明るく笑いに溢れています。ヒトとチンパンジーの笑いを比較し、改めて人間の笑いの意義を考えてみるという趣旨のお話でした。笑いの点からみてヒトと限りなく近いのは、(サル、オランウータン、ゴリラではなく)チンパンジーとのことです。しかしヒトとチンパンジーの笑いで異なるところは、次の3点であります。それは

①ヒトはみんなと一緒に笑う

②ヒトには攻撃的な笑いがある

③ヒトにはユーモアの笑いがある

というものであります。言い換えれば、

①チンパンジーは仲間と一緒に笑うことはなく

②他の仲間を嘲り笑うことがなく、冷笑することもなく

③気の利いた言行動をして仲間を笑わせることはない

ということになるでしょう。つまりヒトはやはり(当たり前ですが)チンパンジーとは異なり、深い人間性があることを再認識しました。やはりヒトは

①みんなと一緒に笑い

②ヒトを冷笑するような攻撃性の笑いを避け

③あたたかい人間味溢れるユーモアを大切にすること

これが大切であることを再認識しました。笑いは実に偉大でパワフルです。これからも是非、上手く使用していきたいと思い会場を去りました。

さて本年これが最後のブログとなります。偶然来年の干支「猿」の話で締めくくりとなりました。当院は12月28日の午前中までの診察業務体制とし、新年は1月5日から通常の体制となります。皆様、良い新年を御迎え下さい。

キャプチャ1 
写真1 絨毯になった銀杏の濡れ落ち葉

キャプチャ2 
写真2 水木さんの幸福論の表紙
日本経済新聞社

キャプチャ3
1 パワーハラスメントに関する相談は増えている
角森洋子氏の講演原稿レジメより引用

キャプチャ4
2 厚生労働省 ワーキング・グループの報告
平成2411