新春を迎えて 1月11日

今年の正月の三が日(一日から三日まで)は、暖かい穏やかな日々でした。昔、正月といえば大変寒い日々であった記憶があります。また町の正月風景が、様変わりしている印象を受けました。例えば昔に比べて正月に晴着を着る人が少ないこと、玄関のしめ縄飾りをしている家が少ないこと、また子ども達が凧揚げ・駒回し・羽子板遊びなどをしなくなった・・・・等々です。一方で今やコンビニ・マーケットは正月中も24時間普通にオープンしており(一部の大手百貨店では元日から開店)、正月といっても変わらない日常生活となっております。つまり「おせち料理」という保存食を作らなくても食料が簡単に入手できる便利な時代になったわけです。若い独身時代、正月は何処の飲食店も休みのため、不安一杯となりホテルで食事をした覚えがあります。「時代というものは少しずつ変わっていくもの!」と感じました。

このような時代の変化を感じながら所用でホテルに赴いたところ、ロビーにあでやかな正月の飾りつけがあり、新年を迎えた気持ちになりました(写真1)。また公園の桜の木をよく見ますと既に固いツボミがしっかりと芽生えており、「春近し」という自然の営みの力強さを感じました(写真2)。そして動物園に足を向け、今年の干支である猿を眺めようやく新年を迎えた気持ちになりました(写真3)。

さて正月ですからゆっくりと寛ぎたいところです。しかし臨床家という職業はなかなか休めないものです。普段から自分なりに気になっている幾つかの臨床医学に関する案件を書きだし、正月休みの時間のある限り解決に努力し、知識の習得・確保に頑張ることとしました。

新たな年初めということでとにかく基本第一に立ち戻ってみました。

まず肥満についてです。現代は飽食の時代といわれ、ストレスからくる過食から多くの人が肥満となっています。肥満の評価のためにはBMI(Body Mass Index)、ウエスト周囲が特定健診で採用され、一般にも広く周知されています。しかし意外と肥満の正しい解釈と適切な対応までには踏み込まれていない気がします。日常の外来診療においても「肥満ですね、減量してください」と説明すると患者さんはバツが悪そうに「はあ、分かってはいますが、つい口がいやしくて・・・」などと照れ笑いをされてしまいます。そしてせいぜい食事のレシピを呈示するぐらいで終わってしまいます。そこで一歩前進するためにまずBMIの数値を示して御自身の肥満の程度を知っていただき、次に標準体重は何kgかを示し、最後に1日の必要カロリーを教示すること、これらをまずすることにしました。次に例えば必要カロリーが1600カロリー/日と算出されたならば、その食事内容の具体的な献立例を写真などで分かり易く提示して説明します。すると患者さんはその献立をみて「いかに自分が食べすぎているか」などと認識していただくことになります。もちろん食事だけではなく運動も必要ですが、これは個人の現状をみて細やかに対応していく必要があります。このように簡単なことで今更ですが基本に立ち返り、患者さんのモチベーションを上げることが重要と考えました。平成26年の国民栄養調査によりますとBMI25以上の肥満者は男性28.7%、女性21.3%であります。つまり日本人の4人に1人は肥満ということなのです。これは大変な数値であり、肥満は「今一度考え直すべき一大テーマ」であります。

次に新しく改訂された蘇生ガイドラインについてです。昨年10月に日本蘇生協議会(JRC:Japan Resuscitation Council)が蘇生ガイドラインの改訂版を公開しました。心肺蘇生法はAEDを中心にした市民救急救命士の養成を通じて広く一般の人々にも浸透しているところです。今回の改訂版は基本的には従来のガイドラインと同じなのですが5年に1度の改訂なのです。その改訂ポイントは表1の通りです。胸骨圧迫は強く(標準的な大人では約5㎝で6㎝を越えないこと、小児は胸の厚さ1/3)、速く、絶え間なくすること、また人工呼吸ができなければ胸骨圧迫のみを行うということが注目されると思います。また心停止していない人に胸骨圧迫をしても重大な有害事象はなく、ためらうことなく胸骨圧迫をすることが薦められています。このように少しずつ改変されています。

次は電子カルテについてです。現在、電子カルテを採用している診療所は新規開業を除くとまだ少数にとどまるでしょう。当院では電子カルテを取り入れ、すでに3年以上になります。アメリカでは日本と異なり、「電子カルテを採用すべきか」という議論は終了しており、「如何に電子カルテを上手に使いこなすか」に関心が注がれています。残念ながら日本製の電子カルテは、まだまだ上手に使いこなせるほど利便性の高い製品はないように思われます。ソフトを作成しているエンジニアが実際の医療現場に無関心なためかと思われます。したがって一部便利な機能があるかと思えば、その一方で全く基本的なことができません。例えば保険の自己負担金割合を一割と入力しても速やかに三割へと自動的に勝手に負担割合を変更してしまうなどという不具合です。まことに恥ずかしいレセプトが作成されてしまう有様であり、遺憾ながら電子カルテとはこの低レベルのツールなのです。そのため便利になって時間が節約できると思いきや、それどころかかえってストレス時間が増えるというのが現状です。それでも電子カルテで最高に良いことは、とても手書きカルテでは作成できない格調高いカルテが短時間で仕上がるということです。そのためには自立で独創的な工夫を凝らし、これを電子カルテに強制労働させる姿勢で臨むことが必要です。結論的にいえば、「電子カルテに期待を寄せては絶体にいけない、すべきことは工夫を凝らして自分の掌中におさめるようにする、つまり粗暴な駄馬を飼いならして自分の意のままに動かす」ということに尽きます。

最後に(長くなって恐縮ですが)骨粗鬆症について少しだけ触れます。とにかく骨粗鬆症の人は多く(推定1300万人)、しかもその多くの方が適切な診断を受けていないということです。またせっかく治療を受け始めた人も(効果が実感できないためか)脱落する人が多い、これが現状なのです。最終段階として大腿骨近位部骨折が発症し、その数は毎年10万人以上にのぼっています。大腿骨を骨折すると寝たきりとなることも多く、追い打ちをかけるように認知症がおそってきます。ですから適切な早期発見・治療が重要というわけです。

年の初めに色々と考えを深め、あらためて神戸の港に出かけました。神戸空港には美しい神戸の街を展望できる素敵なスポットがありました(写真4)

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写真1 ホテルロビーの正月飾りつけ

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写真2 公園の桜の固いツボミ

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写真3 今年は申年、動物園の猿に挨拶にいきました。
猿には人間社会と共通した表情豊かさがあります。

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表1 蘇生ガイドラインのポイントは
(日経メディカル2016 No.578 p15より引用)

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写真4 素敵な神戸空港のスポット