一月も、早や下旬 1月23日

年が明け、「七草がゆ」を食べたかと思うと成人の日と続き、そして大寒(21日)も過ぎ去っていきました。正月は気が緩みつい食べてしまう上に、あまり体を動かさず運動不足となってしまうものです。とりわけ生活習慣病の人ではせっかく正月まではコントロールが良くなっていた血圧、血糖値、体重などがコントロール不良の状態に戻ってしまう傾向があります。正月明けの外来診療では、このリバウンドを日々感じるところです。ですから正月気分を早めに切り上げ、再び健康に留意することが大切でしょう。

長野県の軽井沢町でスキーバス転落という悲しい事故のニュースが入ってきました。現時点では、詳細な原因は不明で今後の的確な究明が待たれます。それにしても未来のある若い大学生の方々が多く亡くなられ、まことに哀惜の念に堪えません。報道を見る限り、この事故は安全対策が十分でなかったためかと思われます。そこで「他山の石の教訓」として自身の診療所における安全対策を見直し、十分な医療安全管理の対策をしていくべきと考えました。

今回は過活動膀胱(以下OAB;overactive bladder)について研賛を積みました。OABについては過活動膀胱ガイドラインの第1版が2005年に公刊され、その後2015年4月には第2版(写真1)が刊行されました。今回の第2版はかなり内容が多岐にわたり、詳細に解説がなされており、一般医科向けのアルゴリズム(図1)も記載されております。実地医家の日常診療においては大変参考になっています。OABの定義は「尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば伴わないこともある状態」とされ、極めて明確に理解できるものです。その原因は排尿筋の過活動によるものと考えられています。

ではOABの方は多いのでしょうか。日本排尿器学会が2003年に実施したOABの調査では40歳以上で12.4%(810万人)にOABの症状があったと報告されています。つまり4人に1人というたいへんポピュラーな疾患なのです。推定患者数は1000万以上と考えられています。OABは男性よりも女性に多く、QOL(Quality of Life)を低下させています。OABについては医師に相談しにくいこともあり(医師も多忙なため患者さんに問診する余裕がない)、悩んでいる女性の方が多いのが現状でしょう。このように困らせられるOABですが、最近はだいぶ関心が高まってきています。アンテリオという会社の調査によりますと2012年から2013年の1年間において疾患認知率が最も上昇した疾患はOABであったことがわかっています(図2)。さらに生活習慣病の患者さんにはOABの合併が多いということも報告されています。つまりOABは誰にでもおこる珍しくない疾患というわけです。

次にOABの診断です。まず図3に示したような質問票を利用します。質問3が2点以上で全体の合計点数が3点以上の時には、過活動膀胱の疑いがあると考えていきます。その次には超音波を用いて膀胱残尿量を評価するなどの諸検査を進めていくことになります。

最後にOABの治療です。まず日常生活において御本人がすぐ出来ることからはじめることが大事です。日常で出来ることとは①膀胱訓練②骨盤底筋体操③便秘の解消があげられます。

①  の膀胱訓練とは「尿意を感じたら5分間辛抱することからはじめ、1か月くらい継続する。これに成功すれば次に5分を10分間に延長する。最終的な目標は「2時間程度排尿をしなくて済むようにする」というものです。

②  骨盤底筋肉体操の詳細については省略しますが、要は「外陰部を数秒間締める、そのあとは1分くらい弛緩させる、この動作を10回繰り返す」というものです。

③  便秘は膀胱を圧迫するために尿意も強くなります。便秘解消がOABに有効なことを是非知っておく必要があります。専門医の先生も便秘の解消がOABに有効なことを明言しておられます。

以上のような日常出来ることを実行し、改善しないときには薬物療法が必要です。薬剤には2つのタイプがあり、ひとつは抗コリン薬、いまひとつはβ3受容体刺激剤であります。前者の抗コリン剤には膀胱の収縮を緩める、つまり膀胱が排尿しにくくする働きがあります。これによって尿を膀胱内にたまり易くして排尿回数を減らそうというものです。ただ副作用として便秘、のどの渇きがあり注意が必要です。後者のβ3受容体刺激剤には膀胱の壁にあるβ3受容体に働きかけて、膀胱の緊張を緩めることによって膀胱容量を増やす作用があります。つまり膀胱が尿をためる力を高めて頻尿を改善しようというものです。β3受容刺激剤は抗コリン薬のような副作用はないのですが、性器の萎縮をおこすため中年以降の方を中心に処方されています。

机を離れて外に出ますと粉雪が舞っていました。公園の地面は雪と土のほど良い混ざり具合に染まっていました。思わず写真に収めたところです(写真2)。また上を見ると青空、雲、粉雪、山が競演するような景色を創っていました(写真3)。暖冬がようやく迎えた寒い日となったものです。

写真1
写真1 リッチヒルメディカル出版 第2版 
日本排尿機能学会過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会 

図1
図1 ファイザー社のホームページから引用させていただきました
https://pfizerpro.jp/cs/sv/detrusitol/column/CorrePonUrology2015-2/3.html  

図2
図2 この病気のこと知ってますか?6000人に聞きました
KaLibリーダー  アンテリオによる調査結果から一部引用させていただきました 

図3
図3 過活動膀胱症状についての質問票 
アステラス製薬のホームページから引用させていただきました
http://www.hainyou.com/w/interview/interview.html 

写真2
写真2 公園の地面の土と雪 

 写真3   
写真3 青空、雲、粉雪、山の競演