大寒波の中、加古川まで 1月29日

大寒波が日本列島に覆いかぶさりました。記録的な最低気温が各地で観測され、雪が降り積もりました。自然の猛威が与える交通機関への影響、また二次災害の発生などが懸念されるところです。この寒さの中、加古川市内で開催された兵庫県難病指定医の研修会に出掛けました。少しばかりの遠出なのですが、何しろ馴染みが少ない加古川ですし、またこの寒さです。個人的には気を張りつめ道中平和を祈ってJRの電車に乗りました。

ところがJR電車内で小さなトラブルが身の上に起こりました。それは西明石を過ぎる頃から「電車のドアは自分で開閉するというシステム(写真1」に遭遇したことで起こりました。この不慣れなシステムの操作に戸惑ってしまったのです。普通電車から快速電車に乗り換えようとしても電車のドアは自動で開いてくれないのです。それではと自分でボタンを押しても押す力が弱いためか)開いてくれないのです。電車のドアの開閉は自動でしてくれるものと信じている都会人にとっては、思わぬ落とし穴でした。電車から降りられず、降りたら今度は電車に乗り込めないという事態となってしまったわけです。周りの高校生が慣れた手つきでスムーズに進んでいくのをみて尊敬のまなざしを向けてしまいました。結局、普通電車から快速電車への乗り換えが出来ず、予定より15分間ぐらい遅れて加古川駅に到着しました。

加古川駅から会場の市民会館(写真2)まで、アイフォン片手に(ウォーキングを兼ねて)必死に歩き、10分前に会場に到着することができました。市民会館の前には加古川60選に選ばれている「鹿児(かご)の庭」というまことに美しい公園がありました(写真3)。おかげで少し焦った気持ちもリラックスし、落ち着いて研修会に臨むことができました。

研修会は朝10時から夕方16時30分まで昼休みをはさんでの結構ハードなスケジュールでした(図1)。午前中は難病の医療費助成制度の説明、午後からは代表的な疾患(今回は膠原病と神経系疾患)についての講演でした。話の内容は正直、常日頃はあまり接する機会が少ない疾患なので「退屈したらどうしようかな」などと余計なことを考えていました。ところが、話を聴くうちに大変に興味が惹かれ、退屈とは程遠い状態となりました。

まず本制度のあらましが説明され、難病指定医は研修会を受講した上で指定医番号を取得する必要があります。その上で患者さんを丁寧に診察し、臨床個人調査票を確実に記載作成することが基本だということが理解出来ました。そのためには難病の診断基準と重症度分類を理解しておかねばなりません。ここで厚生労働省のホームページから難病の診断基準と重症度分類をダウンロードすると極めて効率よく業務が進むことが理解できました。完成した調査票を難病の方が福祉事務所に申請し、およそ2ヵ月で認定結果が通知されます。本当に指定医の調査票が大変重要なことを認識しました。

昼休みに入り、アイパットで難病のことを検索して調べてみました。その歴史をみてみますと我が国の難病対策は昭和47年から開始され、昨年7月からは対象となる難病は306疾病となり、約150万人の人が対象になるものと推定されています。このような方々に医療費助成が円滑になされるためには医師の十分な理解が必要とされます。私自身、何人かの難病の方を難病以外の疾患(例えばインフルエンザや風邪症候群)で診察する機会はありますが、難病については「および腰」でした。これは専門医の診察を患者さんは既に受けておられ、一般医である自分が出る必要もないだろうという控えめな遠慮に基づくものです。しかし今後は積極的に対応していきたいと考えました。

引き続き代表的な対象となる疾患についての説明が御二人の医師によってなされました。ひとつは膠原病、もうひとつは神経系疾患に関してのアップデートな臨床講義でありました。久し振りに全般にわたる総括的講義であり極めてフレッシュに感じました。何やら一瞬、医学部の学生時代に戻ったような気分を味わいました。大変有意義な話でしたが、その中で今回は特にパーキンソン病(以下パ病)をとりあげてみました。その理由は難病の医療費助成の受給者にパ病の人が多いこと、パ病は正しく対応すれば比較的予後はよいこと、さらに(個人的理由ですが)身内にパ病がいて長年観察する機会があったこと、これらの3点からです。

パ病の特徴として次のことが挙げられます。進行性の神経変性疾患であり、60歳代での発症が多いこと、患者数は人口10万人あたり100~120人と比較的多いこと、女性に多いこと、大半は遺伝性でなく孤発性である、等々です。まだ残念ながら発症原因は不明ですが、最近ではα―シヌクレイレの蓄積が注目されています。診断基準は図2に示した通りです。これを参照にパ病の診断をすることは調査票作成の上で重要です。次に他の神経疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)との選別は初期では困難なこともあります。ただパ病は他の神経疾患に比較して薬剤効果がみられるということです。それゆえ「薬剤が有効ならばパ病であると診断可能なこと」もあります。そのパ病の薬剤には7種類があり、適切な治療をしてすれば発症後10年程度はほぼ普通の生活が送れるのです。

以上のようにパ病の基礎から臨床について色々と学び取り知識の整理ができました。

写真1
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1 電車のドアの開閉ボタン 
強く押す必要があります

写真2
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2 会場の加古川市民会館

写真3
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3 鹿児の庭 とても良い公園です
加古川まで来た甲斐がありました

図1
1 研修会の当日のプログラム

図2
図2 パーキンソン病の診断について 
景山恭史先生の講演原稿からの引用です