もう3月、春です 3月7日 

もう3月になりました。月日のたつのは本当に早いものです。さて3月に入りますと新聞記事などに「啓蟄の日」が書かれているのを目にします。啓蟄という言葉は普段の日常会話で使われることはまずなく、馴染みが少ない単語でしょう。そこで少し調べてみました。啓蟄の啓とは開く、蟄とは虫などが土中に隠れ閉じこもるという意味です。つまり啓蟄とは暖かくなって虫が土中から這い出すということなのです(ウィキペディアによる)。今年は35日が啓蟄の日となるようです。もう少し詳しく啓蟄を理解するには二十四節気の詳細を知ることが必要です。二十四節気とは1年を24等分して約15日ごとに分けた季節のことです(図1)。もともと季節を感じて農耕に役立てるために考案された方法のようです。二十四節気の歴史は古く、中国の戦国時代につくられ、日本では江戸時代から用いられました。ただ日本と中国では季節に違いがあるため、八十八夜、入梅など日本独自のものも加えられました。いずれにしろ季節の味わいを醸し出す言葉であり、日本語の奥ゆかしさを感じるところです。

今回、誰もが知っている2つの疾患につい研賛を積みました。ひとつはエコノミークラス症候群、もうひとつは貧血です。最近参加した講演会で両疾患に触れる機会があり、今一度復習する必要を感じたところです。

エコノミークラス症候群は日本では比較的最近になって知られた疾患で1997年に初めて紹介されました。一方、外国では第二次大戦中のロンドン空襲においてエコノミークラス症候群による多数の死亡者がすでに報告されています。つまり防空壕の中で体を動かさずじっとしていたため血栓症が発症、つまりエコノミークラス症候群死亡がおこったというのです。日本人にはもともとエコノミークラス症候群の発症は外国人よりも少ないとされていました。しかしシドニーオリンピック観戦から帰国中の飛行機でエコノミークラス症候群を発症した女性がいたことが報道されました。同報道によりエコノミークラス症候群が急速に我国で知られるところとなりました。エコノミークラス症候群の発症原因を簡単に説明します。それは飛行機に搭乗し、長時間同一姿勢でいると下肢の静脈内に血液が貯ります。これがそのはじまりです。血液の流れが貯まっても普通は静脈弁で血流がおこされます。しかし静脈弁の作用が低下し、次第に血管内の血液濃度が高まってしまい、やがて血液の固まり(血栓)ができてしまい血栓症を発症します。これがエコノミークラス症候群の発症メカニズムです。そのためエコノミークラス症候群はロングフライト血栓症とも呼ばれています。さらに出来た血栓が深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)となり、またこれが肺に飛ぶと肺塞栓症(PTE:pulmonary thromboembolism)を引き起こします。つまり深部静脈血栓症と肺塞栓症は、同メカニズムで起こる一連の病態であり静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)といわれています(図2)。少しややこしくなって申し訳ありません。ただVTEは最近になって知られてきたのですが、日本人にも多いことが示されており(図3)、比較的身近な疾患なのです。難病情報センターによる平成21年度の一年間の報告では深部静脈血栓症は約14,700人、肺血栓塞栓症は約7,900人という診断数でありました。

VTEの症状ですが初期症状は大腿から下の脚に発赤、腫脹、痛み等の症状が出現します。このような症状が発生したら急いで医療機関を受診する必要があります。足にできた血栓が肺に詰まると、胸痛、呼吸困難、失神等の症状が出現し、大変危険な状態になります。

VTEの診断にはDタイマーという血液検査および超音波検査が有効です。特にDタイマーが有用で、これが陰性(1.3以下)であるとVTEの可能性が低いとされています。ですから疑いのある人には是非実施すべき検査です。

最後に予防です。厚生省では次のことを推奨しています。それは長時間同じ(特に車中等での窮屈な)姿勢でいないこと、足の運動をし、足や足の指をこまめに動かすこと、3~5分程度でも歩くこと、水分を取って時々深呼吸をすることなどです。

貧血は全く古くて新しい疾患であります。ただ日常診療において貧血検査(いわゆる血算)はあまりにもその検査結果に触れるため、かえって軽視してしまい、重大な結果を見過ごしている可能性が否定できません。また貧血の奥は極めて深く、今日はほんの一部、MCVによる貧血分類にだけに触れます。これはMCVを<8080100、100>3つにわけて検査の結果を評価するものです。それらは、それぞれ小球性、正球性、大球性貧血に分類することができます。このうち最もよくみられるのが小球性貧血であり高齢者では消化器の悪性腫瘍、女性では月経過多症の方でよくみられる貧血です。正球性貧血は、現在体のどこかで出血していることも否定できませんので速やかな注意と対応が必要です。大球性貧血はよく見落とされることがあり、代表的な疾患に巨赤芽球性貧血があります。巨赤芽球性貧血ではビタミンB12不足の人、胃切除をした人などにみられ、特に前者では注意が必要です。特にB12不足については有効な治療があるのです。ですから忘れてはなりません。

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図1 
二十四節気 啓蟄はそのひとつ
Wikipedia から引用させていただきました

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図2 静脈血栓塞栓症
(バイエル薬品KKのパンフレットからの引用)

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3 わが国におけるPE診断数の推移
(バイエル薬品KKのパンフレットからの引用)