3月弥生 3月12日

ようやく3月弥生の時節を迎えました。しかし3月半ばとはいえ風はまだ少し寒く、家の中に閉じこもりがちとなっています。それでも少しずつ暖かい風が吹きはじめ、足が家の外に向くようになってきました。ただ春の風とともに花粉症も一緒にやって来ます。自分自身が筋金入りの花粉症である私は正直、気分は少し鬱陶しくなります。それでもマスクをつけて少し強い春風の中をふかれるようにして勉強会に赴きました。

さて今回は糖尿病の合併症のひとつ、慢性閉塞性動脈硬化症(以下ASO: arteriosclerosis obliterans)について勉強する機会がありました。講演は「糖尿病に伴う下肢閉塞性動脈硬化症」というタイトルで演者は関西労災病院の岡本慎先生でした。会場は西宮の恵比須様で有名な西宮神社の会館です。以前西宮に20年以上住んでいましたが、同神社の会館にいくのは初めてでした。なかなか趣のある会館でした(写真1)。

以前のブログ(本年2月10日)でもお話ししましたが、糖尿病の合併症には大きく分けて細少血管障害と大血管障害の二つがあります。この二つの障害は、さらにそれぞれ三つに分けられます。前者の細少血管障害には末梢神経障害、網膜症、腎症があり、後者の大血管障害には脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病性壊疽があります。分かり難いかもしれませんので図1に示してみました。平成19年の国民健康・栄養調査によりますと糖尿病合併症の割合は、神経障害11.8%、腎症11.1%、網膜症10.6%、足の壊疽0.7%ということです。このうち末梢神経障害と糖尿病性壊疽は図1から分かるように足に発症する疾患であり、両者を合わせると12.5%と高い割合となります。ですから糖尿病の人については足をよく診ることが大切なのです。この足についての対応をフットケアといい、糖尿病の人では末梢神経障害と糖尿病性壊疽を常に念頭においてフットケアをすべきなのです。ところが糖尿病ネットワークによる調査(http://www.dm-net.co.jp/)では「フットケアを定期的に受けている」人は41.9%にとどまり、「フットケアを受けていない」人は43.5%であったとのことです。つまり誰もが、もっと足に関心を払う必要があるのです。そこで今回は末梢神経障害と糖尿病性壊疽を取り上げてみました。ただ末梢神経障害のあらましは以前のブログで紹介したので糖尿病性壊疽を取り上げました。

さて糖尿病性壊疽とはどのような疾病でしょうか、これについて話してみます。少し混乱しそうになるのですが、ASOは糖尿病が無い人、糖尿病がある人のいずれにも発症します。ところが糖尿病の有無によってASOの病状程度に違いがあり、糖尿病の人ではASOの病状が重くなってしまうのです。そうして糖尿病の人が持っているASOが広く進行して重篤になったもの、これが糖尿病性壊疽なのです。ASOの主要な症状は図2に示したとおりですが、図の右下にあるように病状が進行し、潰瘍・壊死になった状態、これが糖尿病性壊疽なのです。繰り返しになりますが糖尿病の人ではASOの進行が速いため、早急な治療が必要とされます。

診断は問診で図2にある症状を聴き出すことが第一歩です(初期の段階ではこれら症状がない人もいます)。次にとにかく足をよく診ることが大切です。視診で皮膚の色調、冷感の有無を触診し、動脈拍動を触れて脈が弱くなっていないかを評価することが大切です。検査法として最近ではABI(ankle brachial index:足関節上腕血圧比)という指標が用いられます。ABIは比較的簡単な検査で算出することが出来ます。当院でもABI測定装置(写真2)を設置し、糖尿病の人をはじめ動脈硬化症の人に対しABIを測定し、ASOの評価をしています。詳細は略しますが、一般にABIが0.90未満ですとASOの疑いが濃厚となります。

治療は運動療法(歩くこと)、薬物療法(抗血小板薬、血管拡張薬、抗凝固薬)、血管内治療(バルーン法、スライド法)、外科治療があります。とりわけ今回の講演では最近の外科治療が紹介され、たいへん興味がひかれました。

もちろん糖尿病と高脂血症の治療が合わせて行うこと、これが本当に大切なことは言うまでもありません。

もうひとつ、小児慢性特定疾病についての研修会に出席しました(図3)。はっきりいってあまり日頃出会うことがない小児における慢性の特定な病気です。疾患に対する助成制度、また臨床について履修するために出席しました。正直、馴染みの少ない疾患ですからモチベーションが下がるのではと思っていました。ところが話を聴くうちにそんな懸念はすぐに吹きとび、臨床家としての意気込みが高まってきました。小児特定疾患に関する助成金制度と臨床が理解でき、知ると知らないでは患者さんへの対応は大いに異なると感じました。つまり臨床家には常に幅広い知識が要求されること、このことを改めて痛感しました。

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写真1 西宮神社の会館 同神社のホームページから 

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図1 糖尿病の合併症 末梢神経障害と糖尿病性壊疽は足に発症する疾患 

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図2 ASOの主要な症状
科研製薬株式会社のホームページから引用 

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写真2 当院に設置されているABI測定装置 

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図3 小児慢性特定疾病についての研修会