健康スポーツ医学 3月27日

日増しに暖かくなり、桜の開花情報が報道される時候となりました。近くの公園の桜も開花を始めました(写真1)。長い間御世話になった冬のコートも、ようやく暇を出すことが出来そうです。冬の厳しさもそれなりに趣があるものですが、やはり春の訪れには心がうきうきするものです。寒さが身に応える季節から心温まる季節への転換時期となりました。

というわけで心身共に温まったベストに近い状態で様々な臨床医の業務に取り込むことになりました。特に、三月は年度末なのでこの一年のまとめをすること、そして四月以降の計画予定を立案する時でもあります。

さて日本医師会では健康スポーツ医という制度を設けています(図1)。この制度は「運動を行う人に対して医学的診療のみならず、メディカルチェック、運動処方を行い、さらに各種運動指導者等に指導助言を行い得る医師の養成を目的」として25年前に創設されました。健康スポーツ医になるためには医師会が定める講習科目に基づく講習会を修了し、その後に資格申請して審査に合格する必要があります。さらに合格した後も

①5年に一度、5単位以上(1単位は60分)の再研修を受けること

②健康スポーツ医として学校、職場、地域などにおいてスポーツ医学の実践活動をする

という二つの条件があります。つまり健康スポーツ医の資格を維持するのには、それなりに負担があります。私自身も健康スポーツ医となっており、資格更新に必要な再研修を受けてきました。

今回の再研修会は兵庫県医師会の主催するもので御二人の講師による講演でした(図2)。どちらの講演も内容には奥深いものがありました。一見、毎日の日常診療とは無関係な話のように思われますが、けっしてそうではありません。事実、実地診療において参考になり得る様々な知識を得ることが今回も出来ました。学んだことを自分なりに復習し、日常診療に生かせるように様々な工夫に努めることになるわけです。

まず兵庫医科大学整形外科の吉矢晋一・教授のお話です。

現在日本では、日本体育協会認定スポーツドクター・日本整形外科学会認定スポーツ医・日本医師会認定健康スポーツ医という3つの運動に関連する医師の制度があり、各団体が独自に研修・認定を行っています。医師会の健康スポーツ医は3つの制度の中では最も古く、認定された医師の数は22145人(昨年10月の時点)にのぼり最多であります。つまり医師会の健康スポーツ医は伝統と実績がある制度であり、あらためてその意義を再認識しました。

さらにスポーツ医は臨床家として豊富な医学知識が必要なことも再認識できました。なかでも高齢者のメディカルチェックについて興味が魅かれました。それを少し具体的に言いますと高齢者の加齢による運動機能評価については、図3のような方法があるということです。詳しく知るために自宅で日本整形外科学会のホームページを閲覧したところ、そこには具体的な方法が示されていました(図3)。分かりやすい内容なので理解が進んだところです(https://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/mads.html)。これによると日本整形外科学会では開眼片脚起立時間、3m Timed up and go testを運動機能評価として位置づけ、運動器不安定症の診断基準に用いることを推奨しているようです。開眼片脚起立時間、3m Timed up and go testの詳しい方法と評価法を知って実施すれば、内科の外来診療においても大変有意義・有用であります。ただ検査の実施にあたり、高齢者には多少とも負担があり危険を伴います。特に開眼片脚起立の検査において骨折の発生があるので十分な工夫と予防が必要なこと、したがって実施に当たり十分な配慮の必要なことがよく分かりました(http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/tsuusho-kataashidachi.html)。評価方法として開眼片脚起立時間が15秒未満を運動不安定症、3m Timed up and go testで20秒以上は歩行が不安定と判断されます。当たり前ですが、高齢者の方は多少なりとも移動能力の低下があります。ですから日常の外来で運動機能評価をすることは重要であります。高齢者の方においては運動をする、しないにかかわらず、高齢者の方に分かりやすく、御自身の運動機能を説明していくことが必要・不可欠と考えました。

もう一人の演者は東京都医師会の小笠原定雅・先生です。

通常、毎日の外来では運動指導をよく実施しています。ただ、なかなか具体的な指導は難しいものです。単に「歩行してください」と言ってもなかなか患者さんは実行に移してくれません。そこで「10分間の小刻み運動を一日3回してください」などと実行し易い具体的な指導内容を呈示すると案外、耳を傾けてくれます。今回、小笠原先生から具体的な指導の言葉が紹介されました。なかなか説得力があり、早速あくる日から利用させていただきました。例えば、一部を紹介しますと次のような指導内容です。

通勤・仕事では出来るだけ歩く、階段を使う。

家事では、少し遠くの店へ徒歩または自転車で買い物に行く。

家事では、家事・掃除を手伝う。

余暇では、散歩・ラジオ体操・庭仕事。

1階から3階、2階から4階など2つ上の階への移動は階段を使いましょう。

昼休みは10分くらい歩いたところにある定食屋で食べたらいかがでしょう。

間食のお菓子は、買わない・置かない・食べない!

横になっているなら、座る。座っているなら、立つ。立っているなら、歩く。

これらは恰も標語となって、患者さんに伝わり易く、かつ実行に移しやすいものと感じました(小笠原先生には無断引用となりますが、大変有用なので感謝の念を持って敢えて掲示させていただきました)。早速現在、外来で使用させていただきました。いつもより患者さんの反応は良いように感じるところです。

御二人の講演内容は、多岐にわたる素晴らしいものでありました。当然、ここに簡単に記載報告することはできません。臨床医にとって様々な角度からの知識や考え方を体得できる研修会には、今後も出来る限り参加していきたいと思いました。

160328 1
写真1 開花始めた公園の桜 春が間近です

160328 2
図1 日本医師会の健康スポーツ医のポスター

160328 3
図2 当日のプログラム

160328 4
図3 日本整形外科学会のホームページからの引用