5月の薫風 5月9日

 季節の巡りは早いもので5月も半ば近くになってきました。木々の緑は陽の光を浴びて本当に美しく、目にしみ入るような勢いがあります。個人的には1年のうちで最も好きな時候です。5月の連休には各行楽地は大変に賑わった様子です。しかし、どこへ出かけても人々で混んでいると考え、近場で色々と五月の風景を楽しんできました。

 まず緑の木々を背景に雄大に泳ぐ鯉のぼりの姿に出会いました(写真1)。鯉のぼりを近くで見ると風を受けてブーンと鯉が唸り、支柱も弓なりとなっていることに少し感動をしました。また街角のツツジの花の赤い色に気分を和まされました(写真2)。

 そこへ5月の薫風に乗って地車(だんじり)の囃子音が聞こえてきました。その音に誘われ、近所の住吉神社へ足が向きました。驚いたことに住吉神社が一社で数台の地車を有していました(写真3)。これは住吉神社が地区別に地車を所有しているからなのですが、ふつうは一社が一台の所有ですから驚いたわけです。JR住吉駅北側で4台の地車のたいへん勇壮な姿に感動を覚えました。だんじり祭りには心が大いに癒されました(写真4、5)。

 連休となるとまとまった時間がとれるので、普段は十分に出来ない医学書を読むことにしました。もちろん専門の医学書だけでは心寂しいので一般書にも目を通すようにしました。しかし如何せん若い頃と違い、読書スピードが落ち込んでいます。ただ若い頃にはなかった洞察力はさすがに少しあるので、年々奥深い理解ができるようになっています。そんなわけで最近の医学知識を吸収し、また社会情勢にも気を向けたゴールデンウィークになりました。

 今回は何冊かの本を読破しました。最も印象に残った「小児の一発診断」(写真6 稲毛康司・編著 文光堂・2016年刊行)という医学書について紹介します。ひとことで言うと、子どもさんが外来を受診し、その数個の訴えからいち早く診断をつける技を習得すべく編纂された医学書といえるでしょう。何年も小児科臨床に従事していても実地臨床ではなかなか診断のつかないことも多いものです。しかし本書に示されている「少しのヒントで迷うことなく診断をつけることは頭の整理には有効」と感じました。具体的に次に例を挙げて言います(一部、原書を変更しています)。

 1例目:6歳男児 主診は嘔吐、顔色不良、朝からぐったりとしている、昨日は一日遊び夕食も食べずに寝た。発熱はない。

 2例目:1歳6か月男児 主診は顔色不良、朝からぐったりとしている、突然ひきつけた、発熱はない。以前から中耳炎で抗菌剤を2週間まえから服用していた。

 どちらの例も朝起きて顔色不良、ぐったりとしているという共通の症状がみられます。習熟した小児科医は直ぐに低血糖症と考え、血糖値と尿検査をするでじょう。一般に子どもさんの経過は早いので小児科医にかかる心的プレシュアはそれなりにあります。両例とも血糖値が低かったのですが、一例目は尿ケトン体が陽性、二例目は尿ケトン体が陰性でした。つまり一例目はケトン性低血糖症、二例目は非ケトン性低血糖症と診断されることになります。2例目は抗生剤を服用している点からいわゆる低カルニチン血症によるけいれん、低血糖を疑うことになります(抗生剤による低血糖は、意外と知られていない印象があります)。

 どちらの例も一見外見だけでは何となく似た印象をもつ疾患です。しかし両者は全く別の疾患であり、しかもすぐに適切な対応が必要です。子どもさんの症状は変化が著しく、医師は落ち着いて経験にもとづき診断能力をフルに回転する必要があります。  

 今回は私なりの独断的な評価で紹介してみました。実際の現物での診断はこのように簡単なものではありません。それでも面白い考え方を本書は呈示しています。

 というわけで本書により、瞬時に一発診断する大切さを再認識しました。

  160509.1キャプチャ写真1 緑の山、青い天空に鯉のぼり

 

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写真2 赤いつつじの花

 

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写真3 数台の地車の車庫

 

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写真4 だんじりの勇姿

 

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写真5 見慣れた風景にだんじりがいるのは非日常

 

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 写真6 なかなか魅力的な表紙