真夏の襲名興業と講演会巡り 7月28日

歌舞伎・落語の襲名興業ということであれば時間の許す限り観に行くことにしています。7月に入り大阪の松竹座で5代目・中村雀右衛門丈の襲名興業があり、出かけてきました(写真1)。雀右衛門さんといえば、長年(60年近くですが)歌舞伎ファンですので、どうしても先代の4代目・雀右衛門さんを思い浮かべてしまいます。それどころか4代目が友右衛門であった頂(昭和30年代)の若き日の舞台姿さえ思い出します。本当に綺麗な女形でした。2年前に4代目は肺炎により96歳で亡くなられました(肺炎球菌ワクチンは接種済みであったのかしらと、余計な詮索をしています)。今回、次男の友右衛門さんが5代目として名跡を継ぐことになられ、1人のファンとしては本当に嬉しい限りです。長年にわたり歌舞伎を観ていますと、「あれ、この役者さん、名前は知っているが若くて馴染みのない人だなぁ。誰だろう?」と思うことが稀にあります。何のことはない、先代が亡くなったため若い後継者の役者さんが襲名したのですが、つい昔の先代の面影を思い出してしまいます。そういえば幸四郎さんといえば、今でも先代の八代目・幸四郎さんの印象が強く瞼に残っている状況です。

さて昔話はともかく、当代雀右衛門の舞台は艶やかでした。また来年には市川右団治の名跡が復活するとのこと、大変楽しみなところです。関西の歌舞伎ファンならば80年ぶりの大名跡復活は、喜びが本当に大きいことでしょう。名を継ぐのは大阪生まれの市川右近さんです。今から襲名興業が待ち遠しいところです。

 21日には九州北部や近畿地方で梅雨明けが発表されました。そして本格的な夏の日が到来し、猛暑といってよい日々が続いています。今年は西日本では大雨、東日本では水不足と対照的な状況が続きました。やはり自然の力は偉大で人間の非力を知ったところです。六甲山には雨かと思えば猛暑がやってきて、雨雲を払いのけるように暑気が山裾をから登っているような景色が見られました写真2)

 さて暑い中、土曜日の診療が済んだあと、午後から夜まで講演会に出席してきました。会場は3か所に及び、雨の中を順次巡回しました。雨模様のため参加者の足が止められるのではと危惧しました。しかし実際には各会場ともそれなりの出席者がいる状態でした。聴講したすべての講演内容を紹介することは無理ですので特に印象的であった講演を呈示することにします。

 1番目は横浜市立大学の病態制御内科学・田村功一准教授のお話しでした。テーマは「CKDChronic kidney disease 慢性腎臓病)に克つための血圧無理」です。臨床的なこととしてCKDの人では次の3点に注意することが示されました。

1.病態(年齢、季節)を考慮すること 

2.家庭血圧と24時間自由行動下血圧測定(ABPM:Ambulatory Blood Pressure Monitoring)を重視すること

3.老年者には季節性高血圧を考慮し、夏では血圧が110以下になるときは降圧剤の変更・中止を考慮する

ということが示されました。より詳しくCKDを知るためには、CKDガイドライン2012をインターネットでダウンロードすることを教示していただきました(図1)。早速、帰宅してから供覧したところです。これは大変参考になりました。

2番目は「二次病院から三次病院への転医症例について」という演題でした。六甲アイランド甲南病院小児科の坂田玲子先生のお話しでした。日頃から六甲アイランド甲南病院には大変お世話になっているところです。我々のような一次医療機関から二次病院へ御願いした患者さんが、より高度な医療が必要となって三次病院へ転送される実態・状況がよく理解できました。とりわけ二次から三次病院へ転送する必要があった症例は、外科的手術が必要であったということには興味を覚えました。

3番目は、ぼうぜ医院の下宮一雄院長による「坊勢島における痛みの考え方と治療」という講演でした。坊勢島とは初めて耳にした島名です。兵庫県姫路市に属し、瀬戸内海の家島諸島の真ん中に位置する島です(図2)。人口は3000人弱であり、下宮先生は島にある診療所の院長であります。その診療所は町の典型的な一次医療機関と拝察しました。つまり島に1件の医療機関ということで様々な患者さんが来院されるというわけです。今回は痛みに対する対応を中心にしたお話しでした。強調されたことは「疼痛に対する治療をすることによって動ける体をつくりたい」ということです。そのために実施している薬物治療について解説がされました。鎮痛剤として非ステロイド性抗炎症薬、COX2阻害剤、アセトアミノフェンそしてオピオイドがあり、それぞれの作用機序の違いや副作用について正しく知る必要があります。とりわけ副作用を中心に見据えての治療は大切であります。

その一部を簡単にいいますと、まず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS:Non-Steroidal Anti-Inflammatory)は、腎血流量を低下させ腎機能を急激に悪化させることがあるということが強調されました。つまりNSAIDSには薬剤性の腎障害があるのでeGFR45以下の人ではNSAIDSは禁忌なのであります。非常に汎用される薬剤ですが注意が必要であります。有効ではあるが、やはり長期にわたる投与は好ましくないのです。

次にCOX2阻害剤には、動脈硬化や血圧上昇という副作用があるので注意する必要があります。

アセトアミノフェンは600mg/日までは効果に乏しく、投与量が多くなることもあり得るということが解説されました。幸いアセトアミノフェンによる肝障害は1200mg/日までは少ないので注意して処方すれば比較的安心でしょう。

最後にオピオイドという長期処方に適している薬剤が登場してきました。これにはアセトアミノフェンとの合剤もあります。かなり有効な薬剤なのですが、投与初期に嘔気、ふらつき感、便秘、眠気などが出現することがあります。適切な対応で概ね短期間で副作用は消失します。

 いずれにしろ患者さんの痛みが軽減し、以前のように体を動かすこと出来るようにすること、これこそが鎮痛の本当の目的であります。

160729.1写真1 襲名の御祝儀

 

160729.2写真2 六甲山の山肌にある雨雲を追い上げ暑気

 

160729.31 社団法人日本腎臓学会
ISBN 978-4-88563-211-2
発行 株式会社東京医学社

 

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2 家島諸島にある坊勢島(google mapより)