9月になって 9月7日

暑い夏が少しずつ後退し、9月になって今度は台風が立て続けに日本列島を襲っています。各地で大規模な被害が出ております。グループ・ホームの高齢者の方々が亡くなられ、大変気の毒に思う次第です。被災地の人々に思いをはせ、沈んだ気分で過ごす今日この頃です。そんな中、知人から絵手紙(写真1)をいただき、何となく気が和んだところです。

160909キャプチャ1-1写真1 心和む絵手紙

 

さて、少し気になる記事を医師向けのインターネットサイトでみつけました。それは「何才まで現役で医師の仕事を続ける?」ということをテーマにした調査結果です。医師を対象とし、医師自らが回答した結果の報告です。個人的には身近にいる2,3人の友人医師と引退時期を話し合うことは時にあります。だいたい皆さん、「どうしようかな」と漠然と考えているのが現状の様です。若い頃は引退のことなど、まだまだ先のことと思っていたものの、あっという間に年月は過ぎ去りました。友人も含め、「引退時期というテーマが以前よりは現実を帯びてきた」というのが、正直なところです。ただ開業医は勤務医と異なり自由業であるため、基本的には定年・引退がありません。つまり開業医は自らが引退宣言をしない限り、医師を止められないわけです(かえってこれが、開業医の決断を妨げているのでしょう)。

今回の調査は開業医1097人、勤務医2541人を対象とした比較的大規模な統計調査です。まず何才まで現役として医師を続けるかという問いに対し、開業医は70才(28%)、75才(29%)で合わせて57%にのぼりました。一方勤務医は70才(28%)、75才(22%)で合わせて50%となりました。開業医では過半数以上の人が75歳以上を引退時期と考え、勤務医でも半数が75才を一つの目安と考えているとのことです。どうやら医師は75歳ぐらいまでは現役続行をする人が多いという結果でした。因みに同調査において薬剤師、看護師は医師よりも早期に引退するという傾向がありました。

次に医師は引退後、健康・金銭面などで何らかの不安感を大部分の人(82%)がもっているとの調査記事が得られました。反対に特に不安がないという医師は18%に過ぎませんでした。医師といえば社会的には安定していると思われがちですが、結構医師自身は老後の不安感が強いという結果でした。以上のことから医師は75才くらいで引退を考えるが、健康・金銭面などの不安感から75才までは現役続行をする傾向がうかがえました。もちろん各個人によって考え方・体力および諸々の違いは、それこそ千差万別であるため一概に引退時期を決めることは不可能です。要は各々の医師個人が自らの諸条件を考慮し(後継者に少しずつ移譲しながら)、自己決定することしかないものと考えられます。

今回は前回ブログでいった通り、高尿酸血症、痛風発作の治療について紹介します。その前にヒトにおける尿酸の代謝について簡単に触れておきます。

ヒトはプリン体という物質をもとにして細胞を作っています。ただ余剰となったプリン体を尿酸に転換し、血液の中に放出して体外に出しています。このようにしてヒトは尿酸を作る量と排泄する量とのバランスをうまくとり調整しているのです。ですからヒトは体内の尿酸量を一定(1200mg)に保っているのです。ところがこのバランスが崩れ尿酸の量が増えてしまうと、高尿酸血症がおきてきます。図1のように高尿酸血症もはじめのうちは無症候性高尿酸血症という状態にとどまっています。しかし5-10年(早い人で2-3年)の年月が経過しますと関節腔内に尿酸塩の結晶が沈着し、次第に痛風関節の症状が引き起こされてしまいます。関節部への刺激をはじめ、色々なストレスが加わり、また尿酸値の急な変動が加わると関節腔内に沈着していた尿酸塩結晶が剥離し、そこへ白血球が加わって、強い炎症がひきおこされます。つまりこれが痛風発作なのです。この一連の経過は図1に示された通りです。よく健康診断、またすでに生活習慣病のため定期的に受けている血液検査で「尿酸値が高い」といわれ、来院されることがあります。言われた人は、「特に症状はないし、具体的にどうすればよいのかしら?ビールはほとんど飲まないし、いつも尿酸値で引っかかってしまう・・・」と困られることがよくあります。このような人には、図1に示した高尿酸血症のlife storyを理解していただくと、その後の適切な医学的指導の受け入れがスムーズにいくでしょう。

さて高尿酸血症、痛風を治療する目的は、痛風発作を阻止することにあります。また最近では高尿酸血症が、慢性腎臓病の発症や進展と関係し、さらに動脈硬化などの様々な合併症を発症するリスクを高くすることが分かっています。ですから積極的な治療が必要なのです。ところが患者さんの中には「痛風発作がないイコール治癒した。だから治療は不要」と思っている人が時にいます。それは不適切な考えで高尿酸血症の人は、生活習慣を改善して治療する必要があります。それは食事、飲酒、運動の3つの生活療法が中心となり、そして薬物療法があります。

まず3つの生活療法のうち、食事と飲酒に関しては、「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」(図2)には、プリン体を多く含む食品(動物の内臓、魚の干物など)を避けること、アルコール(特にビール)制限することとあります。困ったことにプリン体は美味しい食物に多く含まれ、レバー類(210~320mg/100g)、白子(300mg/100g)、一部の魚介類 エビ、イワシ、カツオ(210~270mg/100g)あたりがプリン体を多く含む食材です(帝京大学・薬学部の金子希代子教授)。プリン体の摂取制限の目安としては1日400mgですので時には献立をふりかえり、プリン体の過剰摂取に注意することが必要です。また1日に摂取するアルコール量の目安(アルコール量で約20g)は、日本酒1合、ビール500mL、ウィスキー60mLに相当し、これを一日おきに摂取することがひとつの目安です。またアルコールには尿酸値を上げるだけではなく、利尿作用があります。ですから水分を尿として体外に出してしまい、その結果血中の尿酸値が高くなってしまうのです。

次に3つの生活療法のうち残りの運動についてです。適度な運動はリスクを減らすことが分かっています。適正体重を目標に、週3回程度の軽めの有酸素運動を継続するのが好ましいとされています。具体的には1日に5000ないし10000歩のウォーキングを週3回程度、継続して行うことです。具体的な運動法は各個人によって違いますので主治医の先生と相談することか゛必要です。

最後に痛風の薬物療法です。これには大きく分けて発作を抑える薬物療法および尿酸値を下げる薬物療法があります。今回は、とにかく生活療法とともに、痛風発作の阻止を重視するということで後者の尿酸値を下げる薬物療法だけを取り上げます。痛風の根本原因は何よりも高尿酸血症ですから、これを是正することを取り上げたいというわけです。

まず大事なことは高尿酸血症という病態は尿酸が過剰に生産されている場合、尿酸がきちんと排泄されなくなっている場合、この両方が合わさっている場合という3つのパターンがあるということです。いずれのタイプなのかを検査をして見極めることが必要です。それは尿酸値を低下させる薬にも、尿酸の過剰生産を抑えるもの(尿酸生成抑制薬)および尿酸排泄を促すもの(尿酸排泄促進薬)との2種類があり(図3)、病気のタイプに合ったものを処方することを考慮せねばならないからです。

次に具体的な薬物治療方針についてはガイドラインに示されており(図4)、実臨床において大変参考になります。まず薬物治療が望ましい対象ですが、ガイドラインでは痛風発作を起こしたことがある方、または痛風結節のある方、尿酸値が8.0mg/dL以上で合併症のある方、尿酸値が9.0mg/dL以上の方とされています。次にどの薬剤を選択するかについては、個々の患者さんによって異なります。そのため主治医とよく相談して選択することになります。最後に治療の目安、つまり目標となる尿酸値は6mg/dLにおきます(因みに、尿酸の正常値上限を7mg/dL、治療開始基準を8mg/dLとされていますが、これを「6・7・8のルール」といいます)。治療において注意すべきことは「ゆっくり、しっかり下げる」ことが大切です。それは尿酸値の急激な低下は、痛風発作を誘発することがあるからです。

現在、日本人の30才以上の男性では高尿酸血症の頻度が30%以上に達していること、また痛風の有病率は1%以上で今後も増加すると見込まれています。高尿酸血症、痛風は身近な病気なのです。しかも尿酸値が高いとメタボリックシンドロームが多くなり、また将来の高血圧発症の予測因子になるといわれているのです。このように様々な問題を持っている高尿酸血症・痛風にもっと関心を払うべきと考えられます。

 

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図1 尿酸を下げるプロジェクト
帝人ファーマ株式会社のホームページから引用https://243sageru.com/toranomaki/condition/1/index.html

 

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図2 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)
メディカルレビュー社 2012/11/10

 

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図3 尿酸を下げる薬は2種類がある
帝人ファーマ株式会社のホームページから引用http://243sageyo.com/therapy/medicine/hyperuricemia/

 

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 図4 高尿酸血症の治療指針
高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインからの引用