カテゴリー別アーカイブ: 糖尿病

スティックシュガー50本分

シルバーウィークの連休が終わり、何だかペースが上がらない内に週末になりそうですね。来週の後半からは10月に入ります。インフルエンザの予防接種予約も始まっており、年末の足音が遠くで響いているような焦りを感じますね。

さて、今回のブログは「肥満」の話です。

ネットで、甘い炭酸飲料1.5リットル1本にはスティックシュガー50本分の砂糖が含まれているとの記事があり、「すごい量だなぁ」と思いながらかかる記事を読み進めてみると・・・・・・

アメリカでは、甘い炭酸飲料が1.5リットルより多い1ガロン(3.78リットル)サイズの物が普通に売られており、2−3本平気で買っていくのだそうです。だから日本では中々見かけない、お相撲さん級の肥満になるのだ。

との趣旨が書かれていました。

「成る程」と思わせる話なのですが、医学的には少し補足説明が必要なのです。

実は、大量の糖分(砂糖)を摂取して「太る」ことが出来るのは、膵臓のインスリン分泌が強力だからなのです。東洋人の場合、アメリカ人と同じように糖分を取るとお相撲さん級の「肥満」になるだけのインスリンを膵臓が持続分泌できないため、糖尿病になってしまうのです。

「肥満」はけっして良いことではありませんが、お相撲さん級の「肥満」になれるのはアメリカ人の膵臓が強く糖尿病になり難い事の現れなのです。

「肥満」=「糖尿病」のようなイメージがありますが、必ずしもそうではないことはご理解戴けますでしょうか?(しかし「肥満」になると膵臓に負担がかかるのは紛れもない事実です。)

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結果にコミット・・・・・

最近暑い日が続きますね。大阪は35℃の真夏日の予想です。梅雨の季節に湿りがちだったセミの鳴き声も、最近は「ビルにしみ入る」気がしますね。

さて今回は糖尿病の話なのですが、テレビCMの話から始めたいと思います。

最近盛んにテレビCMをしている「結果にコミット・・・」するダイエットなのですが、運動や食事指導をするのはもちろん、毎回の食事を携帯で撮影して会社に送信して、「食べ過ぎ」ていないかなどの
チェックを頻回にするのだそうです。

自分では、ついつい甘えてしまいそうな所を、他人にチェックしてもらうことにより達成率を上げることが「結果にコミット・・・・」の一つの方法なのだそうです。(決して安くないお金を払って、怒られるのも・・・・)

これを知って成る程と思っていたら、「頻回の電話支援で糖尿病発症が4割低下」という記事を見付けました。

日本で行われた、J-DOIT1試験の結果分かった事なのですが、1年間で10回程度の電話支援が、約5年間の追跡機間における糖尿病発症を41%低下させたとの事です。

やはり検査結果異常などを放置せず医師(他人)に判断してもらい、薬を飲まなくても定期的にチェックすることが大切だと改めて感じました。

「結果にコミットする!きむ循環器内科医院」と耳にしたら、受診したくなるものですかね?

 

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赤ワイン1杯で

九州では記録的な大雨が続いているようですね。関西も今日から明日にかけて、強い雨が降るようです。お気を付け下さい。

さて、以前に「一杯のコーヒーから・・・・」とのブログを書いたのですが、今回は赤ワインの話です。

血糖コントロール良好の2型糖尿病の方に、夕食時に①赤ワイン②白ワイン③ミネラルウォーターのいずれかを2年間摂取してもらい、心血管・代謝マーカーへの影響を検討した、前向きランダム化試験の結果が「第22回欧州肥満学会(ECO)」で発表されました。

結果は、赤・白ワインはいずれもミネラルウォーターに比べて僅かに糖代謝を改善。また、赤ワインを摂取した人では脂質のプロファイルも改善したとのことです。

赤・白ワインの糖代謝改善効果は、アルコール分解が速い遺伝子(いわゆる酒豪の遺伝子)を持つ人より、アルコール分解が遅い遺伝子(いわゆる下戸の遺伝子)を持つ人の方がすぐれており、アルコールの分解能力と血糖コントロールに何らかの関係が示唆されるとの事です。

赤ワインの脂質プロファイル改善効果は、赤ワインに含まれるアルコール以外の何らかの成分が関与している可能性があるとの見解が出されたそうです。

ポリフェノールやタンニンなど健康によいと従来から思われている成分が効いているのでしょうか?それとも未知の成分が・・・・・・?

一つのことが解ると、次々と疑問がわいてきて興味は尽きないものですね。

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スタチンによる糖尿病リスク(5)

朝は寒い感じがしますが、日が高くなるにつれ汗ばむような暖かさです。温暖の差が激しいこの時期は以外と疲れ易く風邪や胃腸炎で受診される方が増えております。お気をつけ下さい。

さて、前回の最後に書きました「何とも奇妙な曲線」について書きたいと思います。

そのグラフは、時間経過とともに糖尿病を発症した人の数を積み上げたグラフで、曲線が下にあるほど発症が少ないことを表している医学論文ではよくあるグラフでした。

確かにスタチンを服用した群の曲線が、スタチンを飲んでいない群の曲線を終始上回っていました。ところが、このグラフに表されている4年間のフォローアップ期間で、ちょうど2年目と4年目にスタチンを飲んでいない群の曲線が急上昇して、スタチン群の曲線に追いついているのです。

多分この研究では、2年目と4年目に、糖尿病発症の評価を必ずするように決められているが、間は担当医が任意に糖尿病発症の評価をするように決められていたのだと思います。

スタチンを服用されていない場合には、定期的な投薬がないため決められた日(2年目と4年目)にしか来院されず、任意の糖尿病発症評価が全くされていない人が多数含まれていたと考えられるのです。糖尿病発症の評価がされない限り、「糖尿病を発症した」とはいえないため、見かけ上スタチンを服用していない人の糖尿病発症が少なくなのです。

上記の理由で、この様なグラフを解析に用いられるカプランマイヤー法で有意差がでるのは頷けますが、2年目と4年目の数値を取ってみると有意差は無いと判断できます。

その他の試験を総べて見たわけではないですが、「 糖尿病に良いはずのスタチンが糖尿病の発症を増やしてしまう矛盾」は、「研究の方法」や「人為的な影響」といった妖怪のせいかもしれません。

・・・・・ウィスパーに聞いてみなくちゃ!!

ここまで考えて、やっと悩ましさのモヤモヤは霧散しました。

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スタチンによる糖尿病リスク(4)

前回は、糖尿病発病に対するスタチンの効果が、研究の方法(「無作為割り付け」かどうか)により変わってしまう可能性を書いたのですが、ご理解いただけましたでしょうか?(少し込み入った内容ですみません。)「これにて一件落着!!」と思った所に、無作為割り付け(ランダマイズ)試験でも、スタチンが9%程度糖尿病の発症を増やしているとの論文に行き当たりました。

ビックリして学術部の方にお話をお聞きしたところ、確かにその内容で論文が発表されているとのことでした。お教えいただいた現時点での一般的な考え方としては、「スタチンの種類によっては、若干糖尿病の発症を増加させる可能性がある。」とのことです。

前々回のブログで挙げた考えの一つ「Ⅰ 2001年の研究で使われていたスタチンと違う種類のスタチンが上市され多く使われるようになっている現状から、新しく使われているスタチンが糖尿病発症に良くないかもしれない。」に近い考え方ですね。

「そういう事もあるかもしれないけど・・・・・何だかしっくり来ないなぁ」と呟きながら、資料を見てみると、ある試験における糖尿病発症率のグラフに行き当たりました。

そこには何とも奇妙な曲線が・・・・・・・・・・(次回最終回に続く!)

 

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スタチンによる糖尿病リスク(3)

急に暖かくなって桜が散り始めたかと思ったら、冬のような寒さ・・・・・一体どうなっているのですかねぇ。

さて前回の続きで、糖尿病に良いはずのスタチンが糖尿病の発症を増やしてしまう矛盾(「スタチンによる糖尿病リスク(1)(2)を先にお読みください。)を私がどの様に考えたのかを説明します。

実は今回発表されたフィンランドの試験は、無作為割り付け(ランダマイズ)試験では無いのです。ですので端的に言うと、「スタチンを投薬されたので糖尿病が増えた」のか「スタチンを投薬される状況にある人が糖尿病になり易い」のか判らないのです。

単純化して言えば、スタチンが糖尿病発症を30%抑えたとしても、スタチンを投薬される様な病態(高脂血症)の人が40%糖尿病になり易ければ、見かけ上スタチンの投薬を受けた人は10%糖尿病の発症が多くなってしまうのです。

エビデンスの結果だけでなく、背景を読み解かないと困ったことになるのです。

と書いて、今回のシリーズを終えるつもりだったのですが・・・・・・・・・・・

無作為割り付け(ランダマイズ)試験でも、スタチンが糖尿病の発症を少しですが増やしている報告があったのです!?(フィンランドの研究とは違い9%程度ですが・・・・・)

皆さんに正確な情報をお伝えするため学術部の方にお越しいただき、公式にはどの様に解釈されているのかお教えいただきました。

次回請うご期待!!

 

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スタチンによる糖尿病リスク(2)

先週、桜の開花宣言が出たと思ったら、今日からの雨と風でもう桜が散ってしまうみたいです。儚いのが桜とはいえ、何だか寂しいですね。

さて、高脂血症の治療薬であるスタチン。あらゆる段階の糖尿病の方に投薬が推奨されている一方、フィンランドからスタチンの投薬が糖尿病の発症を46%も増加させるとの報告がなされ、何とも悩ましいと書いた前回でしたが・・・・・・・・・皆さんはどんな説明を考えられましたか?

私もザックリと考えてみたのですが、一見矛盾する両方のエビデンスが正しいとすると、

Ⅰ 2001年の研究で使われていたスタチンと違う種類のスタチンが上市され多く使われるようになっている現状から、新しく使われているスタチンが糖尿病発症に良くないかもしれない。

Ⅱ そもそもスタチン自体が、糖尿病の発症には悪いが糖尿病になった人には良い効果があるのかもしれない。

Ⅲ 研究に参加した人の、年齢・人種・性別などのスタチン以外の要因が強く働いたのかもしれない。

Ⅳ 各研究における「糖尿病」の定義が異なっていて、新しい研究ではより厳しく糖尿病を判定するようになっているかもしれない。

等々、が考えられます。どれもあまりしっくり来ないのですね。

ただⅣ番はスタチンはインスリンの分泌を少なくすることが基礎研究から知られているので、「β細胞の保護」を通して糖尿病の悪化を防ぐ可能性があります。そうなら、スタチンは軽い糖尿病にするが重症化をさせないので、一見矛盾した結果になっている可能性があります。

本当にそうなのでしょうか、もっと納得できる説明はないのでしょうか・・・・・・(つづく)

 

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スタチンによる糖尿病リスク(1)

大阪でも桜の開花宣言がなされました。標準木に選ばれたソメイヨシノに五個以上花が咲くと「開花宣言」となるようです。

麗らかな春が近づいているのに、何とも悩ましい報告がなされましたので書いてみます。

以前のブログで米国糖尿病学会(ADA)が全ての糖尿病患者さんにスタチンの投薬を推奨するとのガイドラインを発表したと書いた(ブログ「糖尿病とスタチン」参照)のですが、今回フィンランドから「スタチン投薬によって糖尿病の発症が増加する。」との発表がなされたのです。

最近、スタチン投薬が糖尿病発症のリスクを上昇させるとの報告が散見されていたのですが、今回は何と!46%も上昇させるとのことなのです。

2001年のWOSCOPS研究のサブ解析はスタチンの投薬によってリスクが30%低下したとの報告があり今回の発表との整合性が取れないため、悩ましいのです。

色々と理由は考えられるのですが、一見矛盾するエビデンスが出て来た時にどの様に考えるか(医師によっても違いますが)、次回から書き連ねてみたいと思います。

(皆さんなら、どの様な説明をおつけになりますか・・・・・・?)

 

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玄米で糖尿病予防

一旦減ってきたと思っていたら、インフルエンザと胃腸炎で来院される方が増えています。うがい、手洗いなど感染予防にお気をつけ下さい。

さて、琉球大学から注目の研究結果が発表されました。「玄米で糖尿病予防」出来るとの報告です。
玄米に豊富に含まれる「γオリザノール」が膵臓でインスリンを分泌している「β細胞」の機能を改善するとのことです。

以前から、「糖尿病の治療は血糖コントロールではなく『膵臓のβ細胞』保護!」とこのブログに書いてきた私には、見逃せない内容ですね。

この琉球大学のグループは2012年にも玄米を食べると、「γオリザノール」が脳に作用し高脂肪食を摂取する欲求を抑える効果があるという研究成果を発表していました。

まさに玄米恐るべしです。

このブログを読んで、「今日から玄米を沢山食べるぞ!!」と思われた方、玄米を沢山摂取するとカロリーが増えて糖尿病になりますよ!

過ぎたるは及ばざるが如しとはよく言ったものですね。

 

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糖尿病とスタチン

先週辺りから、風邪やインフルエンザで受診される方が増えています。皆様も感染予防にお気をつけ下さいね。

さて、今回は米国糖尿病学会(ADA)が先月発表したガイドラインの話です。

糖尿病のガイドラインの特徴として、治療に際して血糖値だけではなく、血圧や脂質の目標値が決められていることが挙げられます。心血管疾患予防の観点から、糖尿病だけでなく他の生活習慣異常を改善する事が大切だというわけです。

今回のガイドラインの改訂では血圧に脂質に関しては目標値を目指した治療ではなく、それぞれの心血管リスクに基づいた治療方針に変えられています。

「心血管疾患を有する全糖尿病患者において、生活習慣の是正に高強度のスタチン療法を加えるべき(グレードA)」

「40−75歳で他に心血管疾患の危険因子のない糖尿病患者では、中強度のスタチン療法と生活習慣の是正を考慮(グレードA)」

細かい文言は、まだ原文で読んでいませんが、実質全ての糖尿病患者にスタチン療法を推奨した内容になっているようです。

(グレードA)は、大規模研究からきちんとしたエビデンスが出されており、信頼度が非常に高い事を示しています。

医学も日々進化していますね。

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