日別アーカイブ: 2016年2月8日

リワークプログラム(その26)

心療内科 精神科大阪府 豊中市千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワークプログラム」の26回目です。引き続き、リワークプログラム(職場復帰支援プログラム)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場復帰リワーク)の可否についての判断
職場復帰可否リワーク可否)について定型的な判断基準を示すことは困難であり、個々のケースに応じて総合的な判断を行わなければならないです。労働者の業務遂行能力が職場復帰時リワーク時)にはまだ病前のレベルまでは完全に改善していないことも考慮したうえで、職場の受け入れ態勢と組み合わせながら判断しなければならないです。
職場復帰判定基準リワーク判定基準)の例として、労働者が職場復帰に対してリワークに対して)十分な意欲を示し、通勤時間帯に一人で安全に通勤ができること、会社が設定している勤務時間の就労が可能であること、業務に必要な作業(読書およびコンピュータ作業、軽度の運動等)をこなすことができること、作業等による疲労が翌日までに十分回復していること等のほか、適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間の眠気がないこと、業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していること等があげられるでしょう。多くの報告や経験上の復職判断リワーク判断)の目安として、回復程度が全般的に6~8割程度以上あれば、再発のリスクよりも復職のメリットリワークのメリット)のほうが大きくなるようです。
具体的な復職判断ツールリワーク判断ツール)の例として「職場復帰判定リワーク判定)のチェックリスト」(表1)にまとめます。
◇表1 職場復帰判定のチェックリストリワーク判定のチェックリスト

●労働者が職場復帰に対して十分な意欲リワークに対して十分な意欲)を示している
●病状が回復している(主治医の許可がある)
●適切な睡眠覚醒リズムが整っている(設定した起床時間に起床可能、良好な睡眠)
●業務に必要な作業(読書・コンピュータ作業、軽度の運動等)ができる
●昼間の眠気は業務に支障のない範囲内である
●作業等による疲労が翌日までに十分に回復している
●一人で安全に通勤可能である
●会社が設定している勤務時間の就労が可能である(疲労や回復の程度などを考慮)
●職場の理解があり、職場環境調整が行われている
●阻害因子についての検討および対策がなされている

試し出勤制度(リハビリ出勤制度)が整備されている事業場や、事業場外の職場復帰支援リワーク支援)サービス等が利用可能な場合には、職場復帰支援サービスリワーク支援サービス)を利用することにより、より実際的な復職判断が可能リワーク判断が可能)となります。その利用については復職面談リワーク面談)にて検討を行い、規定を明確にしておく必要があります。
リハビリ出勤制度を設けている場合、より早い段階で職場復帰の試みリワークの試み)を開始することができ、結果として早期の復職に結びつけるリワークに結びつける)ことが可能となります。また、労働者自身が実際の職場において自分自身および職場の状況を確認しながら復職の準備リワークの準備)を行うことができるため、より高い職場復帰率リワーク率)をもたらすことが期待されます。しかし、この制度の運用においては、試し出勤の人事労務管理上の位置づけについて十分に検討しておく必要があるほか、この制度が職場の都合でなく労働者自身の主体的な考えや判断に基づいて運用されるよう留意すべきです。
リハビリ出勤制度がない場合には、フルタイムに耐えうる健康水準が必要な分、復職判断基準リワーク判断基準)が厳しく、会社ごとの職場復帰判断基準を定めるリワーク判断基準を定める)ことが必要です。復職判断基準が厳しいリワーク判断基準が厳しい)と休業期間が長くなると考えがちであるが、復職判断基準を甘くするリワーク判断基準を甘くする)ことで再発した場合のほうが労働者本人や周囲への影響は大きいです。また、職場復帰後リワーク後)の業務遂行能力においては、リハビリ出勤制度を利用した場合よりも高い水準が期待できます。しかし、リハビリ出勤制度の是非よりも、その会社や会社制度にマッチした制度運用や復職支援の方法リワーク支援の方法)を考えるほうが重要であるように思えます。
以上、心療内科豊中市千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。