日別アーカイブ: 2016年6月9日

リワーク(復職)支援(その34)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の34回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】「心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援リワーク支援)の手引き」(以下、「復職ガイドラインリワークガイドライン)」)には、就業規則の別則として定める「メンタルヘルス疾病による職員の休業及び復職リワーク)に関する規程(例)」が掲載されています。この中に、復職前リワーク前)に「有給」で行う「試し出勤」制度の規定(例)が掲載されています。
『(試し出勤等)
第9条 ○○課長は、第7条第1項の規定による復職の意向を申し出たリワークの意向を申し出た)従業員に対し、通勤訓練を行い、その結果を報告することを勧奨することができる。なお、○○課長は産業医を通して、主治医に運転の可否について聴取し、主治医が自動車の運転を危険であるとした場合は自動車による通勤訓練(及び職場復帰後リワーク後)の自動車通勤)は認めない。
2 前項の通勤訓練は、試し出勤ではない。
3 ○○部長は、必要と認める場合には、第6条の規定により職場復帰の手続きリワークの手続き)を開始する従業員に対し、○○日の範囲内で試し出勤を命じることができる。
4 試し出勤は、原則として元の職場で行うものとし、産業医が必要と認める範囲において、労働時間の短縮、仕事上の配慮など、本来の業務からの軽減を行うことができる。
5 試し出勤中は有給とし、交通費を支払う。』
この規定は、3にある通り「復職前」の「休職中」「リワーク前」の「休職中」)に行うもので、5にある通り「有給」つまり、賃金を支払うことになっています。3には「試し出勤を命じる」となっていますので、これは業務命令以外の何物でもありません。会社の指揮命令下にある労働時間となり、賃金を支払う必要があることになります。
休職は、労働契約関係を維持しながら労働義務を免除する制度であり、解雇を猶予する制度と考えられています。休職そのものが会社が命じたものですから、休職中の社員に「試し勤務」を命じることもできることになります。但し、「第7条第1項の規定による復職の意向リワークの意向)」には主治医による復職可リワーク可)の診断書(意見書)が必要です。4にあるように、産業医が労働時間の短縮をすべきという意見があればそれに従うべきですし、会社の安全配慮義務を考えるならば、いきなりフルタイムの「試し出勤」を課すことはできれば避けたいところです。もちろん、実施に当たっては、このような規定を整備しておく必要があることはいうまでもありません。
さて、この復職前(休職中)リワーク前(休職中))に行う「有給」の試し勤務には何か問題はないのでしょうか。良く指摘されるのは収入の問題です。短時間勤務の場合、一般的には時間比例で賃金が支払われます。賃金が支払われたら、傷病手当金は受給できません。ですから、短時間勤務の「試し出勤」をしたら、賃金が傷病手当金(おおよそ、休業前の賃金の3分の2相当)より少ないということがあり得ます。「試し勤務」を命じられたら、収入が減ってしまうというわけです。
実務では、このような「試し出勤」制度を設ける場合には、限度日数を設けるとともに、短時間勤務の勤務時間や日数、その間の処遇などについて、予め労働者とよく話し合って、(できるだけ書面で)同意を得ておくべきでしょう。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。