千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の88回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅵ)
●復職支援を希望(リワークを希望)する場合
休職したうつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者の復職支援に関して(リワークに関して)は、2009(平成21)年3月に「復職支援の手引き(リワークの手引き)」が改正されたように、メンタルヘルス対策の重要課題の一つです。公的機関の復職支援(公的機関のリワーク)を希望するときには主治医(精神科医・心療内科医)との連携がきわめて重要となります。
公的機関の復職支援プログラム(公的機関のリワークプログラム)としては、障害者職業センターのリワーク支援の活用(職場復帰支援の活用)を考えたいです。メンタルヘルス障害特性についての知識と、職業評価と職業指導の知識と技術をあわせ持つメンタルヘルス障害者職業カウンセラーの存在が力になります。
精神保健福祉センターでも、「うつ病リワーク(うつ病復職支援)」を実施しているところがあります。また、デイ・ケアでは、メンタルヘルス専門医療機関が行っている統合失調症を対象の中心とするものではなく、より広いメンタルヘルス不調者の利用で運営していることが多いです。復職への準備(リワークへの準備)としてデイ・ケアを活用できる場合もあります。
なお、まだ都市部中心であるが、復職支援施設(リワーク施設)でリワークプログラム(復職支援プログラム)を行っているところも増加してきました。
◎リワーク支援の概要(職場復帰支援の概要)
⇒地域障害者職業センター(以下、地域センター)で実施されているリワーク支援に関して(職場復帰支援に関して)は、全国の地域センターの運営を統括する「障害者職業総合センター」(千葉市)が、民間企業に在職するメンタルヘルス不調休職者の復職とその後の職場適応(リワークとその後の職場適応)および雇用事業主を復職支援(雇用事業主をリワーク)していくための職業リハビリのリワークプログラム(職業リハビリの復職支援プログラム)として、2002(平成14)年度に開発しました。
図1はリワーク支援の時系列的な流れ(職場復帰支援の時系列的な流れ)を示しています。この図に基づいて、次回以降、リワーク支援の概要を紹介(職場復帰支援の概要を紹介)します。
◇図1 リワーク支援の実際(職場復帰支援の実際)
『<Step1>職場復帰に向けたコーディネート(リワークに向けたコーディネート)
→休職者・主治医(精神科医・心療内科医)・企業担当者(人事労務・上司・産業看護職)と面談。情報収集や相談を通じ、復職に向けた課題点(リワークに向けた課題点)や復職の進め方を整理(リワークの進め方を整理)』
⇓
『<Step2>復職に向けた(リワークに向けた)復職支援プラン(リワークプラン)への合意形成
→休職者・主治医(精神科医師・心療内科医師)・企業担当者の合意を形成し、本格復職支援(本格リワーク)に入る』
⇓
『<Step3a>休職者に対して
→復職支援プログラムの提供(リワークプログラムの提供)
<Step3b>事業主に対して
→リワークプログラム実施(復職支援プログラム実施)情況を共有しながら、復職準備(リワーク準備)に関する助言や復職支援を実施(リワークを実施)』
⇓
『<Step4>復職後(リワーク後)のフォローアップの実施
→復職後の円滑な職場適応(リワーク後の円滑な職場適応)に関する助言や復職支援を実施(助言やリワークを実施)』
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
月別アーカイブ: 2018年8月
復職支援(リワーク)(その87)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の87回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅴ)
労働者のメンタルヘルス管理・労務管理、特にメンタルヘルス不調者の復職において(リワークにおいて)は人事労務を中心として多様な職種がかかわります。お互いの主張が対立することも少なくないです。産業医は職場における産業保健の要として、管理監督者による労務管理や環境調整、産業保健スタッフによる労働者の復職支援(労働者のリワーク)、さらには主治医(精神科医・心療内科医)との連携等に関して指導的な役割が求められています。
①休職していたメンタルヘルス不調者の復職は、原則として(リワークは、原則として)「復職支援の手引き(リワークの手引き)」にある5つのステップに従って順次進めていきます。
②この復職支援の過程(リワークの過程)で産業医は、主治医(精神科医師・心療内科医師)による復職可能診断書(リワーク可能診断書)を踏まえて労働者本人と面談し、メンタルヘルス疾患の疾病性の改善に疑問がある場合には主治医(心療内科医・精神科医)との意見交換を行ったうえで復職可否(リワーク可否)について事業者に意見するが、復職の最終判断(リワークの最終判断)は事業者(人事労務担当者)が行います。
③産業医は管理監督者による労務管理や環境調整、産業保健スタッフによる労働者の復職支援等に関して(労働者のリワーク等に関して)適確な指導・行動が求められています。
■復職の阻害要因(リワークの阻害要因)
⇒メンタルヘルス不調からの復職においては職場の積極的な受け入れ(リワークにおいては職場の積極的な受け入れ)、同僚の復職支援(同僚のリワーク)が不可欠であるが、職場側の復職阻害要因(職場側のリワーク阻害要因)として、上司がメンタルヘルス不調の完治を要求(「薬を飲まなくていいくらいまで戻ってくるな」と拒絶)したり、「就業上の配慮は無理」「あてがう適当な業務がない」「メンバーへ一層負担がかかる」などと突き放したり、セクハラ・パワハラで休職したのに該当者に自覚がなかったり、など職場風土に大きな問題があることがあげられます。仮に、職場の受け入れが問題となり、再度休職に至ったり、最終的に退職に追い込まれたりする場合には民事訴訟のリスクともなりうるため、慎重な対応が必要です。
一方、労働者側にはメンタルヘルス疾患の疾病性の問題があります。休職に至ったメンタルヘルス不調者の診断名がうつ状態などメンタルヘルス不調という場合が多いが、必ずしもうつ病などメンタルヘルス疾患ではなく、適応障害、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、発達障害が背景にある場合も少なくないです。メンタルヘルス科専門医師(心療内科医師・精神科医師)らは職場における休職・復職の背景調査(リワークの背景調査)を行い、休職を繰り返すほど職場要因が薄れ、メンタルヘルス疾患の疾病性の要因が大きくなると報告しています。1回目の休職・復職(1回目の休職・リワーク)では、職場環境の調整、本人の就業・対人スキルの向上などが重要であるが、複数回の休職・復職(複数回の休職・リワーク)では主治医との連携をより強化していかねばならないです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
復職支援(リワーク)(その86)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の86回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅳ)
■<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定(リワークの決定)
⇒第3ステップを踏まえて、労働者のメンタルヘルス状態の最終確認、および就業上の配慮等に関する産業医の意見書作成を経て、事業者による最終的な職場復帰(最終的なリワーク)の決定を行い、労働者ならびに職場に通知します。試し出勤(リハビリ出勤)制度がある事業者ではその間の業務遂行能力をみて復職の最終判断(リワークの最終判断)することも可能です。
職場復帰時(リワーク時)の関係者の役割分担と連携のあり方においては人事労務担当者が全体としてのコーディネート役を担うほうがスムーズに復職できる(スムーズにリワークできる)ことが多いが、産業医が人事労務担当者と連携しつつ全体を導いていくことも時に望まれます。
■<第5ステップ>職場復帰後のフォローアップ(リワーク後のフォローアップ)
⇒職場復帰後(リワーク後)は、管理監督者による観察と職場復帰支援(観察とリワーク支援)のほか、産業医・産業保健スタッフなどによる定期的な復職後のフォローアップ(定期的なリワーク後のフォローアップ)を実施し、メンタルヘルス疾患の再燃・再発の有無、治療状況の確認、勤務状況・業務遂行能力の評価等を行いながら、適宜、職場復帰支援プラン(リワーク支援プラン)の見直しを行います。復職後のフォローアップ期間(リワーク後のフォローアップ期間)は3~6か月程度で、産業医面談は月1回は行うことが望ましいです。職場復帰した労働者(リワークした労働者)や復職者(リワーク者)を職場復帰支援する管理監督者(リワーク支援する管理監督者)・同僚労働者のストレス軽減を図るため、職場環境等の改善や、職場復帰支援への理解度(リワーク支援への理解度)を高めるための教育研修を行うことも求められています。
上記のいずれのステップにおいてもプライバシーの保護(個人情報の保護)は極めて重要な課題です。労働者の健康情報、とりわけメンタルヘルスに関する情報は機微な情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
復職支援(リワーク)(その85)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の85回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅲ)
■<第3ステップ>職場復帰の可否(リワークの可否)の判断および職場復帰支援プランの作成(リワーク支援プランの作成)
⇒復職の最終決定(リワークの最終決定)の前段階として、以下の(ア)から(オ)に示す情報収集と評価を行ったうえで職場復帰が可能(リワークが可能)かどうかを総合的に判断し、職場復帰を支援するため(リワークを支援するため)の具体的プラン(職場復帰支援プラン(リワーク支援プラン))を作成します。
(ア)労働者の職場復帰に対する意思(リワークに対する意思)の確認:家族の強い希望で復職可能(リワーク可能)のメンタルヘルス診断が出ている場合やメンタルヘルス疾患休職期間が満了に近づいたり、傷病手当金が減額されて経済的に苦しくなっているなどの背景がある場合があります。
(イ)産業医等による主治医(精神科医・心療内科医)からの意見収集:復職可能診断書(リワーク可能診断書)が本人のメンタルヘルス不調の回復を証さず、具体的な就労条件の記載がない場合には、本人の同意を得て主治医(精神科医師・心療内科医師)からの情報や意見を収集します。
(ウ)労働者のメンタルヘルス状態等の評価:治療状況およびメンタルヘルス不調の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する考えなどの情報を評価します。
(エ)職場環境等の評価:業務および職場との適合性、作業管理・作業環境管理に関する評価、職場側による復職支援準備状況(リワーク準備状況)等について評価します。
(オ)その他:治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の復職支援(家族のリワーク)状況、職場復帰の阻害要因(リワークの阻害要因)などを評価します。
事業場の考える職場復帰判定基準(リワーク判定基準)の例としては、以下のようなものがあります。
・休業中の日常生活において、起床・就寝時間、食事の摂取、日中の活動などの生活リズムが取り戻されており、それがある程度の期間維持されていること。
・通勤時間帯に1人で安全に通勤ができること。
・就業規則に定められている必要な勤務時間中、会社にいられるだけのメンタルヘルス的・身体的な力が回復していること。
・読書、パソコン作業が数時間継続してできる(集中できる)こと。
以上の評価を経て、産業医・産業保健スタッフを中心に人事労務担当者、管理監督者らが協議して職場復帰の可否について判断(リワークの可否について判断)を行います。
職場復帰が可能と判断(リワークが可能と判断)された場合には、①職場復帰日(リワーク日)、②管理監督者による就業上の配慮(業務内容・業務量の変更、段階的な就業上の配慮、通院等治療上必要な配慮、業務サポート等)、③人事労務管理上の対応(配置転換・異動の必要性、勤務制度変更の必要性等)、④産業医等による医学的見地からみた意見、⑤フォローアップの方法や就業制限の見直し時期、⑥その他試し出勤(リハビリ出勤)制度の利用などを盛り込んだ、具体的な職場復帰支援プラン(具体的なリワーク支援プラン)を作成します。
職場復帰が不可(リワークが不可)と判断された場合には、前述の(ア)~(オ)の情報・評価結果の中で問題と思われる事項について、本人・職場に改善への取り組みを促し、しかるべき手順を踏んで再度アセスメントをやり直します。メンタルヘルス疾患の疾病性の改善に疑問符がつく状況では主治医(心療内科医・精神科医)との連携が欠かせないです。特に傷病手当の申請などにおいて、企業の復職不可判断(リワーク不可判断)に対する主治医(心療内科医師・精神科医師)の理解は必要不可欠です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
復職支援(リワーク)(その84)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の84回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅱ)
■<第1ステップ>メンタルヘルス疾患休業開始および休業中のメンタルヘルスケア
⇒労働者から管理監督者に主治医(精神科医・心療内科医)によるメンタルヘルス疾患休業診断書が提出されたときから復職支援が始まり(リワークが始まり)ます。管理監督者は人事労務担当者や産業保健スタッフにメンタルヘルス疾患休業診断書が提出されたことを連絡します。人事労務担当者等は労働者がメンタルヘルス疾患休業期間中に安心して療養に専念できるよう、有給休暇の残り日数、社内のメンタルヘルス疾患休暇・療養制度、傷病手当金など経済的な保障、休業の最長(保障)期間、不安・悩みなどのメンタルヘルス相談先の紹介、公的または民間の職場復帰支援サービス(リワーク支援サービス)(リワーク事業)などについて情報提供を行います。本人が一人暮らしの場合は家族にも連絡し、万が一にも自殺する危険性があることを考慮して家族のもとでの療養を勧めます。
メンタルヘルス疾患休業診断書が出ているにもかかわらず、「引き継ぎが必要」「周りに迷惑をかけられない」「戻る場所がなくなっては困る」などの理由で仕事を続けようとする労働者に対しては休職命令を出し、しっかり休んでもらうことが健康配慮義務上も重要です。本人に対して「会社に迷惑をかけている」というように感じさせるような言動は職制のみならず職場全員の心がけとして厳に慎みたいです。メンタルヘルス専門医師(精神科医師・心療内科医師)らの研究によると、メンタルヘルス不調で休業・復職を2回繰り返した(リワークを2回繰り返した)214人については平均休業日数が1回目107日に対して2回目157日に長くなっていました。再休業に至る労働者の1回目の休業日数が十分ではなかった可能性が示唆され、労働者本人が焦って復職(焦ってリワーク)を急がなくてもいいように十分な休養を勧めることが重要です。休業中は月1回程度労働者からの連絡を受けることが望ましいし、産業医が選任されている場合は産業医面談という形で会社に来てもらい、状況確認をするのもよいです。
管理監督者・人事労務担当者は休職前の勤務状況について整理しておくことが望まれます。具体的には、時間外勤務状況とメンタルヘルス不調の発生理由および会社としてのメンタルヘルスケア対策(業務の平準化への取り組みなど)、職場の人間関係の問題(特にパワハラ・セクハラ・モラハラの有無)、本人の業務遂行能力や熱意、問題行動(身なりや雰囲気の変化、会話量・内容の変化、独り言・独り笑い、場にそぐわない言動、対人関係のトラブル、職場での孤立など、いわゆる事例性)の有無などについて同僚・上司・家族からも情報収集し、産業医・産業保健スタッフと情報共有しておきます。
■<第2ステップ>主治医(心療内科医・精神科医)による職場復帰可能(リワーク可能)の判断
⇒休業中の労働者から事業者に対して職場復帰の意思(リワークの意思)が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医(心療内科医師・精神科医師)による職場復帰可能の診断書(リワーク可能の診断書)の提出を求めます。復職可能の旨の診断書(リワーク可能の旨の診断書)には単に復職可能(単にリワーク可能)というだけではなく、就業上の配慮に関する主治医の意見を具体的に記入してもらうことが必要です。そのためにはあらかじめ主治医とコンタクトをもち、職場で必要とされる業務遂行能力や勤務制度に関する情報を提供し、労働者のメンタルヘルス状態が就業可能なレベルにまで回復していることを復職診断書(リワーク診断書)に記載してもらうことが理想ではあります。ただし、職場と主治医との情報共有については本人の同意を得ることが必須で、そのうえで職制が本人の診察に同伴するか、可能なら別に時間枠を設けていただくなどして主治医から意見を求めます。本人の同意なしに行動すると、主治医としての守秘義務のために当然ながら情報は得られないです。産業医が主治医にコンタクトをとり、特にメンタルヘルス疾患の疾病性に関して意見交換することがより望ましいです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
復職支援(リワーク)(その83)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の83回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))〗(Ⅰ)
メンタルヘルス不調の気づきや職場環境改善(一次予防)を主たる目的として、平成27(2015)年12月からストレスチェック制度が始まったが、休職していたメンタルヘルス不調者の復職(三次予防)(リワーク(三次予防))は以前から常に産業保健の中心課題の1つでした。平成24(2012)年、労働者健康状況調査によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休職し、または退職した労働者がいる事業場は8.1%となっています。
メンタルヘルス不調者の復職について(リワークについて)、厚生労働省は「心の健康問題により休業(メンタルヘルス不調により休業)した労働者の職場復帰支援の手引き(リワーク支援の手引き)」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))を出しています。この復職支援の手引き(リワークの手引き)の中で、円滑な職場復帰(円滑なリワーク)のためにはリワークプログラム(復職支援プログラム)の策定や関連規定の整備等により、休業から復職までの流れ(リワークまでの流れ)をあらかじめ明確にしておくことが必要とされ、復職支援の流れ(リワークの流れ)が示されています。次回以降に各段階における、職制・産業保健スタッフのとるべきあるいは避けるべきアクションや判断について述べたいと思います。
◇図1 職場復帰支援の流れ(リワーク支援の流れ)
『<第1ステップ>メンタルヘルス疾患休業開始および休業中のメンタルヘルスケア
ア.メンタルヘルス疾患休業開始時の労働者からの診断書(メンタルヘルス疾患休業診断書)の提出
イ.管理監督者によるメンタルヘルスケアおよび事業場内産業保健スタッフ等によるメンタルヘルスケア
ウ.メンタルヘルス疾患休業期間中の労働者の安心感の醸成のための対応
エ.その他』
⇓
『<第2ステップ>主治医(精神科医・心療内科医)による職場復帰可能(リワーク可能)の判断
ア.労働者からの職場復帰の意思表示(リワークの意思表示)と職場復帰可能の判断(リワーク可能の判断)が記された復職可能診断書(リワーク可能診断書)の提出
イ.産業医等による精査
ウ.主治医(精神科医師・心療内科医師)への情報提供』
⇓
『<第3ステップ>職場復帰の可否(リワークの可否)の判断および職場復帰支援プラン(リワーク支援プラン)の作成
ア.情報の収集と評価
(ア)労働者の職場復帰(労働者のリワーク)に対する意思の確認
(イ)産業医等による主治医(心療内科医・精神科医)からの意見収集
(ウ)労働者のメンタルヘルス状態等の評価
(エ)職場環境等の評価
(オ)その他
イ.職場復帰の可否についての判断(リワークの可否についての判断)
ウ.職場復帰支援プランの作成(リワーク支援プランの作成)
(ア)職場復帰日(リワーク日)
(イ)管理監督者による就業上の配慮
(ウ)人事労務管理上の対応
(エ)産業医等による医学的見地からみた意見
(オ)フォローアップ
(カ)その他』
⇓
『<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定(リワークの決定)
ア.労働者のメンタルヘルス状態の最終確認
イ.就業上の配慮等に関する意見書の作成
ウ.事業者による最終的な職場復帰の決定(最終的なリワークの決定)
エ.その他』
⇓
【職場復帰(リワーク return to work)】
⇓
『<第5ステップ>職場復帰後(リワーク後)のフォローアップ
ア.メンタルヘルス疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
イ.勤務状況および業務遂行能力の評価
ウ.職場復帰支援プランの実施状況(リワーク支援プランの実施状況)の確認
エ.治療状況の確認
オ.職場復帰支援プランの評価(リワーク支援プランの評価)と見直し
カ.職場環境等の改善等
キ.管理監督者、同僚等への配慮等』
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
復職支援(リワーク)(その82)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の82回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】厚生労働省の調査では、うつ病勤労者などメンタルヘルス不調者が2000(平成12)年頃と比較して約2.5倍増加していると報告しています。わが国では、休職に至るうつ病勤労者などメンタルヘルス不調者も少なくないです。また、メンタルヘルス不調が改善して復職に至った(改善してリワークに至った)としても、その後の再休職率が高いことが知られています。そのため、メンタルヘルス不調が改善した後に、リワークプログラム(復職支援プログラム)をはじめとした職場復帰準備性(リワーク準備性)を高めるような取り組みが全国各地で展開されています。休職に至る勤労者うつ病などメンタルヘルス不調の治療において考えておく必要があることの1つとして、各企業において個別に定められている休職期間があるということです。つまり主治医(精神科医・心療内科医)は、その期間内にうつ状態などメンタルヘルス不調の改善、職場復帰準備性の回復(リワーク準備性の回復)、就労能力の回復をめざさなければならないです。しかし、現実には難治性うつ病などメンタルヘルス障害のようにうつ状態などのメンタルヘルス不調が遷延するような事例がしばしばみられます。このような事例に対する復職支援の指針(リワークの指針)はほとんどないものの、休職開始時の情報収集、産業医との連携、睡眠覚醒リズムの回復をすることで復職成功率(リワーク成功率)を高める必要があると思われます。
おそらく、わが国の難治性うつ病勤労者などメンタルヘルス障害者は、①うつ症状などメンタルヘルス症状が遷延している、②生活リズムが十分整っていない、③職場復帰支援(リワーク支援)やリワークプログラムなどの介入(復職支援プログラムなどの介入)を受けられないケースが多い、④残休職期間内に十分メンタルヘルス症状が改善しないケースが多いことが予測されます。
そのため、主治医(精神科医師・心療内科医師)は早期にメンタルヘルス診断および適切な治療を行うことは言うまでもなく、職場との良好な連携をとること、予見性をもったうえで治療や生活指導を行うことが現時点でできることではないかと考えられます。
◎休職期間満了退職が近づいたときに考えておくこと
⇒主治医(心療内科医・精神科医)は、抑うつ症状などメンタルヘルス症状の改善のためにさまざまな介入を検討しています。難治性うつ病などのメンタルヘルス障害で長期に外来フォローしている事例では、メンタルヘルス診断の再考、薬物療法の工夫(他の抗うつ薬への切り替え、併用、増強療法など)、非薬物療法の併用(認知行動療法、対人関係療法など)、環境調整などを行うが、休職期間満了の期日が近づいたときには今後のことを判断しなければならないです。この点に対するガイドラインはなく、個々の事例に応じた判断が必要になります。さらに本来復職(本来リワーク)はメンタルヘルス症状が十分改善し、安定したメンタルヘルス状態で行うことが望ましいということを理解したうえで次のように考えます。
まず考えなければいけないことは、「上記うつ状態などメンタルヘルス不調の改善・回復」という側面と「勤労者・社員であるという患者様の地位保全」という点です。就労継続できる可能性がゼロでない場合には、主治医(心療内科医師・精神科医師)は通常復職可能レベル(リワーク可能レベル)と考えている基準をやや下げて「復職可能(リワーク可能)」という復職診断書(リワーク診断書)の作成を考えることもあります。こういったケースでは職場と臨床現場の連携を事前にしておくと復職がスムーズ(リワークがスムーズ)になる可能性があります。
実際に、上記うつ状態などのメンタルヘルス不調が十分改善していない患者様であっても事前に職場と十分に議論したうえで復職に至った(リワークに至った)事例もあります。事前に連携をとることで、職場が積極的かつ可能な範囲で最大限の配慮をしてくれる場合があります。連携が十分とれていないと、職場側は主治医の復職可能診断書(リワーク可能診断書)に対して不信感をもつことも少なくないです。職場への情報提供の際には個人情報に十分配慮し患者様自身の同意が必要であることも留意する必要があります。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
火曜日担当医の葛原です
先日、梅田芸術劇場で宝塚歌劇を観てきました。医師会の行事だったので、その一画だけ男性が多く、皆一斉に配られた弁当を食べたりして、違和感がありました。プログラムは「WEST SIDE STORY」名曲がいっぱいで懐かしく楽しかった。ダンスは、さすがに宝塚で素晴らしかった。男性役トップの真風 涼帆のトニーが銃で撃たれるシーンではファンの女性たちが泣きだして先生たちは呆然としていました。
皆様は普段職場での人間関係による精神的ストレスで、頭痛・めまい・疲労など体調不良や不眠・不安・憂うつ感などメンタルヘルス不調を来してませんか?休日宝塚歌劇など芸術鑑賞でストレス発散をするのもいいですし、気分転換してもメンタルヘルス不調が改善しない方は、豊中市 千里中央・心療内科「杉浦こころのクリニック」へ是非ご相談下さい。
復職支援(リワーク)(その81)
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の81回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎復職に向けた(リワークに向けた)生活リズム調整のポイント
⇒難治性うつ病でうつ状態などのメンタルヘルス不調が遷延しているなかで職場復帰を考える際(リワークを考える際)には、最低限必要な要件として生活リズムの改善が必要です。朝きちんと起床して動けることが復職の際には必要(リワークの際には必要)だからです。しかし、実際には復職直前(リワーク直前)のうつ病勤労者などメンタルヘルス不調者でもスムーズな覚醒後の離床ができないといった報告もあるので、この指導には時間が必要だと思われます。難治性うつ病などメンタルヘルス障害の状況での復職を考える場合(リワークを考える場合)には、休職期間満了退職となる前の段階である程度の復職への準備(リワークへの準備)が必要だと思われます。
■①起床後は、カーテンを開け、光を浴びて、着替えをする
休職中は、仕事がないのでどうしても家でごろごろして過ごす事例が臨床場面でよくみられます。また、パジャマやジャージで生活をしている患者様も多いように感じます。朝は、まず起床し、光を取り込む作業をするとともに着替えて生活をすることが復職準備性(リワーク準備性)を高めることに有効です。
■②復職時(リワーク時)の勤務時間に合わせた起床、就床を意識する
復職をする(リワークをする)場合には、勤務形態によって起床、就床時間が異なります。この復職をする場合(このリワークをする場合)には通勤時間まで加味したような起床、就床を考えなければならないです。入院治療の場合、多くはメンタルヘルス専門病院で起床、就床時間が定められているが、復職をめざす(リワークをめざす)際にはその個人個人の復職に合わせた(リワークに合わせた)形での起床、就床時間の指導をするべきです。最近、メンタルヘルス専門病院で行っている復職に向けたリハビリ(リワークに向けたリハビリ)としての集団リワークプログラム(復職支援プログラム)のなかで、アクチグラフを使った睡眠覚醒リズムの評価においてスムーズに覚醒できていない患者様が多くいることが報告されました。この研究ではうつ状態などメンタルヘルス不調が十分改善している患者様を対象としているため、難治性うつ病などのメンタルヘルス障害の患者様で同じようなことが起きているかは明らかではないが、覚醒後にスムーズに起きて動き出すことができるかどうかもポイントの1つだろうと考えています。
■③早い時間帯(特に午前中)から動き出す
わが国のうつ病などメンタルヘルス不調の治療においては、休養を重んじる文化が強いです。実際にうつ病などメンタルヘルス不調の急性期では、活動性を維持することは困難です。しかし、うつ状態などメンタルヘルス不調が改善してきた際には、復職に向けて体力面の回復(リワークに向けて体力面の回復)が必要となります。うつ病などメンタルヘルス不調で休職中の54人を復職決定時(リワーク決定時)の活動性によって2群に分け、復職後(リワーク後)2年間のフォローアップをした研究では、活動性が高い群のほうが復職継続率(リワーク継続率)が高かったという結果が得られました。活動性が低い休職中のうつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者に対して、活動性を高めることが有効か否かは、はっきりとした結論は出ていないが、現実的には復職前(リワーク前)には体力面も含めた活動性を高める取り組みが重要であると考えられます。
■④睡眠覚醒リズムを阻害する要因への介入
睡眠覚醒リズム障害は上記うつ病勤労者などメンタルヘルス不調者で抱える頻度が高く、残遺症状としても多いことが知られています。上記難治性うつ病などメンタルヘルス障害の患者様の場合においても、うつ症状などメンタルヘルス症状の遷延のみならず睡眠覚醒リズム障害が少なからず存在します。メンタルヘルス専門医(精神科医・心療内科医)は初診の時点で、飲酒歴やカフェイン摂取などの聴取をして睡眠衛生指導を行うが、経過のなかで患者様が飲酒を始めたり、カフェイン摂取が過剰になったりした際には見落とされやすいです。また、最近ではスマートフォン、インターネットなどを長時間使用することで睡眠覚醒リズムを損なっていると考えられる事例も少なくないです。このような事例では、朝スムーズに起きられない、動き出せないことが多いと思われます。実際に、復職目前(リワーク目前)の上記うつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者であってもなかなかスムーズに離床できないという報告もあり、必要に応じてこれらの要因に対して指導をする必要があります。
■⑤週末であってもリズムを大きくは崩さない
週末や休日はゆっくり昼過ぎまで寝ていたいと考える患者様も少なくないです。おそらく患者様もメンタルヘルス疾患に罹患するまでは、長期休暇などの際に大きく乱れた生活をしていても、仕事が始まる初日には、きちんと朝起きて通勤していたと思われます。そのため、「復職すれば大丈夫(リワークすれば大丈夫)です。朝からきちんと起きられます」などと述べる患者様もいるが、リズムを整えるのが難しくなっていることを考えると、休職中の週末もリズムはある程度一定にしておくことが望ましいと思われます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。