月別アーカイブ: 2019年9月

職場のメンタルヘルス(その31)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の31回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅦ)
メンタルヘルス相談者メンタルヘルス問題を整理する際のポイント~
◎「5W1H」でメンタルヘルス問題を整理する
メンタルヘルス相談に来たメンタルヘルス不調者の訴えを単にだらだらと聞いているだけでは意味がないです。たとえ時間をかけて多くのメンタルヘルス情報を得ても、メンタルヘルスの問題点が整理されずメンタルヘルス不調に関する見立て(アセスメント)や次のメンタルヘルス対策へのアクションにつながるものでなければせっかくの時間が無駄になってしまいます。メンタルヘルス問題の整理のしかたの一つとして、「5W1H」を念頭に置いてメンタルヘルス問題を考え分析すると、わかりやすくなります(表1)。
◇表1 5W1H
『WHO:誰がメンタルヘルス相談に来たのか誰がメンタルヘルス問題になっているのか誰がメンタルヘルス問題で困っているのか
WHAT:業務上のメンタルヘルス問題(業務の量、業務の質、適性、人間関係、キャリア、異動、勤務形態、休職および復職休職およびリワーク)、その他)/業務外のメンタルヘルス問題(家族、メンタルヘルス状態、経済、婚姻、人間関係、事故、ジェンダー、その他)
WHERE:職場内でのメンタルヘルス問題の現れ方職場外でのメンタルヘルス問題の現れ方
WHEN:いつからメンタルヘルス問題になっているのか/どんなときにメンタルヘルス問題になっているのか
WHY:なぜこのタイミングでメンタルヘルス相談したのか/なぜあなたにメンタルヘルス相談したのか
HOW:これまでどうメンタルヘルス問題を解決しようとしてきたか/それでメンタルヘルス問題の解決がどうだったか
●WHO:誰がメンタルヘルス相談に来たのか、誰がメンタルヘルス問題になっているのか、誰がメンタルヘルス問題で困っているのか
⇒これらはすべて異なるメンタルヘルス不調者である場合もあります。たとえば、「最近表情が暗く職場を休みがちな部下がいて(=職場においてメンタルヘルス問題になっているメンタルヘルス不調者)、仕事をいつもともにやっている同僚のストレスが大きくなっている(=困っている人)ため、見かねた上司がメンタルヘルス管理室を訪れた(=メンタルヘルス相談に来た人)」というようなケースです。職場におけるメンタルヘルス支援メンタルヘルス対象になるのはこの時点で少なくとも3人いることになります。
●WHAT:何がメンタルヘルス問題なのか
メンタルヘルス相談者はたくさんのことについて話すかもしれないし、まとまりのない話になっているかもしれないです。逆にメンタルヘルス相談に来たものの遠慮してあまり話さなかったり、まわりくどい話し方になることもあります。できるだけメンタルヘルス問題について要点を整理メンタルヘルス問題点を明らかにします。メンタルヘルス管理室というメンタルヘルス相談場所の性質上、当該メンタルヘルス相談者からは主に職場におけるメンタルヘルス不調について語られることが多いが、それ以外のメンタルヘルス問題も浮き彫りになることがあります。職場での業務上のメンタルヘルス問題(業務量、適性、人間関係、キャリアなど)と職場以外での業務外のメンタルヘルス問題個人のメンタルヘルス状態、経済、婚姻、家族、人間関係など)に分けて職場でのメンタルヘルス問題について整理するとよいです。特にプライベートなことについてはメンタルヘルス不調者本人から自然に話すようになるのを待つほうがよい場合もあります。
●WHERE:どこでメンタルヘルス問題になっているのか
当該メンタルヘルス不調者メンタルヘルス問題がどこで起こっているのかを確認します。職場のみにおけるメンタルヘルス問題なのか、それとも家庭など職場外でもメンタルヘルス問題になっているのか。職場内と職場外でのメンタルヘルス問題の現れ方は同様のものか、それとも職場内外でのメンタルヘルス問題の現れ方は異なっているのか。たとえば、職場では気分が憂うつで元気がない様子であるが家庭ではイライラして家族に当たっている、オフィスでは普通に仕事をしているが営業先ではほとんど行動していない、などです。
●WHEN:いつからメンタルヘルス問題になっているのか、どんなときにメンタルヘルス問題になっているのか
メンタルヘルス問題が起こり始めた時期、あるいはメンタルヘルス問題を周囲が把握した時期について把握します。「いつから」とは入社した当初からメンタルヘルス問題なのか、異動してからメンタルヘルス問題なのか、何年何月頃メンタルヘルス問題なのか、メンタルヘルス問題が何か出来事のあった時期と一致しているか、などです。「どんなときに」とはメンタルヘルス問題の時間帯メンタルヘルス問題の場面などを指し、「午前中はいつも気分が憂うつ落ち込み元気がない様子」などです。
●WHY:なぜメンタルヘルス相談に来たのか
メンタルヘルス不調者本人メンタルヘルスの問題を自覚していたり、周囲がメンタルヘルスの問題に気づいていたりしても、すぐに産業医や産業保健スタッフなどメンタルヘルス管理スタッフメンタルヘルス相談するとは限らないです。「こんなことは人にメンタルヘルス相談すべきことではないだろう」とメンタルヘルス不調者自ら抱え込んでしまったり、あるいはすでに他者にメンタルヘルス相談しているかもしれないです。「なぜ今このタイミングでメンタルヘルス相談に来たのか」「なぜあなたのもとにメンタルヘルス相談しに来たのか」というメンタルヘルス視点も忘れずにメンタルヘルス情報収集します。また、メンタルヘルス相談に来たのはメンタルヘルス不調者自身の意思なのか、あるいは同僚に勧められたからか、上司の勧めや指示かというメンタルヘルス情報も、当該メンタルヘルス不調者本人職場におけるメンタルヘルス問題意識をはかる上で重要です。
●HOW:これまでどうメンタルヘルス問題を解決しようとしたか、それでメンタルヘルス問題がどうだったか
起こったメンタルヘルス問題に対してメンタルヘルス相談者やその周囲の人々がこれまでどのようなメンタルヘルス対応を取り、その結果メンタルヘルス問題がどうなったかを確認します。それまでに取られてきたメンタルヘルス対応が必ずしも適切でなかったこともあります。しかし、ここでは適切でないメンタルヘルス対応を批判することは避け、適切でないメンタルヘルス対応を取らざるを得なかったメンタルヘルス事情も理解します。
●YES/NO、WHICH
⇒「5W1H」で得られたメンタルヘルス情報などを利用して「困っていらっしゃるのはAさんとBさんなのですね」のようなYES/NO式の質問、「あなたが職場で先にメンタルヘルス相談した相手は上司ですか、それとも同僚ですか」のようないくつかの選択肢から一つを選ぶ質問をしながら、職場におけるメンタルヘルス問題をまとめていきます。
上記のように、職場におけるメンタルヘルス問題に対してどのような聞き方をするかによって得られるメンタルヘルス情報量メンタルヘルス情報の明確さ職場におけるメンタルヘルス問題への答えにくさはそれぞれ異なるということを知っておく必要があります。
上司や同僚など職場関係者とメンタルヘルス相談に来るようなメンタルヘルス不調者本人自身が、職場で現在抱えているメンタルヘルス問題点メンタルヘルス不調者自らきちんと整理して話してくれることは少ないので、こちらからメンタルヘルス問題点を整理しやすいような聞き方を意識することが必要です。ただし、はじめからこちら側が「5W1H」にむりやり誘導しようとすると、メンタルヘルス面談が機械的で心の通わないものになる危険性があるので、たとえば、ひととおりメンタルヘルス相談者の話を聞いた後で、YES/NOやWHICHの質問を加えて職場におけるメンタルヘルス問題点を確認し整理するとよいです。
緊急時メンタルヘルス対応
メンタルヘルス相談を受けた場合、まずメンタルヘルス判断する必要があるのは、「その場で即刻メンタルヘルス対応する必要があるのか多少とも時間があるのか」です。メンタルヘルス不調者本人がかたい表情をして拒否的で、死にたいと漏らしている場合は、その場ですぐに安全を確保してメンタルヘルス科専門的治療へ繋ぐ必要があります。そのためこのようなメンタルヘルス状態への緊急時のメンタルヘルス対処は、事前に決めておく必要があります。
最初にメンタルヘルス相談を受けた者は、ほかの者よりメンタルヘルス不調者本人との信頼関係がある可能性が高いため、メンタルヘルス対応の中心者となります。産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフは、そのメンタルヘルス対応者へのメンタルヘルス支援を行います。緊急時にメンタルヘルス相談メンタルヘルス科緊急入院できるメンタルヘルス科専門病院や保健所などのメンタルヘルス相談窓口の電話番号やメンタルヘルス担当者の名前、緊急時にも拘わらずメンタルヘルス不調者本人メンタルヘルス科受診を拒否したときのメンタルヘルス対応の手順などを具体的にメンタルヘルス対応手順マニュアルなどに記載しておくことは、事前のメンタルヘルス対策として不可欠と考えられます。
一般的には家族と連絡を取り、家族にメンタルヘルス対応してもらうことになります。メンタルヘルス不調者本人を家族のところまで連れて行くことも考えられるが、不測の事態もあり得るため、会議室など安全な場所を確保して、家族の到着を待ちます。当該メンタルヘルス不調者本人が単身者など家族のメンタルヘルス支援が期待できない場合は、保健所に連絡を取りメンタルヘルス対応の指示を仰ぎます。万が一暴れる場合は、警察に保護を依頼します。緊急性のメンタルヘルス判断に迷う場合は、より緊急性があるものとしてメンタルヘルス対応します。
できるかぎり大勢のメンタルヘルス関係者が集まることは、たとえ直接メンタルヘルス担当できることがなくとも、「いる」こと自体がメンタルヘルス対応者に対し直接のメンタルヘルス的支援となります。同時にメンタルヘルス関係者に参加してもらうことは、メンタルヘルス当事者意識を持つことに繋がります。メンタルヘルス当事者意識は、万が一メンタルヘルス対応がうまくいかなく残念なメンタルヘルス結果となった場合、そのメンタルヘルス事実を受け止めて再出発する際に、「自分は何もしなかった(できなかった)」などの残念なメンタルヘルス結果に対する罪悪感から直接のメンタルヘルス対応者らをスケープ・ゴートとして非難することなどのメンタルヘルス予防にもつながります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


臨床心理士の吉田です。

まだ日中は暑い日が多いので服装には困ってしまいますね。それでもずいぶん涼しくなった方ですが、最近は“ぶっかけうどん”にハマっています。シンプルなうどんにどのトッピングをのせるのがベストなのかを考えることも楽しみです。秋は美味しい物が多い季節、夏の疲れが残っている分、好きな事を織り交ぜながらリラックスする時間を取っていきたいです。
千里中央杉浦こころのクリニックでは、カウンセリング・心理検査でお話をお聴きすることができます。
月曜日から土曜日(水曜・土曜は午前のみ)受付可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


職場のメンタルヘルス(その30)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の30回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅥ)
メンタルヘルス障害発症に関する要因②~
◎神経過敏状態(メンタルヘルス活動が亢進したメンタルヘルス状態)からメンタルヘルス障害
⇒職場において神経過敏状態(メンタルヘルス活動亢進したメンタルヘルス状態)に至る過程を考えます。まず環境・メンタルヘルス状況性格などのメンタルヘルス要因により、意識的に休めないメンタルヘルス状態があります。メンタルヘルスの疲れがたまっているが、たとえば仕事の納期、代わりの人材不足やトラブル対応などのため休むわけにいかないメンタルヘルス状態です。脳のメンタルヘルス疲労は、一般に良質の睡眠によりメンタルヘルス状態が回復できます。しかし長時間労働などで睡眠時間を削ると、メンタルヘルス疲労からのメンタルヘルス状態の回復は妨げられます。その結果、前述(2019年9月21日掲載)した次の段階のメンタルヘルス疲労へ進みます。メンタルヘルス活動の過剰な亢進のための不眠となり、睡眠時間を確保できてもメンタルヘルス疲労からのメンタルヘルス状態の回復が困難となります。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態は、メンタルヘルス面での過敏さを生みます。いろいろなことが気になり、些細なことにとらわれメンタルヘルスに混乱をきたし、メンタルヘルスに障害が生じます。冗談を真に受けるなど、なにげない一言に過敏に反応するなどして人間関係に支障が出ます。仕事の停滞や職場の人間関係のトラブルは、メンタルヘルス疲労の蓄積を加速させることになります。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態からメンタルヘルス障害への経路について述べます。「休みたくても休めない(不眠など)」と「休むわけにはいかない(取り越し苦労)」が重なるため、休養ができず(意識的・生理的)、結果的に消耗性うつ状態まで至ることがあります。消耗性うつ状態は、いわば生命エネルギーの枯渇したメンタルヘルス状態です。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態で周囲の言動に対しメンタルヘルス過敏になり、また焦燥感が強くなると、人間関係がうまくいかなくなることもあります。普段気にかけないなにげない言葉を自分に対する非難と受け取り、相手に攻撃的にメンタルヘルス対応すると、周囲はメンタルヘルス不調者本人を避けるようになります。その結果、メンタルヘルス不調者本人は孤立し、疎外感や被害感がより強くなります。メンタルヘルス障害としては、統合失調症パーソナリティ障害メンタルヘルス診断基準を満たすメンタルヘルス障害レベルになることもあります。これは、メンタルヘルス疲労が原因となり統合失調症が発症したりパーソナリティ障害が発症するということではないです。それらメンタルヘルス障害レベルの病態は、遺伝的メンタルヘルス素因などが基盤にあり、それまでの生育環境などの影響もありメンタルヘルス障害が発症するものと考えられています。ただし、メンタルヘルス疲労メンタルヘルス障害発症の誘因(最後の引き金)となることはあり、このメンタルヘルス疲労メンタルヘルス障害発症の誘因となる点は労働災害認定に際して議論となる部分です。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態で身体感覚に対して過敏になると、メンタルヘルス不調者自身が身体の些細な不調にとらわれることがあります。全身倦怠感めまい、吐き気、動悸などの症状を訴えてメンタルヘルス科受診するが、特段の異常が見つからないです。しかしメンタルヘルス不調者自身の自覚症状は続き、さらには悪化するため、メンタルヘルス不調者本人は身体的な疾患があると考えて、いろいろな病院を受診します。メンタルヘルス症状へのとらわれとそのメンタルヘルス症状へのメンタルヘルス対応に終始して、いわゆる生産的メンタルヘルス活動(仕事を含む日常生活)ができなくなり、生活エネルギーの不足したメンタルヘルス状態となります。またメンタルヘルス素因によっては、神経の過敏なメンタルヘルス状態から過呼吸発作などを起こし、パニック発作を呈することもあります。このように神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態は、いろいろなメンタルヘルス不調の出発点となるが、そこからどのようなメンタルヘルス疾患へ進展していくのかは、環境、メンタルヘルス素因や性格などが関係していると考えられます。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態を呈するようになるメンタルヘルス要因、つまり過度のメンタルヘルス疲労をきたすメンタルヘルス要因は長時間労働だけではなく、メンタルヘルス素因や性格などによりいろいろと考えられます。対人的なかかわりが元来苦手で、気を遣うほうであれば、些細な対人的な食い違いがメンタルヘルス疲労大きなメンタルヘルス要因となります。自分の決めたペースややり方を守ることが得意なほうであれば、臨機応変のメンタルヘルス対応を求められる環境は大きなストレスとなります。ストレスを大きくしない配慮は、一言でいえば適性配置となるが、実際の職場では人に合わせて仕事が発生するわけでなく、また現在の職場は変化が常態化しており、非常な困難が予想されます。その中で仕事の量については、客観的指標として労働時間があるためメンタルヘルス評価職場のメンタルヘルス対策が可能なメンタルヘルス領域です。良質な睡眠が、メンタルヘルス疲労からメンタルヘルス状態の回復には重要となり、特に都会においては長時間の通勤者が多いため、その点も加味した就業時間管理などのメンタルヘルス対応が有効になります。また睡眠時間は自覚しやすいメンタルヘルス症状のため、不眠が出現した場合に産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス相談するようなメンタルヘルス啓発活動は、メンタルヘルス不調の早期対応に結びつきやすいです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その29)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の29回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅤ)
メンタルヘルス障害発症に関する要因①~
職場におけるメンタルヘルス対策として考える場合、まずは業務と関連のあるメンタルヘルス不調を中心にメンタルヘルス対応を考えることがよいです。企業には労働契約法の規定や安全配慮義務があるため、業務に付随して発生するケガやメンタルヘルス不調の予防に努める義務があり、業務と関連するメンタルヘルス不調へのメンタルヘルス対応は、法的責務とされます。そのため業務と関連するメンタルヘルス不調へのメンタルヘルス対応は、福利厚生的メンタルヘルス不調者個人メンタルヘルス疾患へのメンタルヘルス対策としてだけではなく、業務と直結したメンタルヘルス活動として展開され、優先度が高くなります。
職場は、目的を達成するための組織であり、個々の組織成員の仕事の遂行能力は組織能力を左右します。仕事の遂行能力低下の理由がメンタルヘルス障害の場合、そのメンタルヘルス障害を改善できれば、仕事の遂行能力も回復することが考えられます。現代の仕事では、筋肉労働は減少し、知的(創造する)・感情的(対人サービス)労働などメンタルヘルス活動による労働の占める割合が高くなっています。メンタルヘルス障害発症によって、そのようなメンタルヘルス活動能力の低下をもたらすことが多いです。そのためメンタルヘルス障害の場合は、よりメンタルヘルス活動による労働力の低下が大きくなります。組織目的の達成のためにも、職場におけるメンタルヘルス障害へのメンタルヘルス対応が不可欠となります。
職場に共通する業務と関連するメンタルヘルス不調の要因として過重労働があります。過重労働の指標の一つとして、長時間労働が取り上げられます。長時間労働などの過重労働メンタルヘルス障害との関係は、メンタルヘルス疲労を中心とすると理解しやすいです。
職場におけるメンタルヘルス不調の要因としてメンタルヘルス疲労を中心に考える
メンタルヘルスの疲労は、急性のメンタルヘルス疲労慢性のメンタルヘルス疲労に分けられます。慢性のメンタルヘルス疲労とは、翌日まで持ち越しメンタルヘルス疲労のことです。前日までのメンタルヘルス疲労を残しながら当日も仕事を続け、その日のメンタルヘルス疲労もまた翌日に持ち越すようなメンタルヘルス状態になれば、徐々に持ち越されたメンタルヘルス疲労は蓄積していくことになります。この仕事での蓄積されたメンタルヘルス疲労蓄積メンタルヘルス疲労)が、生体の許容範囲を超えた場合にメンタルヘルスの不調につながります。
疲労はまた、身体疲労メンタルヘルスの疲労に分けられます。前述のとおり現代の仕事は、身体活動よりメンタルヘルス活動が中心となっています。そのため、脳により強いメンタルヘルス疲労が生じやすくなります。
脳のメンタルヘルス疲労では、2段階のメンタルヘルス反応が起きます。ある程度のレベルまでのメンタルヘルス疲労であれば、メンタルヘルス活動は低下します。メンタルヘルスの自覚症状としては、集中力が低下して、眠気を感じ、ボーっとします。そのメンタルヘルス疲労レベル段階以上にメンタルヘルス疲労が蓄積すると、メンタルヘルス活動が過剰に亢進します。メンタルヘルスの自覚症状としては、集中力が低下し(注意が拡散して集中できないメンタルヘルス状態)、焦燥感が強くなり、不眠となります。このメンタルヘルス疲労レベルに至ると、休養することが生理的にも困難になり、メンタルヘルス疲労の蓄積がより進むことになります。このメンタルヘルス疲労がある限度を超えて蓄積し、メンタルヘルス活動が亢進したメンタルヘルス状態(神経過敏状態)がさまざまなメンタルヘルス不調の基点となります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


臨床心理士の吉田です。

すっかり朝晩冷え込む時期になりました。あの暑い日々が嘘のように涼しくなりましたので嬉しいです。
先日の三連休には音楽とお笑いのイベントに初めて参加し、非日常を楽しんできました。大きな会場で好きな芸を観るというのはとても新鮮で、たいへんリフレッシュできました。もちろん疲労感はありますが、普段触れないものに触れるというのはいい刺激になるものだと思いました。
千里中央杉浦こころのクリニックでは、カウンセリング・心理検査でお話をお聴きすることができます。
月曜日から土曜日(水曜・土曜は午前のみ)受付可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


職場のメンタルヘルス(その28)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の28回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅣ)
メンタルヘルス相談者からメンタルヘルス情報を得る際のポイント~
誰がメンタルヘルス相談対象になるのかをおさえる
メンタルヘルス相談に来る人は、メンタルヘルス問題を抱えているメンタルヘルス問題当事者のみとは限らないです。上司、同僚、部下など周囲の人々がメンタルヘルス問題当事者を心配してメンタルヘルス相談に来ることもあります。また場合によっては、家族がメンタルヘルス問題当事者を心配してメンタルヘルス状態メンタルヘルス管理室電話などでメンタルヘルス相談してくることもあります。メンタルヘルス問題当事者へのメンタルヘルス支援は「メンタルヘルス不調者本人メンタルヘルス相談に来ないと始まらない」と思われるかも知れないが、周囲の人々がどのようにメンタルヘルス対応したらよいかなど適切にメンタルヘルス支援することからメンタルヘルス問題当事者に対してメンタルヘルス支援を適切に開始するきっかけができます。
メンタルヘルス相談に来たことをねぎらう
⇒近年メンタルヘルスに関する知識が普及メンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)を受診するメンタルヘルス不調者が増加するなど、メンタルヘルス科受診メンタルヘルス医療への偏見や抵抗感が減ってきているとはいえ、メンタルヘルスに関することメンタルヘルス相談をしに来るまでには通常は相当の葛藤があったはずです。そういったメンタルヘルス不調者の葛藤にもしっかり気を配り、「よくメンタルヘルス相談に来てくださいましたね」「大変な思いをされていますね(されたのですね)」「どんなことから話されてもいいんですよ」などとメンタルヘルス不調者に言葉を添え、「メンタルヘルス相談しに来てよかった」と思ってもらえる話しやすい雰囲気をつくりたいです。
基本メンタルヘルス情報を集める
当該メンタルヘルス相談者メンタルヘルス相談対象者基本メンタルヘルス情報を収集します(表1)。これらの基本メンタルヘルス情報をすべて収集することは難しいが、できるかぎり基本メンタルヘルス情報を収集しておけば初期メンタルヘルス対応についてのメンタルヘルス判断をする上でとても参考になります。
◇表1 おさえておく基本メンタルヘルス情報
『・生活歴:養育歴、教育歴、職歴などについて聞く
・既往歴:特に精神科や心療内科などメンタルヘルス科の既往歴があれば、差し支えのない範囲でメンタルヘルス科医療機関メンタルヘルス疾患名メンタルヘルス科治療期間メンタルヘルス科治療内容メンタルヘルス疾患の転帰などを聞いておく
・家族歴:血縁関係のある人のメンタルヘルス科受診歴の有無、家族構成、家族関係、キーパーソンについて聞いておく。家族との連携が必要なケースもあるので、重要な基本メンタルヘルス情報である
・最近の環境:ここ最近の職場環境(多忙である、異動した、組織改変があるなど)や家庭環境(家族仲の問題、経済的問題など)も聞いておく』
~よりよいメンタルヘルス不調に関するアセスメントのためのポイント~
◎職場でのルールやフローを決めておく
職場でメンタルヘルス問題が起こった際に、産業医、保健師、臨床心理士(カウンセラー)などのメンタルヘルス職、人事担当者、上司などの間でどのようにメンタルヘルス情報を共有するかの原則をあらかじめ決めておくとよいです。人事担当者や上司が職場におけるメンタルヘルス問題当該メンタルヘルス問題当事者に含まれている場合など、実際には原則どおりにいかないこともあるが、メンタルヘルス問題が発生してからルールやフロー決めに時間を取られ過ぎてしまうと行うべきメンタルヘルス支援が後手後手にまわってしまう危険性があります。また、メンタルヘルス相談を受けた産業保健スタッフなどのメンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス問題を一人で抱え込んで疲弊してしまわないようにするためにも重要です。
◎職場全体の「メンタルヘルス問題に関するアセスメント力」を高める
メンタルヘルス問題のアセスメント能力を高めるには、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス問題に関するアセスメント能力向上だけでは不十分です。いくら優秀な産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフがそろっていても、産業保健職などメンタルヘルス職までメンタルヘルス問題が吸い上がっていかなければメンタルヘルス援助は始まらないです。職員一人ひとりが自分自身や周囲の人々のメンタルヘルス問題把握して適切なメンタルヘルス対応メンタルヘルス相談ができるようになることが重要です。そのためには、日頃からの地道なメンタルヘルスに関する啓発活動が欠かせないです。職場巡視、メンタルヘルス診断、安全衛生委員会などの場で職員に顔を覚えてもらい、メンタルヘルス教育研修の場でセルフメンタルヘルスケアラインによるメンタルヘルスケアの重要性を説き、気軽にメンタルヘルス相談できる雰囲気を醸成します。セルフメンタルヘルスケアの研修ではストレスへの気づきやメンタルヘルス疾患の基礎知識などが、ラインによるメンタルヘルスケア研修では部下のメンタルヘルス状態の変化の把握のしかたやメンタルヘルス相談対応のコツなどが欠かせない職場のメンタルヘルス問題のテーマです。
職場におけるメンタルヘルス不調のまとめ
メンタルヘルス問題当事者だけでなく周囲の複数の人々が絡んでくる職場メンタルヘルス不調事例へのメンタルヘルス対応は、大変な苦労を要するものです。ある人には喜ばれてもある人には不満が残る帰結になることも珍しくはなく、徒労感を覚えることもあります。しかし、逆に考えれば一人に対するメンタルヘルス支援を行うことによって、その周囲の数多くの人々をメンタルヘルス支援することにもなり、これはメンタルヘルス科臨床の場ではなかなか味わえないことです。一人のメンタルヘルス相談に端を発して、関係職員、家族、メンタルヘルス科医療機関など、さまざまな人々のアクションが発生し、メンタルヘルス問題解決に向かう過程にかかわるのは職場におけるメンタルヘルスの醍醐味です。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その27)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の27回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅢ)
メンタルヘルス不調に関するアセスメントに臨む前に~
守秘義務について理解する
⇒刑法第134条(医師、歯科医師、薬剤師ら)、保健師助産師看護師法第42条の2、精神保健福祉士法第40条にて、正当な理由なく職務上知り得た秘密を漏らしてはならない(守秘義務)と規定されています。これにより、産業医、保健師など産業保健スタッフが職務上知り得たメンタルヘルス情報メンタルヘルス不調者本人の同意なくもらすことはできないです。一方、人事担当者や上司にはメンタルヘルス情報への法的な規制はないが、メンタルヘルス不調者本人メンタルヘルスに関する情報という究極の個人メンタルヘルス情報を知り得る立場にあるので、守秘義務に準じた倫理観をもつ必要があります。個人メンタルヘルス情報を保証することは職員が安心してメンタルヘルス相談できる環境づくりにおいて欠かせないです。職員に「メンタルヘルス管理室メンタルヘルス相談したら上司や人事に伝わるのではないか」と思われると、メンタルヘルス相談はなかなかできないでしょう。この個人メンタルヘルス情報保護の対策として、メンタルヘルス管理室からの便りなどに「メンタルヘルス相談者の秘密は厳守する」というメッセージを記載するなどして個人メンタルヘルス情報保護の周知を図ります。
ただし、守秘義務にも例外はあります。自傷他害のおそれ(自分自身を傷つけたり自殺を実行に移す危険性や他人に危害を加える危険性)が高い場合は守秘義務よりも安全配慮義務が優先され、速やかに職場、人事、家族に報告する必要も出てきます。また、児童虐待の疑いがある場合は児童相談所への通報も検討しなければならないです。
メンタルヘルス相談者に対しては、メンタルヘルス科面接の冒頭で個人メンタルヘルス情報など秘密を厳守する旨を伝えます。もし他者とメンタルヘルス情報共有することに同意を得た場合でも、メンタルヘルス情報共有する対象者の範囲(誰にまでならメンタルヘルス情報共有してよいか)とメンタルヘルス情報共有する内容の範囲(すべてメンタルヘルス情報共有してよいか、メンタルヘルス情報共有してほしいメンタルヘルス情報は何か、メンタルヘルス情報共有してほしくないようなメンタルヘルス情報は何か)を確認しておき、第三者とメンタルヘルス情報共有した後はメンタルヘルス情報共有した旨メンタルヘルス相談者にフィードバックします。
メンタルヘルス科主治医精神科医・心療内科医)と産業医など産業保健スタッフの立場の違いを理解する
⇒先述(2019年9月14日掲載)の疾病性と事例性の話に通じることだが、ふだんメンタルヘルス科診察によって臨床を行っているメンタルヘルス科主治医精神科医師・心療内科医師)は、メンタルヘルス不調者本位の立場から、メンタルヘルス科診察室においてもっぱら目の前のメンタルヘルス不調者の訴えをもとに、メンタルヘルス科診断メンタルヘルス科治療方針などを考えていくというメンタルヘルス不調者個人へのメンタルヘルス対応を行います。一方、産業医などの産業保健スタッフは職場内にいるため、上司や同僚などメンタルヘルス不調者本人以外からのメンタルヘルス情報を比較的容易に入手できるメンタルヘルス情報を入手しようとしないでもメンタルヘルス情報が入ってきてしまうことさえ多い)立場にあるので、メンタルヘルス不調者個人へのメンタルヘルス対応とともに集団へのメンタルヘルス対応も同時に考える必要があります。極端な例でいえば、メンタルヘルス不調者本人の訴える職場のストレスが、同僚や上司など第三者の目から見て軽度のストレスである場合、当該メンタルヘルス不調者本人メンタルヘルス不調の程度から考えて職場のストレスを過大な訴えと受け取られる場合もあります。
このように、疾病性を重視しなければならないメンタルヘルス科主治医心療内科医・精神科医)の立場と、職場における事例性を軽視してはならない産業医など産業保健スタッフの立場の違いから、重要視すべきメンタルヘルス情報が異なるといったことはどうしても起こってきます。この職場のメンタルヘルスにおける疾病性と事例性の差を埋めるためには、疾病性が専門であるメンタルヘルス科主治医心療内科医師・精神科医師)と事例性が専門である産業医など産業保健スタッフとの職場におけるメンタルヘルス情報共有が大切です。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


火・木曜日担当医の葛原です。

残暑が続きますが、千葉はまだ停電が残り大変な状況。去年の大阪と似たような被害。台風の進路の東側は暴風注意です。
日中はまだまだ暑い日が多いですが、皆様にはお変わり無いでしょうか?ただし、引き続き職場での人間関係に馴染めず、精神的ストレスにより、夜眠れなく中途覚醒早朝覚醒したり、朝がきても熟眠障害疲れがとれなくて起床できず、日内変動など朝のメンタルヘルス不調は続いてませんか?不眠症による生活リズムの乱れ昼夜逆転し、毎朝会社へ出勤するのが億劫で、最近遅刻や欠勤・早退など勤怠の乱れが増えてませんか?何とか会社へ出勤できても、朝のメンタルヘルス不調により、気分の憂うつ落ち込み・集中力の低下で、仕事がはかどらずにミスをくり返すなど、仕事のパフォーマンスや業務遂行能力の低下は認められませんか?また、残暑による急激な気温上昇や天候不良の影響で、頭痛めまい動悸倦怠感など自律神経失調症食欲不振による体調不良はないですか?夕方以降も漠然とした不安や焦り・イライラなどメンタルヘルス症状が続いてませんか?休日、ストレス発散や気分転換したり、セルフメンタルヘルスケアしてもメンタルヘルス状態が回復せず、更なるメンタルヘルス不調の悪化が続く場合、うつ病などメンタルヘルス疾患の可能性もあるため、注意が必要です。メンタルヘルス疾患の早期発見・早期治療や、メンタルヘルス不調で会社を休業・休職する前に、メンタルヘルス全般についてご相談のある方は、是非一度、豊中市 千里中央心療内科メンタルヘルス科)「杉浦こころのクリニック」へ早期の受診をお勧めいたします。


職場のメンタルヘルス(その26)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の26回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅻ)
メンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)紹介で気をつけるポイント②~
職場環境に関するメンタルヘルス情報
メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)によるメンタルヘルス判断は産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフから「あまい」といわれることがあります。しかし、実際の職場の環境やストレスというものがメンタルヘルス専門医心療内科医・精神科医)にはよく伝わっていないこともめずらしくないです。
考えてみれば、身体疾患の専門医であっても患者様の職場環境を知らなければ、特定の判断は難しいことになります。たとえば、重症の足首の捻挫により療養していた勤労者が復職する際勤労者がリワークする際)、事務所業務なのか、工事現場なのかによって、復職の可否判断リワークの可否判断)は同じではないです。それこそスポーツ選手であれば、なおさら慎重になるでしょう。メンタルヘルス専門医師心療内科医師・精神科医師)が日々得る職場環境のメンタルヘルス情報は、メンタルヘルス不調者から聴取できた主観的意見をベースにしています。前回(2019年9月11日掲載)の事例性のメンタルヘルス情報にも繋がるが、メンタルヘルス科へ紹介することになったメンタルヘルス不調者の日頃のフィールドイメージが湧くように伝えることが、メンタルヘルス科専門医正確なメンタルヘルス判断を促します。ただ、メンタルヘルス科専門医メンタルヘルス科診察前の限られた時間に一読できるよう長文は避けたいです。「表1 メンタルヘルス科専門医に伝えるポイント」(2019年9月11日掲載)のようなメンタルヘルス項目を参考にメンタルヘルス情報を簡潔に記載することは意識したいところです。
問いたいメンタルヘルス情報
職場側にとって問いたいメンタルヘルス情報は、メンタルヘルス科へ紹介することに至った事例性に対し、疾病性の有無のメンタルヘルス判断と、業務上の配慮に関することが中心となるでしょう。メンタルヘルス科専門医など専門家からメンタルヘルス判断結果の返答を待つことになるが、メンタルヘルス科の診察場面結果だけでなく、1)事例性に関するメンタルヘルス情報、2)職場環境に関するメンタルヘルス情報等の提供がより精度の高いメンタルヘルス判断を可能にすると思われます。つまり得たいメンタルヘルス情報があるときは与えるのが先、“give & take”ということになります。
厚生労働省のメンタルヘルス調査にあるようにメンタルヘルス科外来診察患者数が多い中で、なるべく早急にメンタルヘルス判断の返答をしてもらうには工夫も必要です。あまりに漠然としたメンタルヘルス情報への問いに対しては、あまりに漠然としたメンタルヘルス判断結果の返答となるかメンタルヘルス判断結果の記載に時間がかかりタイムリーなメンタルヘルス情報を得られないということが起こり得ます。疑問文の性質については、メンタルヘルス科面接場面でのメンタルヘルス不調者に対するメンタルヘルス項目への質問時のためのものであるが、「問いたいメンタルヘルス情報」の中でのメンタルヘルス項目への質問のしかたとして大変参考になります。明確であり答えやすいことを重視すれば、yes or no や which などを中心とした「メンタルヘルス情報への問い」を準備することが有効に思われます。
一方で、メンタルヘルス判断の返答を受ける側の心構えも注意したいです。メンタルヘルス科専門医の疾病性に基づく業務に関するメンタルヘルス判断は気象予報士の判断と似ています。メンタルヘルス科専門的知見から、あくまで「予測」をするのです。ハズレも起こり得ることを忘れてはならないです。なるべく「予測」の的中率を上げるために、必要な職場のメンタルヘルス情報を伝えるという協力体制が重要であるのは前述のとおりです。
最後に大変重要なこととして、メンタルヘルス科専門医師からのメンタルヘルス判断結果の返答である当該メンタルヘルス不調者の個人メンタルヘルス情報が事業場内でどう扱われるのかを明記すべきことです。事業場内でどう個人メンタルヘルス情報が扱われるか、誰が個人メンタルヘルス情報を見るのか、当該メンタルヘルス不調者が不当な扱いを受けないか、当該メンタルヘルス不調者が不利にならないか、など不明な点も多い中でメンタルヘルス科専門医師は記載しなければならないときもあります。そのため差し障りのない内容で(つまり“あいまい”に)メンタルヘルス判断結果の返答を記載することになります。メンタルヘルス判断の根拠など詳細は意図的にあえて記載しないようにするメンタルヘルス科専門医師もいるでしょう。というのも、メンタルヘルス科専門医師の心の根底には、世間の厳しい偏見から常にメンタルヘルス不調者を守ってきた長い歴史があるためです。メンタルヘルス判断結果の返答内容は「あくまで産業医が個人メンタルヘルス情報を管理し、産業医が就業上の配慮をメンタルヘルス判断する際の材料であり、そのまま人事労務管理部門や管理者には転用しないことを約束」しなければ、協力を得にくいでしょう。
疾病性が専門のメンタルヘルス科専門医と事例性が専門の産業医との立場や役割の違い
⇒いくつかの観点からメンタルヘルス科専門医への紹介の際に気をつけるポイントを述べました。概して言えることは、メンタルヘルス問題の対象となっているメンタルヘルス不調者に対する視線と、そのメンタルヘルス不調者の背景にある職場環境をできるだけ正確に把握しようという視線を持ち合わせることが非常に重要と思われます。同じメンタルヘルス事象に対して、メンタルヘルス不調者本人、家族、産業医、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフ、人事、管理者、メンタルヘルス科専門医と立場が違えば意見が異なるのは当然です。お互いの立場や役割の違いを意識しつつ、職場におけるメンタルヘルス不調への対応で調和を目指す姿勢が重要と思われます。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。