日別アーカイブ: 2019年9月14日

職場のメンタルヘルス(その26)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の26回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅻ)
メンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)紹介で気をつけるポイント②~
職場環境に関するメンタルヘルス情報
メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)によるメンタルヘルス判断は産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフから「あまい」といわれることがあります。しかし、実際の職場の環境やストレスというものがメンタルヘルス専門医心療内科医・精神科医)にはよく伝わっていないこともめずらしくないです。
考えてみれば、身体疾患の専門医であっても患者様の職場環境を知らなければ、特定の判断は難しいことになります。たとえば、重症の足首の捻挫により療養していた勤労者が復職する際勤労者がリワークする際)、事務所業務なのか、工事現場なのかによって、復職の可否判断リワークの可否判断)は同じではないです。それこそスポーツ選手であれば、なおさら慎重になるでしょう。メンタルヘルス専門医師心療内科医師・精神科医師)が日々得る職場環境のメンタルヘルス情報は、メンタルヘルス不調者から聴取できた主観的意見をベースにしています。前回(2019年9月11日掲載)の事例性のメンタルヘルス情報にも繋がるが、メンタルヘルス科へ紹介することになったメンタルヘルス不調者の日頃のフィールドイメージが湧くように伝えることが、メンタルヘルス科専門医正確なメンタルヘルス判断を促します。ただ、メンタルヘルス科専門医メンタルヘルス科診察前の限られた時間に一読できるよう長文は避けたいです。「表1 メンタルヘルス科専門医に伝えるポイント」(2019年9月11日掲載)のようなメンタルヘルス項目を参考にメンタルヘルス情報を簡潔に記載することは意識したいところです。
問いたいメンタルヘルス情報
職場側にとって問いたいメンタルヘルス情報は、メンタルヘルス科へ紹介することに至った事例性に対し、疾病性の有無のメンタルヘルス判断と、業務上の配慮に関することが中心となるでしょう。メンタルヘルス科専門医など専門家からメンタルヘルス判断結果の返答を待つことになるが、メンタルヘルス科の診察場面結果だけでなく、1)事例性に関するメンタルヘルス情報、2)職場環境に関するメンタルヘルス情報等の提供がより精度の高いメンタルヘルス判断を可能にすると思われます。つまり得たいメンタルヘルス情報があるときは与えるのが先、“give & take”ということになります。
厚生労働省のメンタルヘルス調査にあるようにメンタルヘルス科外来診察患者数が多い中で、なるべく早急にメンタルヘルス判断の返答をしてもらうには工夫も必要です。あまりに漠然としたメンタルヘルス情報への問いに対しては、あまりに漠然としたメンタルヘルス判断結果の返答となるかメンタルヘルス判断結果の記載に時間がかかりタイムリーなメンタルヘルス情報を得られないということが起こり得ます。疑問文の性質については、メンタルヘルス科面接場面でのメンタルヘルス不調者に対するメンタルヘルス項目への質問時のためのものであるが、「問いたいメンタルヘルス情報」の中でのメンタルヘルス項目への質問のしかたとして大変参考になります。明確であり答えやすいことを重視すれば、yes or no や which などを中心とした「メンタルヘルス情報への問い」を準備することが有効に思われます。
一方で、メンタルヘルス判断の返答を受ける側の心構えも注意したいです。メンタルヘルス科専門医の疾病性に基づく業務に関するメンタルヘルス判断は気象予報士の判断と似ています。メンタルヘルス科専門的知見から、あくまで「予測」をするのです。ハズレも起こり得ることを忘れてはならないです。なるべく「予測」の的中率を上げるために、必要な職場のメンタルヘルス情報を伝えるという協力体制が重要であるのは前述のとおりです。
最後に大変重要なこととして、メンタルヘルス科専門医師からのメンタルヘルス判断結果の返答である当該メンタルヘルス不調者の個人メンタルヘルス情報が事業場内でどう扱われるのかを明記すべきことです。事業場内でどう個人メンタルヘルス情報が扱われるか、誰が個人メンタルヘルス情報を見るのか、当該メンタルヘルス不調者が不当な扱いを受けないか、当該メンタルヘルス不調者が不利にならないか、など不明な点も多い中でメンタルヘルス科専門医師は記載しなければならないときもあります。そのため差し障りのない内容で(つまり“あいまい”に)メンタルヘルス判断結果の返答を記載することになります。メンタルヘルス判断の根拠など詳細は意図的にあえて記載しないようにするメンタルヘルス科専門医師もいるでしょう。というのも、メンタルヘルス科専門医師の心の根底には、世間の厳しい偏見から常にメンタルヘルス不調者を守ってきた長い歴史があるためです。メンタルヘルス判断結果の返答内容は「あくまで産業医が個人メンタルヘルス情報を管理し、産業医が就業上の配慮をメンタルヘルス判断する際の材料であり、そのまま人事労務管理部門や管理者には転用しないことを約束」しなければ、協力を得にくいでしょう。
疾病性が専門のメンタルヘルス科専門医と事例性が専門の産業医との立場や役割の違い
⇒いくつかの観点からメンタルヘルス科専門医への紹介の際に気をつけるポイントを述べました。概して言えることは、メンタルヘルス問題の対象となっているメンタルヘルス不調者に対する視線と、そのメンタルヘルス不調者の背景にある職場環境をできるだけ正確に把握しようという視線を持ち合わせることが非常に重要と思われます。同じメンタルヘルス事象に対して、メンタルヘルス不調者本人、家族、産業医、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフ、人事、管理者、メンタルヘルス科専門医と立場が違えば意見が異なるのは当然です。お互いの立場や役割の違いを意識しつつ、職場におけるメンタルヘルス不調への対応で調和を目指す姿勢が重要と思われます。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。