日別アーカイブ: 2019年9月25日

職場のメンタルヘルス(その30)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の30回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅥ)
メンタルヘルス障害発症に関する要因②~
◎神経過敏状態(メンタルヘルス活動が亢進したメンタルヘルス状態)からメンタルヘルス障害
⇒職場において神経過敏状態(メンタルヘルス活動亢進したメンタルヘルス状態)に至る過程を考えます。まず環境・メンタルヘルス状況性格などのメンタルヘルス要因により、意識的に休めないメンタルヘルス状態があります。メンタルヘルスの疲れがたまっているが、たとえば仕事の納期、代わりの人材不足やトラブル対応などのため休むわけにいかないメンタルヘルス状態です。脳のメンタルヘルス疲労は、一般に良質の睡眠によりメンタルヘルス状態が回復できます。しかし長時間労働などで睡眠時間を削ると、メンタルヘルス疲労からのメンタルヘルス状態の回復は妨げられます。その結果、前述(2019年9月21日掲載)した次の段階のメンタルヘルス疲労へ進みます。メンタルヘルス活動の過剰な亢進のための不眠となり、睡眠時間を確保できてもメンタルヘルス疲労からのメンタルヘルス状態の回復が困難となります。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態は、メンタルヘルス面での過敏さを生みます。いろいろなことが気になり、些細なことにとらわれメンタルヘルスに混乱をきたし、メンタルヘルスに障害が生じます。冗談を真に受けるなど、なにげない一言に過敏に反応するなどして人間関係に支障が出ます。仕事の停滞や職場の人間関係のトラブルは、メンタルヘルス疲労の蓄積を加速させることになります。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態からメンタルヘルス障害への経路について述べます。「休みたくても休めない(不眠など)」と「休むわけにはいかない(取り越し苦労)」が重なるため、休養ができず(意識的・生理的)、結果的に消耗性うつ状態まで至ることがあります。消耗性うつ状態は、いわば生命エネルギーの枯渇したメンタルヘルス状態です。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態で周囲の言動に対しメンタルヘルス過敏になり、また焦燥感が強くなると、人間関係がうまくいかなくなることもあります。普段気にかけないなにげない言葉を自分に対する非難と受け取り、相手に攻撃的にメンタルヘルス対応すると、周囲はメンタルヘルス不調者本人を避けるようになります。その結果、メンタルヘルス不調者本人は孤立し、疎外感や被害感がより強くなります。メンタルヘルス障害としては、統合失調症パーソナリティ障害メンタルヘルス診断基準を満たすメンタルヘルス障害レベルになることもあります。これは、メンタルヘルス疲労が原因となり統合失調症が発症したりパーソナリティ障害が発症するということではないです。それらメンタルヘルス障害レベルの病態は、遺伝的メンタルヘルス素因などが基盤にあり、それまでの生育環境などの影響もありメンタルヘルス障害が発症するものと考えられています。ただし、メンタルヘルス疲労メンタルヘルス障害発症の誘因(最後の引き金)となることはあり、このメンタルヘルス疲労メンタルヘルス障害発症の誘因となる点は労働災害認定に際して議論となる部分です。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態で身体感覚に対して過敏になると、メンタルヘルス不調者自身が身体の些細な不調にとらわれることがあります。全身倦怠感めまい、吐き気、動悸などの症状を訴えてメンタルヘルス科受診するが、特段の異常が見つからないです。しかしメンタルヘルス不調者自身の自覚症状は続き、さらには悪化するため、メンタルヘルス不調者本人は身体的な疾患があると考えて、いろいろな病院を受診します。メンタルヘルス症状へのとらわれとそのメンタルヘルス症状へのメンタルヘルス対応に終始して、いわゆる生産的メンタルヘルス活動(仕事を含む日常生活)ができなくなり、生活エネルギーの不足したメンタルヘルス状態となります。またメンタルヘルス素因によっては、神経の過敏なメンタルヘルス状態から過呼吸発作などを起こし、パニック発作を呈することもあります。このように神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態は、いろいろなメンタルヘルス不調の出発点となるが、そこからどのようなメンタルヘルス疾患へ進展していくのかは、環境、メンタルヘルス素因や性格などが関係していると考えられます。
神経過敏状態などメンタルヘルス過敏状態を呈するようになるメンタルヘルス要因、つまり過度のメンタルヘルス疲労をきたすメンタルヘルス要因は長時間労働だけではなく、メンタルヘルス素因や性格などによりいろいろと考えられます。対人的なかかわりが元来苦手で、気を遣うほうであれば、些細な対人的な食い違いがメンタルヘルス疲労大きなメンタルヘルス要因となります。自分の決めたペースややり方を守ることが得意なほうであれば、臨機応変のメンタルヘルス対応を求められる環境は大きなストレスとなります。ストレスを大きくしない配慮は、一言でいえば適性配置となるが、実際の職場では人に合わせて仕事が発生するわけでなく、また現在の職場は変化が常態化しており、非常な困難が予想されます。その中で仕事の量については、客観的指標として労働時間があるためメンタルヘルス評価職場のメンタルヘルス対策が可能なメンタルヘルス領域です。良質な睡眠が、メンタルヘルス疲労からメンタルヘルス状態の回復には重要となり、特に都会においては長時間の通勤者が多いため、その点も加味した就業時間管理などのメンタルヘルス対応が有効になります。また睡眠時間は自覚しやすいメンタルヘルス症状のため、不眠が出現した場合に産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス相談するようなメンタルヘルス啓発活動は、メンタルヘルス不調の早期対応に結びつきやすいです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。