職場のメンタルヘルス(その14)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の14回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅱ)
メンタルヘルスに関する安全配慮義務メンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮
メンタルヘルス関連裁判の判例で示されるように、昨今の企業には、心の健康に関する安全(健康)配慮義務(メンタルヘルスに関する安全(健康)配慮義務)の履行が強く求められています。こういったメンタルヘルスに関する安全配慮義務の流れのなか、企業のリスクマネジメントの観点からは、従業員のメンタルヘルス情報などプライバシーよりもメンタルヘルスに関する安全配慮義務の視点が強調される傾向があるが、職場での個人のメンタルヘルス情報などプライバシーの侵害も民法上の不法行為として損害賠償責任が問われうる事項であることを忘れてはならないです(民法709条)。産業精神保健活動のほとんど(産業メンタルヘルス活動のほとんど)において、個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮は不可欠であり、最近のメンタルヘルス情報などプライバシーの考えが、個人のメンタルヘルス情報を自分で管理する権利としてとらえられていることを考えると、基本的にすべて個人のメンタルヘルス情報の取り扱いは従業員の同意を得る必要があると考えるべきです。
また、およそメンタルヘルス相談活動の利用頻度は、そのメンタルヘルス相談システムの守秘性の高さに比例すると考えられ、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)の質や評価も従業員個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮の仕方に大きく依存していると思われます。
●企業ポリシーの一環としてのメンタルヘルス活動
職場のメンタルヘルス活動等を実効的に行うためには、事業者のより深いメンタルヘルスへの理解と主体的なメンタルヘルスへの姿勢が欠かせないことは明確です。海外の企業におけるメンタルヘルス活動は、企業のリスクマネジメントだけを目的に行われてはいないです。事業者が従業員を大事にすることは企業の利益に通じると考えるからメンタルヘルス活動は行われているのであり、企業のポリシーに則ったメンタルヘルス活動です。産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフも、単に事業者に対してメンタルヘルスへの理解を求めるだけでなく、きちんとしたメンタルヘルス評価手法を行いながら、メンタルヘルス活動の効果を証明していくならば、事業者もより高い視点でメンタルヘルス活動にかかわるようになるでしょう。また、人事・労務部門と協力して、生産性に直結する労働者のワークモチベーションやQWL(quality of working life;労働生活の質)、心理的報酬を高めるためのメンタルヘルス施策などの組織メンタルヘルス的なアプローチは、今後表面化してくる成果主義や裁量労働の進展に伴う新たなメンタルヘルスの問題への布石として企業が求めるメンタルヘルス活動方針とも一致するものとなるでしょう。
職場のメンタルヘルス体制うつ病などメンタルヘルス疾患対策
⇒ここでは職場のメンタルヘルスについて概説しました。うつ病などメンタルヘルス疾患という医学的側面だけでなく心理社会的な側面からのアプローチも重要な意味をもつメンタルヘルス疾患を扱うためには、メンタルヘルス不調者本人、職場、メンタルヘルス不調者を支えるメンタルヘルススタッフ、そして時には家族も含めた有機的な連携と、しっかりとした職場のメンタルヘルス体制づくりが必要となります。したがって、職場のうつ病対策など職場のメンタルヘルス疾患対策を進めていくプロセスは、職場のメンタルヘルスに必要なことだけでなく成熟した人と人との関係や職場環境をつくるのに必要なプロセスでもあり、働きがいのある職場をつくっていくための不可欠なステップであるといえます。現実には数多くのメンタルヘルスの課題が残されているが、これらのメンタルヘルス課題を克服していくなかで得られるものはメンタルヘルス不調者だけでなく企業や組織にとっても少なくないです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。






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