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職場のメンタルヘルス(その14)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の14回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅱ)
メンタルヘルスに関する安全配慮義務メンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮
メンタルヘルス関連裁判の判例で示されるように、昨今の企業には、心の健康に関する安全(健康)配慮義務(メンタルヘルスに関する安全(健康)配慮義務)の履行が強く求められています。こういったメンタルヘルスに関する安全配慮義務の流れのなか、企業のリスクマネジメントの観点からは、従業員のメンタルヘルス情報などプライバシーよりもメンタルヘルスに関する安全配慮義務の視点が強調される傾向があるが、職場での個人のメンタルヘルス情報などプライバシーの侵害も民法上の不法行為として損害賠償責任が問われうる事項であることを忘れてはならないです(民法709条)。産業精神保健活動のほとんど(産業メンタルヘルス活動のほとんど)において、個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮は不可欠であり、最近のメンタルヘルス情報などプライバシーの考えが、個人のメンタルヘルス情報を自分で管理する権利としてとらえられていることを考えると、基本的にすべて個人のメンタルヘルス情報の取り扱いは従業員の同意を得る必要があると考えるべきです。
また、およそメンタルヘルス相談活動の利用頻度は、そのメンタルヘルス相談システムの守秘性の高さに比例すると考えられ、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)の質や評価も従業員個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮の仕方に大きく依存していると思われます。
●企業ポリシーの一環としてのメンタルヘルス活動
職場のメンタルヘルス活動等を実効的に行うためには、事業者のより深いメンタルヘルスへの理解と主体的なメンタルヘルスへの姿勢が欠かせないことは明確です。海外の企業におけるメンタルヘルス活動は、企業のリスクマネジメントだけを目的に行われてはいないです。事業者が従業員を大事にすることは企業の利益に通じると考えるからメンタルヘルス活動は行われているのであり、企業のポリシーに則ったメンタルヘルス活動です。産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフも、単に事業者に対してメンタルヘルスへの理解を求めるだけでなく、きちんとしたメンタルヘルス評価手法を行いながら、メンタルヘルス活動の効果を証明していくならば、事業者もより高い視点でメンタルヘルス活動にかかわるようになるでしょう。また、人事・労務部門と協力して、生産性に直結する労働者のワークモチベーションやQWL(quality of working life;労働生活の質)、心理的報酬を高めるためのメンタルヘルス施策などの組織メンタルヘルス的なアプローチは、今後表面化してくる成果主義や裁量労働の進展に伴う新たなメンタルヘルスの問題への布石として企業が求めるメンタルヘルス活動方針とも一致するものとなるでしょう。
職場のメンタルヘルス体制うつ病などメンタルヘルス疾患対策
⇒ここでは職場のメンタルヘルスについて概説しました。うつ病などメンタルヘルス疾患という医学的側面だけでなく心理社会的な側面からのアプローチも重要な意味をもつメンタルヘルス疾患を扱うためには、メンタルヘルス不調者本人、職場、メンタルヘルス不調者を支えるメンタルヘルススタッフ、そして時には家族も含めた有機的な連携と、しっかりとした職場のメンタルヘルス体制づくりが必要となります。したがって、職場のうつ病対策など職場のメンタルヘルス疾患対策を進めていくプロセスは、職場のメンタルヘルスに必要なことだけでなく成熟した人と人との関係や職場環境をつくるのに必要なプロセスでもあり、働きがいのある職場をつくっていくための不可欠なステップであるといえます。現実には数多くのメンタルヘルスの課題が残されているが、これらのメンタルヘルス課題を克服していくなかで得られるものはメンタルヘルス不調者だけでなく企業や組織にとっても少なくないです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その13)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の13回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅰ)
●産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフメンタルヘルス相談への対応能力
産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、事業場の心の健康づくり対策(事業場のメンタルヘルス対策)のあらゆる場面において、メンタルヘルス不調者と管理監督者をメンタルヘルス支援しなければならないです。特に、メンタルヘルス不調者からのメンタルヘルス相談対応においては、メンタルヘルス不調者メンタルヘルス状態を把握するとともに、メンタルヘルス不調者がかかえているようなメンタルヘルス面の問題保健指導レベルのメンタルヘルス問題なのか、専門的なメンタルヘルス科治療レベルメンタルヘルス問題なのか、または職場へのメンタルヘルス的な介入が必要なレベルメンタルヘルス問題なのかなどについて、判断しなければならないです。メンタルヘルス疾患に関する労災や民事訴訟が急増するなか、少なくとも専門的なメンタルヘルス科治療が必要メンタルヘルス状態であるか否か、仕事でのストレスの軽減がぜひとも必要なメンタルヘルス状態であるのか否かといったことについて、ある程度正確なメンタルヘルス状態に関するアセスメント(見立て)ができないと、企業の安全配慮義務をメンタルヘルスの専門的な立場からサポートするといったメンタルヘルス的な役割は果たせないでしょう。なかでも現場において最も遭遇する頻度の高いうつ状態などメンタルヘルス不調に関するアセスメントは重要です。
うつ状態などメンタルヘルス不調については、一般的に考えられている以上にメンタルヘルス科治療の対象になる割合が高いが、メンタルヘルススタッフがある程度自信をもってメンタルヘルス状態に関するアセスメントができるようになると、メンタルヘルス科受診への動機づけもスムーズに行われるようになります。メンタルヘルススタッフ自身が、メンタルヘルス専門家精神科医・心療内科医)のメンタルヘルス科治療の対象になるのかどうかはっきり自信がもてないメンタルヘルス状態精神科や心療内科などメンタルヘルス科への受診メンタルヘルス不調者に勧めても、メンタルヘルス科への受診行動に結びつく確率は高くはならないです。しかしながら、多くの産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、身体疾患に関する知識に対してメンタルヘルス疾患に関する知識メンタルヘルス状態に関するアセスメントの技術が相対的に低い傾向がみられます。例えば、高血圧症のケースのように、メンタルヘルス不調者に対しても、そのまま経過観察でよいか、睡眠の取り方などに関する保健指導だけでよいのか、もしくはメンタルヘルス科治療メンタルヘルス上の措置が必要かどうかなどきちんと責任もってメンタルヘルス状態に関するアセスメントできなければ産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフとしての役割を果たすことはできないです。
最近では、産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフ向けうつ病などメンタルヘルス疾患を中心としたメンタルヘルス教育が盛んに行われるようになっているが、職場のメンタルヘルスにおいては知識教育だけでは対応できないようなメンタルヘルス相談のケースも少なくないため、常にメンタルヘルス専門家精神科医師・心療内科医師)と連携できるような職場のメンタルヘルス態勢を整えておくべきでしょう。今後のメンタルヘルス教育においては職場外のメンタルヘルス専門家心療内科医・精神科医)によるスーパービジョンを受けながらのメンタルヘルス実践教育も検討されるべきかもしれないです。
自殺防止へのメンタルヘルス対応
⇒本来の産業精神保健活動(本来の産業メンタルヘルス活動)のなかに自殺予防の視点をどの程度含めるかについてはまだ多くの疑問が残されています。また自殺防止対策は本来、国レベルで考えるべき大きなメンタルヘルス問題であり、企業で自殺防止のための総合的な職場メンタルヘルスプログラムを展開できるものでもないです。しかしながら、企業においては、職場のメンタルヘルス活動の結果として自殺が防止されることを期待されているのが現実であり、たとえ職場のメンタルヘルス活動が部分的ではあっても自殺予防に結びつけることをめざすべきでしょう。自殺防止に対しては、事業者が過重労働防止など責任ある労務管理を遂行することが何よりも大事なことであるが、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)においても自殺の大きな原因疾患であるうつ状態など職場のメンタルヘルス不調および職場うつ病などメンタルヘルス疾患予防メンタルヘルス対策を推進することは、自殺予防へのメンタルヘルス上の取り組みとして有用なことだと考えられます。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その12)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の12回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎メンタルヘルス活動の現状(Ⅳ)
職場におけるメンタルヘルス活動の実際
職場復帰支援(リワーク支援)
⇒2004(平成16)年10月に厚生労働省より「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援の手引きリワーク支援の手引き)」(復職支援手引きリワーク手引き)=復職支援ガイドラインリワークガイドライン))が発表され、各事業場は、復職支援手引きを参考リワーク手引きを参考)にしながら個々の事業場の実態に即した形で職場復帰支援プログラムの策定リワーク支援プログラムの策定)や復職支援ルールリワークルール)の整備を行うよう求められています。厚労省の職場復帰支援プログラム厚労省のリワーク支援プログラム)は、「メンタルヘルス不調休業開始および休業中のメンタルヘルスケア」「主治医(精神科医・心療内科医)による職場復帰可能リワーク可能)の判断」「職場復帰の可否リワークの可否)の判断および職場復帰支援プランリワーク支援プラン)の作成」「最終的な職場復帰の決定リワークの決定)」「職場復帰後リワーク後)のフォローアップ」の5つの復職支援ステップリワークステップ)を基本的な復職支援の流れリワークの流れ)としており、それぞれの復職支援ステップそれぞれのリワークステップ)で、産業医、主治医(精神科医師・心療内科医師)、管理監督者、人事労務担当者等が相互に連携しながらメンタルヘルス不調者復職支援を目的リワークを目的)としています。現在多くの企業で復職支援に関するルールづくりリワークに関するルールづくり)やリワークプログラムの作成復職支援プログラムの作成)が行われているところです。
外部メンタルヘルス相談機関との連携
メンタルヘルス科治療が必要なメンタルヘルス不調者の紹介職場復帰支援における情報交換リワーク支援における情報交換)以外に、事業場がかかえるメンタルヘルス問題や求める復職支援サービスリワークサービス)に応じて、また、メンタルヘルス不調者メンタルヘルス相談内容等を事業場に知られることを望まないような場合にも、メンタルヘルスケアに関し専門的なメンタルヘルスの知識を有する各種の外部メンタルヘルス機関メンタルヘルス科専門医療機関、産業保健推進センター、都道府県精神保健福祉センターなど)のメンタルヘルス支援が活用されます。外部メンタルヘルス機関メンタルヘルス支援を活用する際には、産業医が窓口となって、適切な事業場外資源から必要なメンタルヘルス情報提供メンタルヘルスに関する助言を受けるなど円滑なメンタルヘルスでの連携を図るようにしている事業場が多いです。
最近では外部資源として、外部EAPでのリワークプログラムが注目外部EAPでの復職支援プログラムが注目)を集めています。外部EAPでのリワークプログラムは、守秘性の高さ外部EAPでの復職支援プログラムは、守秘性の高さ)によるメンタルヘルス相談のしやすさだけでなく、メンタルヘルス不調者の家族による気づきメンタルヘルス科受診への働きかけも促進できることから、自殺予防に対しても大きな効果を発揮していると思われます。実際、自殺事例のなかには、管理監督者はそれほどのメンタルヘルス不調とは気づかなかったものの家族はメンタルヘルス不調に十分に気づいていたケースも少なくないです。うつ病などメンタルヘルス疾患の場合、家族もどのようにメンタルヘルス不調者に対応してよいかわからないことも多いため、適切なメンタルヘルス不調に関するアセスメント(見立て)メンタルヘルス不調者への対応に関するアドバイスが得られる質の高い外部EAPでのリワークプログラムの利用価値は高い外部EAPでの復職支援プログラムの利用価値は高い)です。
自殺の危険因子のなかで最も重要なのは、自殺未遂歴であり、自殺未遂者の10人に1人は、将来自殺によって死亡するといわれています。このように最も緊急のメンタルヘルス的な介入が必要な自殺未遂行為についてのメンタルヘルス相談は、社内に寄せられることはほとんどないが、外部EAPでのリワークプログラム外部EAPでの復職支援プログラム)には自殺未遂に関する多くのメンタルヘルス相談が寄せられていることにも注目すべきでしょう。
メンタルヘルス不調者の増加とリスクマネジメントとしての側面が強くなった現在の職場でのメンタルヘルス状況を考えると、職場のメンタルヘルス活動には、より高度なメンタルヘルスに関する知識メンタルヘルス活動の経験をもつメンタルヘルスの専門家との連携がますます重要になってくると思われます。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その11)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の11回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎メンタルヘルス活動の現状(Ⅲ)
職場におけるメンタルヘルス活動の実際
ⓒ産業医、保健師等産業保健スタッフなどメンタルヘルス科専門スタッフらによるメンタルヘルス健診メンタルヘルス相談活動
⇒職場では、定期健康診断やその他の健康診断(特殊健康診断など)、長時間の時間外労働を行っているメンタルヘルス不調者に対するメンタルヘルス健診が実施過重労働健診が実施)されています。職場におけるメンタルヘルス健診では産業医や保健師等のメンタルヘルス科専門スタッフらが、メンタルヘルス不調者に対して問診を行い、メンタルヘルス状態を把握します。また、メンタルヘルス健診以外でもメンタルヘルス不調者や管理監督者からのメンタルヘルス相談を受けることも多いです。産業医等のメンタルヘルス科専門スタッフメンタルヘルス相談で把握したメンタルヘルス情報を基に、必要に応じて事業場外のメンタルヘルス科専門医療機関へのメンタルヘルス相談メンタルヘルス科受診を促したり、管理監督者および人事労務担当者とメンタルヘルス相談しながら就業上の配慮について検討しています。
現在、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフが受けるメンタルヘルス相談のほとんど抑うつなどメンタルヘルス症状に関するものであり、メンタルヘルス専門スタッフにとって抑うつ状態などメンタルヘルス状態に関するアセスメント(見立て)能力の向上は不可欠となっています。また、メンタルヘルス状態に関するアセスメントの方法も、これまでの問診票の回答を基にしたメンタルヘルス状態へのアセスメント方法だけでなく、ある程度構造化されたメンタルヘルス状態に関する面接法などを利用して、きちんとしたアセスメント(見立て)に基づきメンタルヘルス評価を行っていこうとする事業場も増えつつあります。
こういった産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフの専門的なメンタルヘルス活動を支援するため、これまでメンタルヘルス科診療目的であった外部のメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)や臨床心理士(カウンセラー)等との契約内容を、アセスメントと外部メンタルヘルス科医療機関への紹介、事業場内産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス活動への支援に見直す企業も増えてきています。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その10)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の10回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎メンタルヘルス活動の現状(Ⅱ)
職場におけるメンタルヘルス活動の実際
メンタルヘルス活動の具体的な内容については別の機会で詳しく述べますが、今回から現在職場で行われているメンタルヘルス活動の概要について説明します。
労働者に対するメンタルヘルス教育啓発活動
⇒最近では、社内広報誌や社内webページなどを利用して、うつ病などメンタルヘルス疾患等に対する基本的な内容やメンタルヘルス不調への気づきのヒントについてのメンタルヘルス情報を提供している企業が多いです。これまで職場では「うつ病」といったメンタルヘルス疾患名を掲げてメンタルヘルス教育することに抵抗を感じることが多かったが、現在ではうつ病などメンタルヘルス疾患をテーマにしたメンタルヘルス教育啓発活動は積極的に行われるようになっています。うつ病などメンタルヘルス疾患は普通にみられる病気であること、しかし、うつ病などメンタルヘルス疾患と気づかずに放っていると自殺も含め重大な結果をもたらしてしまう可能性があること、そして、職場うつ病などメンタルヘルス疾患メンタルヘルス科治療によって治すことが十分可能であることなどが、職場でメンタルヘルス教育されています。いまだうつ病などメンタルヘルス疾患については誤ったイメージをもつ労働者も少なくないため、職場うつ病などメンタルヘルス疾患の生物学的な側面も含めたメンタルヘルス教育も積極的に行い、なぜうつ病治療などメンタルヘルス疾患治療が必要なのかを正確に理解してもらうことでメンタルヘルス科受診メンタルヘルス科治療に対する抵抗を少なくするよう工夫している企業もあります。
また、抑うつ状態などメンタルヘルス不調は、職場よりも家庭で最初に気づかれることも多く、メンタルヘルス不調治療への結びつけにおいても、家族のメンタルヘルス不調への理解メンタルヘルス不調への協力は欠かせないです。こういった家族によるメンタルヘルス不調の早期発見メンタルヘルス不調への早期介入を促進するためにも、家族向けのメンタルヘルス情報提供活動は非常に重要であり、社外のEAP(employee assistance program;従業員支援プログラム)の広報などに合わせて、家族向けのメンタルヘルス教育を積極的に行う企業も増えてきています。
管理監督者へのメンタルヘルス教育
職場におけるメンタルヘルス活動の基本の一つは、過重労働防止も含めた労務管理の徹底です。過重労働防止のために多くの事業場で管理監督者へのメンタルヘルス教育が実施されているが、メンタルヘルス教育のなかでは、安全(健康)配慮義務は企業の責任であり管理監督者はこれを履行するために責任あるメンタルヘルス管理を行うこと、必要に応じてきちんと産業保健スタッフ等に結びつけること等が強調されています。特に、最近の管理監督者へのメンタルヘルス教育では「過重労働によるメンタルヘルス障害防止のための総合メンタルヘルス対策」に基づいて取り決められた長時間労働者へのメンタルヘルス管理のルールが説明されることも多く、管理監督者へのメンタルヘルス教育の際に、長時間の時間外労働の防止や労働者のメンタルヘルスへの配慮について具体的なメンタルヘルス教育がなされています。また、管理監督者へのメンタルヘルス教育のなかで、労働者の話を聞きながらメンタルヘルス不調に気づくべきポイントとして、職場うつ病などメンタルヘルス疾患を疑わせるようなメンタルヘルス症状うつ症状などメンタルヘルス症状に伴うような行動の変化などを含めてメンタルヘルス教育することも増えてきています。
メンタルヘルス問題への意識の高い企業では、より適切な労務管理を行うために拡大的なフレックス制度の見直し等に着手し始めたところも出ています。また、産業保健スタッフへの結びつけをスムーズに行えるよう産業医へのメンタルヘルス相談方法の周知を徹底させるほか、管理職向けのメンタルヘルス相談窓口を設置している企業もあります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その9)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の9回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎メンタルヘルス活動の現状(Ⅰ)
メンタルヘルス活動への取り組み状況
⇒わが国における職場のメンタルヘルス活動はまだ緒に就いたばかりで十分とはいえない状況にあります。労働者メンタルヘルス状況調査によると、心の健康対策(メンタルヘルス対策)に取り組んでいる事業場は全体の23.5%にすぎず、特に中小規模の事業場ではほとんどメンタルヘルス対策がなされていないことが示されています。
メンタルヘルス活動の内容としては、メンタルヘルス相談カウンセリング)の実施(55.2%)、定期メンタルヘルス診断における問診(43.6%)、職場環境の改善(42.3%)が主なものとなっています。また、メンタルヘルス対策に取り組む事業場のうち49.8%がメンタルヘルス専門スタッフを配置しており、その内訳は、産業医(59.2%)、保健師または看護師(35.1%)、衛生管理者または衛生推進者等(32.9%)、カウンセラー等(27.1%)でした。メンタルヘルス対策の効果については、61.3%の事業場が「メンタルヘルス対策の効果があると思う」と回答しており、特にメンタルヘルス専門スタッフをおく企業のほうがよりメンタルヘルス対策の効果を感じている結果(72.4%)が示されています。
◇表1 職場のメンタルヘルスケアに関するメンタルヘルス専門スタッフの役割
『産業医:産業医は、メンタルヘルスの専門的な立場から、事業場の心の健康(事業場のメンタルヘルス)づくり計画の策定への助言・メンタルヘルス指導およびメンタルヘルス対策の実施状況を把握する。また、セルフメンタルヘルスケアおよびラインによるメンタルヘルスケアなどメンタルヘルスケアを支援し、メンタルヘルス教育研修の企画およびメンタルヘルスケアの実施メンタルヘルス情報の収集およびメンタルヘルスケアの提供、事業場へメンタルヘルスに関する助言およびメンタルヘルス指導等を行う。就業上の配慮が必要な場合には、事業者に必要なメンタルヘルスについて意見を述べる。メンタルヘルス科専門的なメンタルヘルス相談対応が必要なメンタルヘルス事例については、事業場外資源との連絡調整にメンタルヘルスの専門的な立場からかかわる。さらに、長時間労働者等に対するメンタルヘルス面接指導等のメンタルヘルスケアの実施メンタルヘルスに関する労働者のメンタルヘルス情報など個人情報の保護についても中心的役割を果たす。』
『衛生管理者:衛生管理者は、心の健康づくり(メンタルヘルスづくり)計画に基づき、産業医等のメンタルヘルスに関する助言メンタルヘルス指導等を踏まえて、具体的なメンタルヘルス教育研修の企画および職場のメンタルヘルスケアの実施、職場環境等のメンタルヘルス評価メンタルヘルス面の改善、心の健康に関する相談(メンタルヘルスに関する相談)ができる雰囲気や職場のメンタルヘルス体制づくりを行う。また、個人のセルフメンタルヘルスケアおよび職場のラインによるメンタルヘルスケアなどメンタルヘルスケア(一次予防)を支援し、そのメンタルヘルスケア(一次予防)の実施状況を把握するとともに、産業医等と連携しながら事業場外資源によるメンタルヘルスケアとの連絡調整にあたることが効果的である。』
『産業看護職(保健師・看護師):産業看護職は、産業医等および衛生管理者等と協力しながら、労働者個人のセルフメンタルヘルスケアおよび事業場等の職場ラインによるメンタルヘルスケアなど、メンタルヘルスケア(一次予防)を支援し、メンタルヘルス教育研修の企画・職場のメンタルヘルスケアの実施職場環境等のメンタルヘルス評価メンタルヘルス面の改善、労働者および管理監督者からのメンタルヘルス相談対応、保健指導等にあたる。』
『人事労務管理スタッフ:人事労務管理スタッフは、管理監督者だけでは解決できない職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理が心の健康に及ぼしている具体的な影響(人事労務管理がメンタルヘルスに及ぼしている具体的な影響)を把握し、労働時間等の労働条件の改善および適正配置に配慮する。』
メンタルヘルスづくり専門スタッフメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)、臨床心理士、産業カウンセラーメンタルヘルス相談担当者):これらのメンタルヘルス専門スタッフは事業場の産業医、衛生管理者、保健師等と協力しながら、メンタルヘルス教育研修の企画事業場など職場メンタルヘルスケアの実施事業場など職場環境等のメンタルヘルス評価メンタルヘルスケア面での改善、労働者および管理監督者からのメンタルヘルス科専門分野的なメンタルヘルス相談対応等にあたるとともに、当該メンタルヘルス専門スタッフメンタルヘルス科専門領域によっては、事業者へのメンタルヘルス科専門領域的な立場からのメンタルヘルスに関する助言等を行うことも有効である。メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)は、企業内メンタルクリニックでのメンタルヘルス科診療活動だけでなく、産業医や産業看護職のメンタルヘルス活動の支援メンタルヘルス不調で休業・休職中のメンタルヘルス不調者復職判定リワーク判定)や復職支援の際リワークの際)のメンタルヘルス科専門アドバイザーとして機能することが期待されている。臨床心理士や、産業カウンセラーも産業医や産業看護職、メンタルヘルス相談担当者等によるメンタルヘルス相談活動を補完する目的で、またはよりメンタルヘルス介入的なカウンセリングを実施する目的カウンセリング活動を行っている。なお「労働者の心の健康の保持増進(労働者のメンタルヘルスの保持増進)のための指針」では、これらの事業場外メンタルヘルス専門スタッフは「心の健康づくり専門スタッフ」と呼ばれて(「メンタルヘルスづくり専門スタッフ」と呼ばれて)いる。』
(厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針(労働者のメンタルヘルスの保持増進のための指針)」、2006(平成18)に示されたものを改変)
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その8)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の8回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場のメンタルヘルスに対する行政の動き(Ⅳ)
●事業者の安全配慮義務と労働契約法
旧メンタルヘルス指針が公表された2000(平成12)年、電通事件の最高裁判決が下り、原告の訴えがほぼ全面的に認められたことが新聞等で大きく報道されました。この裁判は1991(平成3)年、自殺したメンタルヘルス不調者の遺族が、メンタルヘルス不調者本人の勤務先であった広告代理店を相手取って、責任を追及する民事訴訟を起こしたものです。最終的に、長時間労働を続けさせていたこと、長時間労働によるストレスに対して実効あるメンタルヘルス改善策を講じなかったこと、メンタルヘルス不調者本人の異変に気付きながら適切なメンタルヘルス対応を行わなかったことなどに関して、事業者の注意義務違反が認められたが、それ以後、労働者のメンタルヘルスに関する職場のメンタルヘルス対応が、事業者の安全配慮義務の履行という点で妥当であったかどうかについて争われる訴訟が相次ぎました。
2008(平成20)年には、労働契約法が制定されました。それまでは事業者の信義則上の債務の1つという位置付けであった安全配慮義務が組み入れられ、立法上も明文化されました。
メンタルヘルス障害労災認定
⇒すでに述べたように、1990年代半ばごろより、仕事に関連するストレスメンタルヘルス不調を引き起こす例に関して多くの議論がなされるようになり、民事訴訟や行政訴訟も増加しました。このようなメンタルヘルス状況を背景として、厚生労働省は1999(平成11)年、「心理的ストレスによるメンタルヘルス障害等に係る業務上外のメンタルヘルス判断指針」(以下、労災判断指針)を示しました。これは、メンタルヘルス障害が業務上疾病として労災認定されるためのメンタルヘルス要件を示したものです。
2003(平成15)年には、「神経系統の機能又はメンタルヘルスの障害に関する障害等級認定基準について」が公表され、労災認定における非器質的メンタルヘルス障害の後遺障害について、新たな認定基準が設けられました。
労災判断指針の公表後、メンタルヘルス障害の労災請求件数は増加の一途を辿り、請求から支給決定までの期間が長期化しました。こうした事態に対し、2011(平成23)年には同指針の大幅な見直しが行われ、名称も「心理的ストレスによるメンタルヘルス障害の認定基準」と改称されました。基本的な考え方は労災判断指針を踏襲しているが、内容が詳細化するとともに、労災認定の手続きも一部簡素化されました。この影響もあり、翌2012(平成24)年度の認定件数は、前年度よりも150件増という大幅な伸びを示しました。
自殺対策
⇒厳しい社会情勢は、自殺問題をも誘発しました。それだけが原因ではないとしても、わが国の自殺者数は、1998(平成10)年に急激に増加して以降2011(平成23)年に至るまで、年間3万人超というきわめて高い値が続きました。労働者(被雇用者、勤め人)に限っても、多い年には毎年9,000人以上が自ら命を絶ちました。国は2006(平成18)年、自殺対策基本法を制定し、2007(平成19)年には同法に基づいて推進されるべき対策の指針として「自殺総合対策大綱」を策定しました。大綱は2008(平成20)年に一部改正が、2012(平成24)年には全体的な見直しが行われました。その中では、職場においてもメンタルヘルス指針に沿ったメンタルヘルス対策への取り組み、ハラスメント対策、労働時間管理などを適切に行うことが求められています。
2012(平成24)年以降自殺者数は減少に転じているが、労働者におけるその傾向は全体よりも鈍いです。引き続き、自殺予防の視点をも包含したメンタルヘルス対策が検討されるべきでしょう。
●障害者雇用など
⇒厚生労働省は、1960(昭和35)年より「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)によって、障害者の雇用の促進を図ってきました。障害者雇用率制度によって法定障害者雇用率を定め、未達成の企業に対しては勧告、指導を行い、状況によっては企業名を公表しています。2006(平成18)年の法改正により、この障害者雇用率に、身体障害者、知的障害者に加え、メンタルヘルス障害者精神障害者保健福祉手帳所持者)が計上されるようになりました。しかし障害者雇用の内訳を見ると、身体障害者、知的障害者に比べ、メンタルヘルス障害者は非常に低率にとどまっているのが現状です。2018(平成30)年には、メンタルヘルス障害者(単独)の雇用が義務付けられました。
他のメンタルヘルス対策と共に、メンタルヘルス疾病の理解、当該メンタルヘルス不調者の業務遂行能力のメンタルヘルス評価など、メンタルヘルス障害者の雇用推進に向けたメンタルヘルス対策への取り組みが、多くの企業で行われることが望まれます。また、産業医も職場のメンタルヘルス対策への取り組みに参画すべきでしょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その7)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の7回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場のメンタルヘルスに対する行政の動き(Ⅲ)
安全衛生法とメンタルヘルス
4.職場復帰支援(リワーク支援)
メンタルヘルス不調を有するメンタルヘルス不調者の増加に伴い、そのメンタルヘルス不調者復職支援も産業保健の大きな課題リワークも産業保健の大きな課題)となってきました。
2004(平成16)年には、「心の健康問題により休業した労働者(メンタルヘルス不調により休業した労働者)の職場復帰支援の手引きリワーク支援の手引き)」(以下、復職支援手引きリワーク手引き)=復職支援ガイドラインリワークガイドライン))がまとめられました。厚労省の復職支援手引き厚労省のリワーク手引き)は、メンタルヘルス不調により休業に至ったメンタルヘルス不調者のうちメンタルヘルス疾患の発症前と同程度までにメンタルヘルス状態の回復具合、つまり復職準備性リワーク準備性)が期待できるメンタルヘルス不調者の例を主な復職支援の対象リワークの対象)として、休業中のメンタルヘルス不調者復職支援のあり方リワークのあり方)を示したものです。
しかし、その後もメンタルヘルス不調者の数は減少せず、職場へのメンタルヘルス不調者らの受け入れなど、復職支援に苦慮する企業リワークに苦慮する企業)が後を絶たない復職支援の状況リワークの状況)が続いたため、2009(平成21)年に復職支援手引きは増補改訂リワーク手引きは増補改訂)され、旧版復職支援手引き旧版リワーク手引き)に比べて、より具体的な復職支援に関する事項リワークに関する事項)が記されました。
5.労働災害防止計画
⇒厚生労働省は5年おきに、その後の5年間に国および事業場が労働災害防止対策として取り組むべき事項をまとめた「労働災害防止計画」を策定し、公表しています。1993(平成5)年に示された「第8次労働災害防止計画」では、快適な職場環境の形成の促進と共に、メンタルヘルスの保持増進対策の推進が掲げられました。それ以後、第9~11次計画にかけても、メンタルヘルスに関する事項が重要項目として記載されてきました。
2013(平成25)年の第12次計画においては、2017(平成29)年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にすることが目標として掲げられました。
6.メンタルヘルス対策の関連事業
⇒2000(平成12)年の旧メンタルヘルス指針の公表後、中央労働災害防止協会の委託事業として、メンタルヘルス教育研修事業メンタルヘルス推進モデル事業(事業名は年によって若干変更されている)が行われました。事業場外資源の活用などメンタルヘルスケア対策(三次予防)のあり方についても、メンタルヘルス対策委員会が設置され、メンタルヘルスケアに関する報告書も作成されました。
2006(平成18)年のメンタルヘルス指針の公表後には、メンタルヘルス指針で選任することを推奨している事業場内メンタルヘルス推進担当者およびメンタルヘルス教育研修担当者メンタルヘルス研修テキストの作成が行われました。
2008(平成20)年には、各都道府県で「メンタルヘルス対策支援センター事業」が開始されました。メンタルヘルス対策全般についてのメンタルヘルス相談対応、事業場訪問によるメンタルヘルス対策支援メンタルヘルス対策の周知メンタルヘルス対策の情報提供円滑な復職支援円滑なリワーク)に向けた復職支援関係者リワーク関係者)間およびメンタルヘルス対策関係者間のネットワークの形成、事業場外メンタルヘルス相談機関の登録・メンタルヘルス相談機関の公表などが実施されてきました。現在、メンタルヘルス対策支援センターは産業保健総合支援センターに統合され、メンタルヘルス対策事業の一部としてメンタルヘルス活動が行われています。
また、同年「メンタルヘルス対策における事業場外資源との連携の促進について」が公表され、メンタルヘルス不調等による個別メンタルヘルス相談を、メンタルヘルス不調者に対して行う民間メンタルヘルス機関(医療法上のメンタルヘルス科専門医療機関以外)のメンタルヘルス登録制度が開始されています。メンタルヘルス登録制度は、民間のメンタルヘルスサービス機関メンタルヘルス対策の質の向上を図ることを主目的として設けられたが、初回メンタルヘルス面接時にメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)によるメンタルヘルス面に関する評価を義務付けるなど、制約に厳しい面があったことから、あまり広がりは見られていないです。
2009(平成21)年には、インターネット上に「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」が開設されました。ここには、リンク先も含めれば、メンタルヘルスに対する行政の動向にとどまらず、職場のメンタルヘルスに関連する広範囲のメンタルヘルス情報が掲載されており、電子メールによるメンタルヘルス個別相談の窓口も設けられています。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その6)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の6回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場のメンタルヘルスに対する行政の動き(Ⅱ)
安全衛生法とメンタルヘルス
2.労働安全衛生法の改正とメンタルヘルス指針
⇒労働者の仕事に関するストレスの増大や、メンタルヘルスに対する社会の関心の高まりを背景として、2000(平成12)年に「事業場における労働者の心の健康づくり(事業場における労働者のメンタルヘルスづくり)のための指針」(以下、旧メンタルヘルス指針)が公表されました。職場におけるメンタルヘルス対策あるべき全体像を示す旧メンタルヘルス指針は、メンタルヘルス対策の進め方の原則を包括的に述べた点で、画期的なものと言えました。
2006(平成18)年には旧メンタルヘルス指針が増補改訂され、名称も「労働者の心の健康(労働者のメンタルヘルス)の保持増進のための指針」(以下、メンタルヘルス指針)と改められました。THPと同様に、メンタルヘルス指針に沿った形メンタルヘルス対策を行うことが事業者の努力義務となり、旧メンタルヘルス指針よりも重みを増しました。職場のメンタルヘルス対策が対象とすべきメンタルヘルス問題として、メンタルヘルス不調という用語が定義されたのはメンタルヘルス指針によってです。
また、同年の安衛法の改正により、衛生委員会のメンタルヘルス調査審議事項に、「長時間にわたる労働による労働者のメンタルヘルス障害の防止を図るためのメンタルヘルス対策の樹立に関すること」と「労働者のメンタルヘルスの保持増進を図るためのメンタルヘルス対策の樹立に関すること」が追加されました。メンタルヘルス対策が事業場全体で推進されなければならないと明示されたのです。
この安衛法改正では、長時間労働者に対するメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)によるメンタルヘルス指導も義務付けられました。いわゆる過重労働によるメンタルヘルス障害の防止を図るメンタルヘルス対策への取り組みです。1980年代以降、過重労働が特に脳・心臓疾患の発症メンタルヘルス障害に影響を及ぼすことが、「過労死」という表現と共に社会の関心を集めるようになっていました。1990年代に入ると、「過労自殺」という語も生まれ、社会に定着していきました。このメンタルヘルス指導は、脳・心臓疾患のリスクに加えて、メンタルヘルス面に関する評価も含んでおり、そのメンタルヘルス指導結果によっては、メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)の受診勧奨や就業上の配慮が行われなければならないです。過重労働に対しては、2002(平成14)年に「過重労働によるメンタルヘルス障害防止のための総合メンタルヘルス対策」が公表されていたが、これも2006(平成18)年の安衛法改正に合わせて改正されました。
3.ストレスチェック制度
⇒2015(平成27)年12月には、「労働者の心理的ストレスの程度を把握するためのメンタルヘルス検査(ストレスチェック)の制度が施行となりました。ストレスチェック制度の第一義的な目的は、メンタルヘルス不調の一次予防(「セルフメンタルヘルスケア」や「ラインによるメンタルヘルスケア」)であり、ストレスチェックによって高ストレスと判定され、希望したメンタルヘルス不調者に対するメンタルヘルス専門医心療内科医・精神科医)によるメンタルヘルス指導が事業者に義務化されるとともに、ストレスチェックの結果を集団分析し、ストレスチェック結果を基に職場環境の改善を図る職場のメンタルヘルス対策への取り組みも努力義務となりました。ストレスチェック制度が意義のあるものになるためには、メンタルヘルス対策全体の中でストレスチェック制度をどのように位置付け、他のメンタルヘルス活動とどのように関連させていくかを十分に検討することが必要でしょう。
THP指針から現在までの職場のメンタルヘルスに対する行政の動向を、メンタルヘルス不調の予防レベルメンタルヘルス指針での対象別に図1に整理しました。
◇図1 職場のメンタルヘルスに関する行政の主な動向
『■職場のメンタルヘルス対策(一次予防)メンタルヘルス疾患の発症を予防するためのメンタルヘルス対策
ーー快適職場指針、職場でのストレスチェック制度、THP指針
職場のメンタルヘルス対策(二次予防)メンタルヘルス疾患の早期発見からメンタルヘルス疾患への早期介入へ
ーー長時間労働に対するメンタルヘルス指導措置
職場のメンタルヘルス対策(三次予防)メンタルヘルス疾患の再発予防
ーー復職支援手引きリワーク手引き)=「心の健康問題により休業(メンタルヘルス不調により休業)した労働者の職場復帰支援の手引きリワーク支援の手引き)」「復職支援ガイドラインリワークガイドライン)」』
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。 


職場のメンタルヘルス(その5)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の5回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場のメンタルヘルスに対する行政の動き(Ⅰ)
安全衛生法とメンタルヘルス
1.THPと快適職場づくり
労働者のメンタルヘルス管理に関して事業者が行わなければならない取り組みは、主として労働安全衛生法(以下、安衛法)によって規定されています。安衛法に初めてメンタルヘルスに関する事項が明確に記されたのは、1988(昭和63)年でした。労働者のメンタルヘルスの保持増進対策が事業者の努力義務と位置付けられ、労働者のメンタルヘルス保持増進対策の具体的な内容について「事業場における労働者のメンタルヘルス保持増進のための指針」が示されました。トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)と呼称の付けられた、労働者のメンタルヘルス保持増進への取り組みは、メンタルヘルス測定に続いて、保健指導、運動指導、栄養指導、メンタルヘルスケアなどを行うものです。
メンタルヘルスケアの内容は、主として個別のメンタルヘルス相談であり、疾病性の認められない労働者に対し、ストレスへの気付きとストレス対処メンタルヘルス支援などを行うことを狙いとしました。産業医などのメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)はメンタルヘルス測定を担当し、メンタルヘルス相談は、心理職や保健師などで所定のメンタルヘルス専門研修を修了したメンタルヘルス専門スタッフによって行われます。メンタルヘルス相談の結果(要点)は産業医などメンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)に報告され、職場のメンタルヘルス状況によって産業医などメンタルヘルス専門医心療内科医・精神科医)が職場(上司、人事労務担当者など)と連携することで、職場のメンタルヘルス問題の解決を図ることとされました。THP指針は1997(平成9)年および2007(平成19)年に改正され、事業場のメンタルヘルス状況に応じて、4種のメンタルヘルス指導の一部を実施することも可能とされています。
1992(平成4)年には、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(快適職場指針)が公表されました。労働災害メンタルヘルス障害をもたらさないだけではなく、労働者が快適に仕事をできるメンタルヘルス水準の職場環境の実現を事業者に求めた内容です。主として物理化学的因子が取り上げられたが、メンタルヘルスに関連が強い事項としては、労働者の疲労ストレスを軽減するための休憩室、メンタルヘルス相談に応じることのできるメンタルヘルス相談室等の確保が盛り込まれました。
以上2つは、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防(「セルフメンタルヘルスケア」や「ラインによるメンタルヘルスケア」)を狙いとするものであり、1990(平成2)年前後に労働者のメンタルヘルス障害の未然防止が、メンタルヘルス不調者など労働者個人への働き掛けと職場環境への働き掛けの両輪の形で示されたことになります。
その後、バブル崩壊により景気は長期にわたり低迷しました。多くの企業で組織の再編や事業の見直しといった大きな変革がなされました。上述した労働者のメンタルヘルスの保持増進に向けた施策は安定した企業活動を基盤としたものであったため、労働者のメンタルヘルス保持増進に向けた取り組みを縮小したり中断したりする事業場が数を増しました。行政もメンタルヘルスに関して大きな動きを見せなかったです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。