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心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(その2)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科メンタルヘルス科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科医の役割勤労者のメンタルヘルス」の2回目です。引き続き、心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖職場のメンタルヘルス概観〗(Ⅰ)
職場のメンタルヘルスの概観と法令メンタルヘルス指針①~
わが国における近年の労働を取り巻く社会、経済環境の急激な変化は、それぞれが複雑にわが国の勤労者の働き方と労働関連のメンタルヘルス問題に影響を与えています。職場におけるメンタルヘルスの問題は、こういった労働環境の変化が大きく影響されていると考えられています。メンタルヘルス問題の増加やこのメンタルヘルス問題の増加に伴って発生するメンタルヘルス課題、また、新たに認識されるようになったメンタルヘルス不調におけるメンタルヘルス要因となる心理的ストレスメンタルヘルス対応して、国は、種々のメンタルヘルス対策を打ち出してきました。ここでは、わが国で職場のメンタルヘルス大きなメンタルヘルス問題になってきている背景とわが国のメンタルヘルスマネジメントについて記します。
わが国で職場のメンタルヘルス大きなメンタルヘルス問題になってきている背景
1.産業保健におけるメンタルヘルスストレスの現状
⇒厚生労働省が実施している2016(平成28)年メンタルヘルス調査メンタルヘルス実態調査)では、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある者の割合が59.5%となっています。そのストレス内容は、「仕事の質・量」が53.8%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が38.5%、「対人関係(セクハラパワハラを含む)」が30.5%となっています。長時間労働、技術革新、経済の動向など、わが国の労働を取り巻く環境の急速な変化(表1)は、これらの大きなストレス要因となっていることがうかがわれます。加えて、いじめやハラスメントを含む職場の人間関係によるストレスは、職場内にとどまらず、顧客・窓口対応などの対人サービス業等で高くなっており、メンタルヘルス対策大きなメンタルヘルス課題になっています。
◇表1 わが国の労働を取り巻く環境の変化に関するキーワード
『・産業構造の変化
 ・成果主義の導入
 ・長時間労働(過重労働)
 ・経済の動向(特に不況)と雇用不安
 ・非正規労働人口の増加
 ・急速に進む技術革新とIT化(インターネット、携帯端末の普及)
 ・グローバリゼーション、企業の海外進出
 ・仕事の仕方や組織形態の変化(指示命令系統の複雑化)
 ・価値観の多様化(ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ・マネジメント)』
2.過労死等の労災認定
過労死等防止対策推進法において、「過労死等」は、「業務における過重なストレスによる脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的ストレスによるメンタルヘルス障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくはメンタルヘルス障害をいう。」と定義されています。この過労死等職業性ストレスに関連した労働災害補償請求や民事訴訟が増加しています。
1984(昭和59)年、メンタルヘルス障害例がわが国で初めて労災認定されました。以後、1980年代後半から過労死、自殺の増加が社会問題化しました。メンタルヘルス障害に関する労災補償の請求は過去15年間にほぼ6倍に増加し、2016(平成28)年には1,586件請求されています。うち未遂を含む自殺件数は198件でした。支給決定件数は498件で、うち未遂を含む自殺の件数は84件でした。支給決定の理由は、職場でのパワハラを含む「嫌がらせ、いじめ、暴行」が74人で最多でした。次いで、生死にかかわる病気やけが、極度の長時間労働など「特別な出来事」が67人、「仕事の内容や量の変化」が63人で、20歳代の若年層の労災認定が増加しています。
業務によって生じた脳・心臓疾患により労災認定される件数も高止まりしています。脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況は、請求件数は825件で、支給決定件数は260件、うち死亡件数は107件でした。
3.勤労者の自殺
⇒1998(平成10)年に急増し、一時年間9,000人を超えていた勤労者の自殺は、近年減少傾向があるものの、現在でも年間7,000人を数えています。1990年代後半の自殺率の増加は、男性の中高年者(40~50歳代)に特徴的でした。1990年代初頭の日本のバブル経済(バブル景気)破綻後、急速に後退した景気低迷に引き続いた1990年代後半に相次いだ大手金融機関の倒産(金融危機)などの関連が考察されています。勤務的なメンタルヘルス問題を原因・動機の1つとする自殺者割合の推移をみると、20歳代の自殺者の割合が増加傾向にあり、自殺に寄与するストレス要因が、経済的なメンタルヘルス問題から長時間労働やいじめなど質的に変化している可能性がうかがわれます。
4.勤労者のメンタルヘルス不調による経済的影響
⇒過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した勤労者の割合は0.4%、退職した勤労者の割合は0.2%となっています。
自殺やメンタルヘルス不調がもたらす経済的損失は大きいです。自殺やうつ病などメンタルヘルス疾患がなかったと仮定すると、経済利益は単年で約2兆7,000億円(うつ病などメンタルヘルス疾患が関与するメンタルヘルス状況のみに限ると7,754億円)と推計され、2010(平成22)年でのGDP引き上げ効果は約1兆7,000億円であったと試算されています。
メンタルヘルス不調が勤労者の生産性に与える影響も大きいです。日本における大うつ病などメンタルヘルス疾患の総コスト1兆2,900億円(2008(平成20)年)のうち、メンタルヘルス科入院メンタルクリニック通院、自殺などのコストを除いた労働に関連するコストは、そのうちの6割以上を占め、勤労者が遅刻・早退・欠勤を繰り返すメンタルヘルス状態であるアブセンティイズム(Absenteeism)のみならず、出勤はしているものの、メンタルヘルス問題によってパフォーマンスの制限生産性が低下しているメンタルヘルス状態であるプレゼンティイズム(Presenteeism)の影響が大きいことが示されています。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(その1)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科メンタルヘルス科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回から「心療内科医の役割勤労者のメンタルヘルス」というタイトルで、心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
現代は変革の時代といわれています。近年の日本では社会、産業、経済、医療、教育のすべての分野で変革が進行中です。変革のスピードが速ければそれに適応できない人が増え、社会のさまざまな分野で問題が生じてきます。メンタルヘルスの面からみると、うつ病などのメンタルヘルス疾患心身症などのストレス関連疾患、あるいは行動上の問題、最悪の形として自殺が増えてきます。
メンタルヘルスの問題はさまざまな切り口でとらえられています。例えば心理的発達の面からみれば母子保健、学童のメンタルヘルス青少年のメンタルヘルス成年期のメンタルヘルス老年期のメンタルヘルスの問題があります。また、活動の場によって職場のメンタルヘルス学校のメンタルヘルス家庭のメンタルヘルスとして取りあげられることもあります。メンタルヘルス不調者を通していずれのメンタルヘルス領域とも心療内科医は関係ができてくるし、また、校医や産業医として組織におけるメンタルヘルス対策にかかわる場合も生じてくる可能性があります。
ここでは心療内科医、一般臨床医、産業医にとって関心の高い職場のメンタルヘルスを中心に述べます。日本医師会認定産業医も既に5万人を超えたが、職業性ストレスによるメンタルヘルス不調が増え、嘱託産業医としてもメンタルヘルス対策は重要なメンタルヘルス課題となっています。
職場のメンタルヘルスに関心が高くなった背景(表1)
⇒現在、日本では約6,500万人が働いているが、労働環境も急速に変化しており、不況はその変化に拍車をかけています。産業界ではIT革命に代表される情報化・コンピューター化、技術革新、成果主義賃金制、裁量労働と目標管理制度・自己責任制、経済効率を上げるためのリストラクチャリングや組織改革などが急速に進行中です。多くの勤労者はこれらの変革に伴うさまざまなストレスに直面しており、一部の勤労者は不適応状態に陥り、メンタルヘルス不調を起こしています。
◇表1 メンタルヘルスへの関心が高くなった背景
『1.職(産)業ストレス増加の背景
  1)グローバル化と経済効率の追求
     ダウンサイジング
     リストラクチャリング
     年俸制、裁量労働制の導入
     終身雇用制の崩壊
  2)情報化、コンピューター化
  3)個人志向性と人間関係に伴うメンタルヘルス問題
  4)産業構造の変化に伴う適応障害の増加
  5)不況による失業、自殺の増加
  6)女子就労に伴うメンタルヘルス問題
  7)その他
 2.事業者(主)の安全配慮義務の範囲がメンタルヘルスの領域まで拡がったこと』
このような変化の進行は、それに適応しなければならない勤労者のストレスを増しています。厚生労働省が5年ごとに行っている労働者のメンタルヘルス調査(1万6,000人対象)では「強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者」の割合は毎回増え続けて、1980年代の50.6%から1990年代には62.8%に達しています。その悩みの内容は、1990年代のメンタルヘルス調査では「職場の人間関係」が46.2%、「仕事の質に伴うメンタルヘルス問題」33.5%、「仕事の量に伴うメンタルヘルス問題」33.3%、「仕事への適性に伴うメンタルヘルス問題」22.8%、「昇進、昇格に伴うメンタルヘルス問題」19.8%、「雇用の安定性に伴うメンタルヘルス問題」13.1%などとなっています。
このようなメンタルヘルス状況下で変化の進行にメンタルヘルス対応できず、メンタルヘルスの失調メンタルヘルス障害を呈する勤労者も増えています。メンタルヘルス学会発表などでも「リストラによる不安、不適応の増加」、「うつ状態などメンタルヘルス不調事例増加」、「復職困難例リワーク困難例)の増加」、「職場の雰囲気の悪化」などが報告されています。
他方、過労による心疾患や脳血管障害などのいわゆる過労死のほか、業務起因性のうつ病などメンタルヘルス疾患による、いわゆる過労自殺なども増加しています。日本における自殺者数は、1998(平成10)年から3万人を超え、2012(平成24)年以降ようやく3万人を下回ったものの、依然として年間2万人以上という大変高い割合で推移しています。特に生活や経済問題による自殺が多いです。このような背景から厚生労働省は1999(平成11)年に業務起因性のメンタルヘルス障害労災認定のためのメンタルヘルス基準案を、2000(平成12)年には「事業場における労働者の心の健康(労働者のメンタルヘルス)づくりのためのメンタルヘルス指針」(表2)を公表しました。
このような仕事に起因する健康障害は、メンタルヘルス面だけでなく広く身体疾患にも及び、最近では職業病に代わって糖尿病、高血圧、虚血性心疾患などのストレス関連疾患も増えており、これらについては多くの研究報告があります。
◇表2 「事業場における労働者の心の健康づくり(労働者のメンタルヘルスづくり)のためのメンタルヘルス指針について
『1.事業者は具体的な方法等についての「心の健康づくり計画(メンタルヘルスづくり計画)」を策定すること
 2.同メンタルヘルスづくり計画に基づき、次の4つのメンタルヘルスケアを推進すること
  ・労働者自身による「セルフメンタルヘルスケア
  ・管理監督者による「ラインによるメンタルヘルスケア
  ・メンタルヘルス管理担当者による「事業場内産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフ等によるメンタルヘルスケア
  ・事業場外のメンタルヘルス専門家精神科医・心療内科医)による「事業場外資源によるメンタルヘルスケア
 3.その円滑なメンタルヘルス推進のため、次のメンタルヘルスへの取り組みを行うこと
  ・管理監督者や労働者に対してメンタルヘルス教育研修を行うこと
  ・職場環境等の改善を図ること
  ・労働者が自主的なメンタルヘルス相談を行いやすいメンタルヘルス体制を整えること』
                         (2000(平成12)年8月9日労働省発表)
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身相関(その5)

心療内科 精神科大阪府 豊中市千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身相関」の5回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】こころと身体が互いに密接な関係にあって、こころの動き(情動)は何らかの身体的変化を引き起こし、また逆に、身体的変化(痛みなど)は何らかの心理的変化(心理的反応)を引き起こす現象を心身相関(mind-body correlation)といいます。また、心身交互作用という用語もあり、これは心身症の持続、増悪のメカニズムの一つとしてあげられています。たまたま心身の状態がよくない時に出現し、特別の条件が加わらなければ消失していくはずの身体症状(たとえば頭痛や肩こり)、あるいはそれほどひどくなることもなく経過するはずの身体症状にとらわれて、注意の集中がおこり、その身体部位の感覚が鋭敏となり、機能も亢進し、その結果、その身体症状をより強く感じてさらにとらわれ、注意の集中がおこるという悪循環が形成され、身体症状の持続、増悪がみられます。
心身相関のメカニズムとしては、内的・外的刺激によって大脳辺縁系で引き起こされた欲求や情動が大脳新皮質の働きにより適切に処理されないと、それより下位の視床下部に影響が及び、自律神経系および内分泌系に変調をきたし、さまざまな身体症状が出現するという過程や条件づけにより出現するというメカニズムが考えられています。そして、一般に心身相関の把握は、生活史と症状の時間的な関連性が認められること、ストレス負荷によって症状を誘発できること、治療経過のなかで医師・患者関係のあり方や対人関係の障害によって病状の変化が認められること、および心身医学的な治療によって症状の改善がみられることなどに基づいて判断されます。また、最近は精神神経内分泌免疫学(psycho-neuro-endocrino-immunology)の急速な進歩により多くの知見が得られています。
以上、心療内科豊中市千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身相関(その4)

心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身相関」の4回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】こころと身体をつなぐルートとしては、状況に応じて体の働きを自律的に調整する自律神経系に加え、内分泌系と、免疫系が挙げられます。この3つは、環境に対して私たちの身体を適応させ、安定させるための生体恒常性という機能を支えており、健康を維持しています。そうしたなかで、過剰なストレスは、この生体恒常性のバランスを狂わせる元凶となります。
内分泌系というのは、ホルモンを製造し分泌して、身体機能の調節や、様々な制御を行う腺や器官の集まりのことです。ホルモンは、血液に直に流され、血管を通って体の各部位の活動を制御します。ホルモンには、成長ホルモンや性ホルモンなど多くの種類があり、生命、生殖などに関係する指令を出す大事な物質です。
身体恒常性の維持になくてはならないものですが、栄養の偏りや不足、過度のストレスがあると、正常に分泌されなくなってしまいます。その結果、体調不良や様々な病状が現れます。いわゆる生活習慣病には、過剰なストレス等によるホルモン不足やホルモン過多が原因となって引き起こされる病気があります。
免疫系は、自己を防護して内部環境を一定の状態に保つために、自己と身体の外から入ってきた異物を区別し、異物や非自己を排除する働きをしていますが、心身に過度なストレスが加わると、免疫系の生体恒常性が崩れてしまう場合があります。例えば、大脳辺縁系で感知した過度なストレスに対しては、リンパ球の働きを減少させ免疫系機能を抑制するホルモンが分泌されます。
この状態があまり続くと、内分泌系、自律神経系、免疫系に深刻な影響が生じます。逆に適度な神経ストレスが自律神経系に作用すると、アドレナリンというホルモンが分泌されて免疫力が高まります。このように、免疫系は、普段から自律神経系や内分泌系と情報を共有し、一緒に連携して体やこころを守っているのです。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身相関(その3)

心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身相関」の3回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】こころと身体をつなぐルートとしては、自律神経系、内分泌系、免疫系の3つが挙げられます。このうち自律神経系は、循環、呼吸、消化、体温調節、内分泌機能、生殖機能、代謝などの機能を制御しています。自律、というのは、運動神経のように意識によって随意に働かすことができず、状態に応じて自律的に調節される神経系という意味です。
自律神経は、交感神経系と副交感神経系の2つの神経系で構成されており、この両者の作用は、一般に拮抗的、相互対立的に働きます。交感神経は、活動、緊張、攻撃などに向かわせ、ストレスの多い状況において重要となります。副交感神経は、身体を休ませる方向に向かわせ、リラックスや体の修復をしている時に重要となる神経です。
これらの働きを具体例で示すと、例えば心拍数は自律神経が制御しており、安静時は1分間に約60回から80回くらいの心拍が、運動や緊張などによって100回から150回くらいに簡単に増えます。この状態は、交感神経の緊張が副交感神経の緊張を上回っていると考えられます。
逆に睡眠中などは副交感神経優位となり、心拍数の変動幅の中では最低に近い値となるでしょう。自律神経とは、このように意識しなくても身体や周囲の状況に応じて、身体をより適切な状態にしようと働くのです。しかし、自律的自動的に働くために、かえって病状の悪循環を招くということもあります。例えば慢性疼痛という病態では、交感神経の緊張が関与して疼痛部位を中心に筋肉を緊張させるため、血流が悪くなり、疲労物質が滞留、皮膚温が低下して疼痛が増し、そのため更に筋緊張や血流低下が生じる、という悪循環に陥ることがあります。
このような状態になってしまうと、本来なら自動調整される自律神経を、半ば意識的に交感神経の緊張を除くようコントロールして、身体の状態を適切な状態に保つことが必要になります。しかし時には本来のバランスを取り戻すことにつながります。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身相関(その2)

心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身相関」の2回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】「こころ」と「からだ」の関係は、専門的な言葉では「心身相関」です。
心身相関は心療内科・心身医学の重要な基本概念で、その中のいくつかについて述べたいと思います。
私たちのこころもからだも常に変化していて、固定したものではありません。生きるということは変化するということ。ついさっきまで悲しんでいたかと思うともう笑っているし、それに伴って身体の状態も必ず変化します。
身体の状態も刻々と変わっています。昨日の体調と今日の体調が違うのはもちろん、筋肉が緊張したり緩んだり、心臓は常に動きながら速くなったり遅くなったり、胃腸の状態もどんどん変化します。そして、身体の状態がよいと気分もよくなるなど、身体の変化はこころの変化を伴います。
「こころと身体の法則」の著者、ジョン・A・シンドラーは、自律神経系や内分泌系(ホルモン)を通して感情が如何に身体に影響を及ぼすかを説明し、「身体的変化を起こさない感情はありません」と述べています。
〖心身相関の例〗
心療内科・心身医学でよく引用される例として<うるし(漆)アレルギー>の話があります。うるしの木の下を通るだけでアレルギーが出るケースで、うるしではなく他の木だと暗示をしてうるしの木の下を通ったら、アレルギーはでなかった。しかし他のうるしではない木を、「これはうるしだ」と暗示を与えて通ったら、うるしのアレルギーが出たという実際の例です。
日本人に昔から多い「神経性胃炎」、今日では「機能性ディスペプシア」と言われますが、胃は最もストレスの影響を受けやすい臓器の一つです。いわゆるストレスが重なると、胃酸が増えたり、胃の動きが悪くなって胃酸が停滞してたまりやすくなったりして、胃炎や胃潰瘍が起きやすくなります。
このように、こころと身体は密接な関係にあることはよく知られています。そもそもこころと身体は「密接な関係」というより、「同じものを別の角度からみているようなもの」だという考え方さえあります。東洋医学や仏教では「心身一如」といわれます。いずれにしてもこころと身体は表裏一体の分けられない関係であることは間違いありません。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身相関(その1)

心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回から「心療内科と心身相関」というタイトルで、心療内科について詳しく触れたいと思います。
心身相関は、心療内科の基本コンセプトの一つであり、心理と生理の作用、活動が相関関係にあることを示すものです。こころと身体は一体であり、分かち難い不可分の関係があることは常識と言って良いと思いますが、身体的変化を起こさない感情はない、と言えるほど、実際にこころと身体は密接な関係にあります。
身体とこころを結ぶルートとしては、自律神経系、内分泌系、免疫系の3つが挙げられます。この3つは協調しながら生体恒常性の維持に貢献しているため「ホメオスタシスの三角形」として扱われることもあり、個々別々にも、種々研究されています。
自律神経は、生命を維持するための、血液循環、呼吸、食物の消化と吸収及び排泄、体温の調節などの機能を、自動的にコントロールしています。交感神経系と副交感神経系の2つの神経系で構成され、この両者の作用は、一般に拮抗的に働きます。交感神経は、活動、緊張、攻撃などに向かわせ、広義のストレスの多い状況において重要となります。
副交感神経は、身体を休ませる方向に向かわせ、リラックスや体の修復をしている時に重要となる神経です。内分泌系は、血管やリンパ管にホルモンを分泌して、身体の機能を調整しています。ホルモンはほんの僅かな量で作用するので、ちょっとでもバランスが崩れるだけで、病気になってしまいます。
過度なストレスには敏感に反応して、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌量を増やすことが知られています。免疫系は、様々な外敵から身体を守る防衛システムで、体内へ侵入した異物を排除します。しかし、不安抑うつなどの精神的ストレスを受けると、この防御機能の働きが衰えて抵抗力が弱まり、疾患に罹りやすくなる、ということが知られています。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身症(その14)

皆様、こんばんは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の14回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】平成8年(1996年)に『心療内科』の標榜が認められ、現代社会のストレスから生じるさまざまなメンタルヘルス疾患を治療する専門科として認知されるようになりました。
人間は、誰しも家庭、職場、学校などでの人間関係、親子の葛藤、経済問題、将来への不安などに悩み、葛藤、悲しみ、憂い怒りなどさまざまな心理的な問題に突き当たります。私たちの体はそれらの心理社会的ストレスに微妙に反応し、さまざまな身体症状が出現してきます。
軽い内は肩や首のこり、めまい頭痛食欲不振不眠症などの症状ですが、それが解決されないまま進行すると気管支喘息、過敏性腸症候群、高血圧、糖尿病、胃潰瘍などといった病的な状態にまで発展します。
心身症に罹りやすい人は、性格面で次のような傾向があると言われています。
まず一般的に、周りに気を遣いすぎて頼まれるとイヤとは言えない、というタイプの人が多いようです。そして、高い理想に向かってひたむきに突き進むタイプ、自分にも他人にも同様に厳しいタイプ、やると決めたら徹底的にやらないと気がすまないタイプ、毎日の日課などの決め事は何があっても変えないタイプ、他人に頼まれると自分の事は後回しにしてしまうタイプ、感情を表現するのが苦手なタイプ、体調の変化に鈍感なタイプ、などです。
このタイプの人には、自分の感情や身体の感覚に鈍感、感情を表現することが難しい、自己の内面へ眼を向けることが苦手、といった特徴があります。感情への気づきや表現が乏しいと、抑圧された感情が内面にたまりやすくなり、徐々に身体症状化することになります。
「全て順調です」「問題はありません」などと言いながら説明できない身体的症状が継続している人達の背景には、この様な病態が隠れていることがあります。こんな場合は感情を少しでも表出できるようサポートすることが大切となります。メカニズムとして、不安や不満などの感情を意識的に認識し表出する代わりに、身体で表現してしまうのではないかと考えられています。
心療内科はこれら、心理社会的背景を有するメンタルヘルス疾患に対し、心理的側面からのアプローチを含めた治療を行っております。
心理面へのアプローチが必要とされるときは、臨床心理士などのこころの専門家との共同診療体制を組むこともあります。専門的心理療法としては、カウンセリング、交流分析(人間関係や自我状態の歪みから生じるストレスの修正)、自律訓練法(リラクゼーションを通して心身の調整をはかる)、認知行動療法(行動を規定する要因を探り、認知の歪みを修正し正しいストレスの対処法を身につける)などがあり、ケースによって適用されます。
なかなか一般的な治療では良くならないことが多く、最近の社会ではこのような『心身症』が増加しつつあり、こころの健康(メンタルヘルス)が重要視されるようになってきました。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身症(その13)

皆様、こんばんは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の13回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】人間には元々、環境などの変化に上手く適応できるよう、心身にストレスがかかるとダメージが一定の範囲を超えないように自動的に調整して心身を防御する仕組みが備わっています。ストレスがかかれば誰でもストレス反応が生じますが、その内容や程度は人それぞれ異なり、ストレスの受け止め方も当然異なります。ストレスによるダメージが一定の範囲を逸脱し、身体反応が病的に現れたものを心身症と呼びます。
心身症は、特定の症状をもつ疾患の名称ではなく、呼吸器系、消化器系、循環器系、内分泌代謝系、神経系、泌尿器系、皮膚系など、診療対象となる様々な身体疾患の中に含まれるものですから、具体的に心身症の割合がその内のどの程度になるかは、正確には分かっておりません。
しかし、例えば内科の場合は、受診患者様の少なくとも30%程度は、心身症として扱って治療を行わないと治癒しないと言われています。そして残りの70%のうち約半数程度は、心理的な治療を行うことで更に症状が軽くなる可能性があると言われています。
心理社会的ストレスによって病状が変化する、一般的な医学的治療を受けてもなかなか改善しない、などの特性を備えた心身症に対しては、一般的な内科的治療に加えてストレスを軽減し体の恒常性を回復させるための心身医学的な治療法が必要です。抗不安薬抗うつ薬、自律神経調整薬、漢方薬などを組み合わせて使いながら、ストレスの原因となる環境、対人関係、個人のパーソナリティーの問題、ストレスに対する感受性などを考慮に入れた治療法も行われます。
心療内科では『心理社会的要因より生じた心身症についてストレスと病気との心身相関を探り、その治療と対策、予防など人間のこころと体の関係について総合的治療を行う科』といえます。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身症(その12)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の12回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】心療内科では、「心身症」という病態(病状)を示す患者様に対して、心身医学的なアプローチ〈心身医学療法〉を行っています。
心身症がどういう病気かは、“心身医学の新しい診療指針”(日本心身医学会教育研修委員会編、1991年)において決められています。それをわかりやすく言い換えると、
身体の病気の中で、発症やその後の経過に心理社会的な要因が密接に関係しているものを心身症といいます。ただし、神経症うつ病などの病気は心身症とは呼びません」、となります。
「心理社会的な要因」というのは、例えば性格(神経質等)や行動パターン(いつも他者に合わせてしまう等)、ストレス(配偶者の死、借金、仕事の忙しさ等)などのことです。
例えば、気管支喘息はアレルギーの病気として主に内科で治療を受けます。しかし発症や経過の様子を詳しく調べてみると、心理社会的な要因が関係していることが明らかになる場合があります。ある患者様は、小学校や中学校に入学するなど新しい人間関係を作らなくてはならない状況で、決まって喘息発作が頻発していました。この場合入学という「社会的」状況の変化が、症状の繰り返しに関係していることが分かります。この患者様にとっては、新しい人間関係づくりがストレスとなって症状を形成していました。
このように病気の始まりや経過に心理社会的な要因が関係しているときに、その病気を「心身症」といいます。心理社会的な問題は、人のこころの中で葛藤状況を生じさせ、脳や神経の働きにも影響を及ぼすことがあります。心身症ではこうした精神的に不安定な状態が身体症状として現れていると考えます。さらに複雑なことに、身体的な不調もこころの働きに影響を及ぼしますので、心身症ではこころと身体の複雑な相互作用を念頭に置いた治療が必要になります。
主な疾患についての説明をします。
消化器系の心身症
機能性胃腸症、過敏性腸症候群、心因性嘔吐症など。
内分泌・代謝系の心身症
糖尿病、甲状腺疾患、肥満症、摂食障害など。
呼吸器・アレルギー系の心身症
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、睡眠時無呼吸症候群など。
神経筋肉系の心身症
書痙・斜頚、慢性頭痛など。
循環器系の心身症
高血圧、起立性調節障害など。
その他の心身症
疼痛性障害(慢性疼痛)、心因性発熱(psychogenic fever)、慢性疲労症候群など。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。