森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック 院長の藤田です。
今回のテーマは「バリウムの慢性胃炎は経過観察でいいのか?」
現在 胃がん検診として40歳を超えると年1回の胃バリウム検査が勧められています。
その中で「慢性胃炎」(他にも萎縮性胃炎や粘膜不整などと書かれることもあります)を指摘される方は多く、判定が「経過観察」と書かれることがあります。
一方で検診のコメントをよく見ると「ピロリ菌疑い 調べておくように」「消化器内科を受診するように」と書かれていることもあります。
経過観察で本当に大丈夫でしょうか?
結論としては、経過を見ている場合ではありません。
「慢性胃炎」「胃小区の乱れ」など胃炎の結果がでていた場合は、胃カメラを受けてピロリ菌の検査をしておきましょう。(ピロリ菌を調べたことがない場合)
なぜなら 慢性胃炎のほとんどがピロリ菌感染によるものであり、ピロリ感染による萎縮性胃炎はは胃がんになりやすいからです。
1994年WHO(世界保健機関)はピロリ菌を「確実な発がん因子」と認定しました。
また、すでに胃がんになっている可能性があります。
●慢性胃炎とは
慢性胃炎とは、字のごとく慢性的に胃炎があるもので、胃もたれや胃痛などの症状が続く場合や、内視鏡やバリウム検査で胃炎が続いていることを言います。その慢性胃炎の原因のほとんどは、ピロリ菌であると分かってきたことより、今は「ピロリ菌によって胃炎がつづいている」状態を慢性胃炎と言います。また慢性胃炎があると粘膜ひだが萎縮して消えるため「萎縮性胃炎」とも言われます。
●慢性胃炎の原因
慢性胃炎の原因のほとんどはピロリ菌です。ピロリ菌は2~5歳くらいに、口から入ってきて、それから胃の中に棲み続けて(自然排泄されることはほとんどない)胃炎を起こし続けます。
つまり30歳の慢性胃炎では、25年以上のピロリ菌感染が疑われます。
ピロリ菌以外にも、自己免疫性胃炎や、鎮痛剤の長期服用による胃炎、ストレス、自律神経の乱れによる慢性胃炎もあります。
ここで大事なことは「ピロリ菌が胃がんの原因である」ということです。逆に言えば、それ以外の慢性胃炎はそれほど胃がんの心配をしなくても良いのです。
●ピロリ菌について
ピロリ菌は小児期にどこからか胃の中に入り、そこから慢性胃炎を起こします。慢性胃炎を起こすと、本来ヒダだらけだった粘膜のしわがなくなってきます。それを「萎縮性胃炎」と言います。
バリウム検査では「萎縮粘膜」と書かれたり「胃小区の乱れ」などと書かれることがあります。
ピロリ菌は自然に排出されることはなく、抗生剤を使って除菌する必要があります。
現在の治療薬では約96%の方が除菌治療で除菌成功します。また、一度除菌できれば、大人で再感染する可能性はほとんどなく(年率0.2%程度)それ以上胃炎が進むことを防止してくれます。
●萎縮性胃炎と胃がん
ただし、一度萎縮してしまった粘膜は除菌しても元に戻ることはありません。そして、それは「胃がんになるリスクが残っている」ということを意味します。除菌治療は、胃を元に戻す治療ではなく、「これ以上胃を悪くさせない」治療だと理解いただきたいと思います。
先日の学会報告でも、除菌後20年フォローしていると比例して胃がんが見つかることが報告されています。もちろん除菌しないと胃がんのリスクはさらに高まります。
●胃カメラの必要性
では、バリウム検査で慢性胃炎(萎縮性胃炎)が指摘されたら、ピロリ菌を調べて除菌したらいいんじゃないか? という意見が出てきそうです。実は、その前に「胃カメラ」をしておく必要があります。それはなぜか? すでに胃がんになってしまっている可能性があるからです。
バリウムを受けているから胃がんはないんじゃないのか?と思われる方もいるかもしれません。注意することは「バリウム検査では、早期の胃がんはほとんど分からない」のです。胃がんがないか、の最終診断は胃カメラによって決まります。
そしてこの「胃カメラを受ける」という条件こそが、ピロリ菌治療の保険適応の指標となっています。胃カメラを受けて胃がんがないことを確認した人は除菌治療は保険適応になります。逆に、胃カメラが怖いから…などで胃カメラを受けていない場合は、除菌治療やその診察代、その後の除菌判定検査は全て自費になります。
●結論
つまり、バリウム検査で慢性胃炎、萎縮性胃炎が指摘された人は、経過観察などは絶対にしてはいけません。胃カメラを受けて胃がんが無いかをまず確認すること、そしてその原因としてピロリ菌に感染していないかチェックしておきましょう。もちろんピロリ菌に感染していれば除菌治療も受けておきましょう。
ピロリ菌除菌後の方は萎縮性胃炎が残るため、バリウム検査は不要であり、定期的な胃カメラを受けておくようにしましょう。
(ピロリ菌に関しては、別のブログを参考にしてみてくださいね)
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2022年10月3日開院
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