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2021年 「スポーツ選手の怪我について」 – こじまクリニック 医師 小島 研太郎 先生

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今年は東京オリンピックの開催年ということで、スポーツ選手の怪我について、こじまクリニック 院長の小島 研太郎先生にお話をお伺いしました。

東京オリンピックの熱い戦いが終わりましたが、試合や練習中にケガをする選手も沢山いました。時々試合前に「痛み止め注射を打っての出場です」と解説者が伝えることがありますが、この「痛み止め注射」について教えてください。

まず、今回の東京オリンピックについては、コロナ禍という状況の中でいろいろありましたが、私は大変感動しました。いろいろと苦労の多かった選手・関係者には、賞賛の拍手を送りたいと思います。

(本題に戻って)
「痛み」についてですが、「痛み」というのは神経が走っているところに生じるもので、例えば骨自体には神経がありませんので骨から直接痛みを感じることはないのですが、骨の周りにある「骨膜こつまく」にたくさん走っている神経が痛んだり、筋肉の神経が痛んだりします。また、「痛み」というのは、他覚(他人が感じる感覚)ではなく、自覚(自身が感じる感覚)であり、人によってその感覚は違います。

「痛み止め注射」については、ペインクリニックでは「神経ブロック法」という言い方をします。「神経ブロック法」とは、神経を一旦遮断して痛みを止める方法です。
スポーツ選手が打つ「痛み止め注射」は、「神経ブロック法」の一つである「トリガーポイント注射」といって、基本的にテーピングをしながら痛みのトリガーポイント(痛みを感じるポイント)に注射を打つことで、試合中一時的に痛みを和らげる治療法です。もし、完全に痛みをとってしまうと力が入らなくなり、動かなくなって競技自体ができなくなってしまいます。ですから、力は入るけれども我慢できる程度で痛みを緩和する治療法と思って頂ければ良いと思います。

この「痛み止め注射」については、トライアスロンなど一部の競技によっては、ドーピングとみなされる場合もあり、競技ごとにルールが違いますので、使う場合はよく確認された方が良いと思います。

スポーツ選手のメンテナンスにはどういったものがあるのでしょうか?

まず筋肉のメンテナンスには、局所を冷やす(アイシング)マッサージストレッチの3つの方法が考えられます。

局所を冷やす「アイシング」は15年ほど前に導入されたメンテナンス法で、現在では一般にも広まってきました。ピッチャーが投球後に肩から腕にかけて氷や冷却剤を当てている場面をよく見かけますね。
アイシングの効果として

  1. 患部(主に皮膚の表面)の温度を下げる。
  2. 局所の細胞の新陳代謝が上がり炎症が活発になることを防ぐ。つまりダメージを受けた組織が低酸素状態にならないようにする。
  3. 局所の炎症を抑えることで、それに伴う腫れや痛みを軽減する。
  4. 筋肉の緊張を和らげ、リラックスさせる。

があります。
組織はダメージを受けると、腫れたり、神経が興奮するので熱が出たりします。
痛みや腫れは炎症からくるものなので、炎症を抑えないと痛みや腫れが治まらないという考え方がベースになって進化した方法が「アイシング」と言われています。

ただ、アイシングを長時間し過ぎると体全体を冷やしてしまうことになります。そうなると、血液の温度も下がってきますのでしんどくなってしまい、回復もしません。ですから、アイシングを行う場合は肩とか肘とかを中心に、だいたい15分から20分ぐらいを目途にしましょう。それから、アイシングは体の表面の熱は下げますが、体の奥に熱(裏熱りねつ)がある場合はなかなか下げることができません。また症状やその方の体質によって痛みを緩和させるには温めた方が良い場合があります。当クリニックでは、その方の状態に合わせた治療を行っております。

次に「ストレッチ」についてお聞かせください。

ストレッチの効果としては

  1. 筋肉の柔軟性が上がり、関節の可動域が広がる。
  2. こわばりがほぐせる。⇒ダメージを受けた組織の血流を良くする。
  3. 副交感神経が優位になる。

があります。
運動をしている時には、交感神経が優位になり、アドレナリンが出て戦う体になっているので痛みを感じにくくなっています。運動が終わる時にストレッチをすることで、体のダメージを回復させる役割を果たす副交感神経を徐々に優位にし、急な痛みや疲れを感じることなく体全体をリラックスさせることになります。運動中に受けたダメージをストレッチによって回復させるのです。

※近年ではスポーツに対する考え方も、選手の体を極限まで疲労させて運動するという考えから、疲労の一歩手前で制限する、また、疲労を回復させて次に挑むという考え方に変化してきています。昔は何試合も一人で投げ抜いていた高校野球でもルールが変わり、一人のピッチャーの投球数に制限を設けて、選手の健康を守っています。それらによって、何人かの投手が継投する試合が多くみられるようになりました。東京オリンピックの野球でも投手に投球制限がありました。

最後に「マッサージ」についてお聞かせください。

マッサージというのは、皮膚に直接触れて末梢から中心に向かって圧迫することにより、静脈やリンパの流れを改善することです。
特にスポーツマッサージと呼ばれるものは、競技前に短時間(3~5分)緩い刺激を与えることによって筋肉を活性化させることや、競技後の心身をリラクゼーションさせる目的で行われています。
マッサージについては色々な意見がありますが、機械によるマッサージとは大きく異なり、人は他人から触れられることによって、メンタル的に大きなリラックス効果を得ることが出来ます。プロスポーツの世界でも導入されていますので、使い方によって心身のリラクゼーションとして十分効果が期待できるのではないでしょうか。

以上、スポーツ選手のメンテナンスは、アイシング、ストレッチ、マッサージの3つをうまく組み合わせ、複合的に用いることによって心身の状態をベストに保つことが可能となります。
プロ選手のようにトレーナーに依頼するのは難しいかと思いますが、現在では動画などで調べることもできますので、スポーツをなさっている方はご自分に合った方法で行うことも良いと思います。



――――――本日は、ありがとうございました。


お話を伺った先生:小島 研太郎 先生(こじまクリニック・大阪市此花区


【略歴】

  • 平成14年 近畿大学 医学部 卒業
  • 平成14年 関西医科大学 医学部 麻酔科教室 入局
  • 平成16年 河内総合病院 麻酔科 勤務
  • 平成17年 関西医科大学 医学部付属病院 勤務
  • 平成18年 関西医科大学 附属枚方病院 勤務
  • 平成23年 関西医科大学 附属滝井病院 勤務
  • 平成25年 松本病院 内科・麻酔科勤務
  • 平成27年 こじまクリニック 開院
  • 平成31年 医療法人知命会 設立

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