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2021年 「花粉症治療について」 – 医療法人 松田耳鼻咽喉科 医師 松田 泰明 先生

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花粉症治療について、松田耳鼻咽喉科の院長 松田 泰明 先生にお話しを伺いました。

まずコロナについて花粉症の前にお話をお伺いします。咳や発熱など症状はこの時期コロナでは?と心配になりがちですが、「コロナ」「風邪」「インフルエンザ」「花粉症」の症状はどう違うでしょうか?

コロナの患者さんによくある症状は、発熱・だるさ(倦怠感)が多いと言われています。すぐに解熱してしまったり、その後にしばらくしてから咳が出てくるというケースもあるようです。だるさや熱がそんなに出ていない場合もありますし、味覚障害や嗅覚障害だけの症状の方などもおられます。インフルエンザは急激な発熱、最初から咳をする場合もあります。しかしながら、症状だけではコロナなのかインフルエンザなのかの判断は難しいのが現状です。幸いに現在のところインフルエンザの流行は確認されていません。花粉症、アレルギー性鼻炎は発熱がなく全身症状がありません。

コロナ感染予防としても見かけがスマートな花粉症のマスクが売れてるようですが、マスクの予防効果はどうでしょうか?

マスクの網目がサッカーゴールのネットだとしたら、ウイルスは米粒ぐらいのサイズだそうです。マスクをしていれば100%安全というものではないのですが、ウイルスを含んだ飛沫の拡散を防ぎ、マスクをすることにより飛沫を吸い込むことを減少させる効果はありますから、マスク装着の予防効果はあります。この件に関しては、海外の論文でも証明されています。

花粉症治療でも行われる鼻汁吸引について教えてください。

鼻汁吸引する器具には色々な種類があります。昔からあるのは金属製です。曲がらないので少し痛がる人がいます。

痛がる人には柔らかいシリコン製を使用します。シリコン製は子供に使う場合もありますが、ほとんどは耐熱ガラス製のものを使用しています。花粉症で炎症を起こして鼻腔内が腫れている場合、金属製は真っすぐなので当たると痛いこともありますが、シリコン製のものは鼻の穴に合わせて曲がるので奥まで吸えます。

鼻は一人ひとり形状も異なり、個人差が大きいです。きちんと鼻の形状や広さ、状態を見てどこにすき間があるかを確認しながら痛みの少ない様に差し入れます。鼻の状態によっては、薬液により鼻粘膜を収縮させて奥まで差し入れ吸引します。吸引の後はスッキリします。

ネブライザー(吸入治療)で使う薬は決まっているのでしょうか?

人ひとり違うのではなく、保険診療では使用する薬剤が決まってます。アレルギー性鼻炎の場合はステロイド系の薬を、副鼻腔炎を併発していれば抗生剤も使います。

花粉症で来院される患者さんへ処方される薬はどういったものがあるでしょうか?

経口薬、点鼻・点眼薬、テープ製剤があります。一番多いのは、抗ヒスタミン薬を中心とした経口内服薬です。近年は、眠気の少ない薬剤が多く使えるようになってきています。ステロイドの点鼻薬を併用する場合が多いのですが、局所治療薬なので、全身的な副作用がほとんどありません。貼るタイプ(テープ製剤)は最近使用できるようになってきていて、皮膚から吸収されて効果が出ます。その他に舌下免疫療法も選択可能です。舌下免疫療法はスギ花粉症とダニアレルギーによる通年性アレルギー性鼻炎にしか使えませんが、かなり効果が高いです。経口内服薬である抗ヒスタミン薬は、花粉・ほこり・ダニ等のアレルゲンが体内に入った時に免疫細胞が反応して出るヒスタミンによる症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり・かゆみ)を抑える為、どんなアレルギーの原因にも使用できます。舌下免疫療法はスギ花粉とダニを原因とするアレルギー性鼻炎に効果があります。反応を起こす原因物質(アレルゲン)が解っていますので、そのアレルゲンを少しずつ体に入れ免疫細胞に作用し、アレルギー反応が起こりにくくする治療法です。アレルゲン免疫療法とも呼ばれています。治療は舌の裏側にラムネの様な薬を置き、ジワッと溶かします。但し、少しずつ慣れさせていくので花粉症の時期だけではなく、花粉の飛んでない時期も毎日続ける必要があります。期間は大体3年~5年です。一旦5年で終了しますが、終了後も効果は残ると言われています。

舌下免疫療法を行っているスギ花粉の患者さんには、内服薬や目薬なしにシーズンを乗り切っている人がいます。年々効果が出る治療法です。症状が出た場合にはその時だけ内服薬を追加で使用します。ダニアレルギーの患者さんも鼻詰まりが減り「今年は楽やね」とおっしゃられる患者さんもいます。レーザーで焼却する方法もありますが鼻の粘膜を焼いて反応しにくくするので、どちらかと言うと鼻詰まりの人に効果がある方法です。根本的な治療ではないので個人的には積極的にはお勧めしていません。一時的に楽にするのであればレーザーでも良いと思いますが、元に戻ってしまうことも知った上で治療を受ける方が良いと思います。本格的に鼻詰まりの手術治療するのであれば、入院の必要がありますが、ちゃんとした手術があります。その方が、治療効果が長く続きます。あともう一つ、去年から重症・最重症のスギ花粉症に対し、皮下注射薬が出ました。抗IgE抗体薬(抗体を人工的に作って薬にしたもの)です。対象の患者さんは、今までの治療で効果がなく、血液検査でIgEが高い重症な方だけです。アレルギー反応を引き起こすIgEを直接ブロックするのですが、難点は治療費がすごく高いので他の治療で効果のない場合に選択されると良いと思います。

ヨーロッパでワセリンを鼻の入り口や目の付近に塗ると、花粉がワセリンで止まり、ある程度防げるという情報もありますが、先生の見解はいかがでしょうか?

そんなに効果はないのではないかと思います。花粉は PM 40と大きな粒子なのですが、花粉は鼻の中の水分や涙によって弾けるんですね。スギ花粉から弾け出た非常に多くの小さな粒子がアレルギー反応を起こすと言われてます。ワセリンにスギ花粉が付着しワセリンの水分で弾け出た粒子により、逆に皮膚炎を起こす場合もあるので、私はあまりお勧めしません。ワセリンよりもマスクをした方が確実に抑えられるのでマスクをお勧めします。また鼻栓は鼻づまりの状態を作ってしまい、口呼吸になってしまいます。鼻には、鼻から入ってきた空気を「加湿する」「鼻から吸った空気の温度を上げて体内に取り込む」「匂いを感じる」などの働きがありますが、それらを邪魔してしまいます。鼻に栓をして鼻づまりの状態を作ることはあまりお勧めできません。今コロナ対策としてマスクを使用していますが、マスクも多少鼻づまりの状態を作っていますので結構口呼吸になっていると思います。花粉症のシーズンであれば、屋内で、人がいないところではマスクを外して鼻でしっかり息するのがいいと思います。

他に何か耳鼻科の病気について自由にお話しください。

妊婦さんや授乳中のお母さんは薬を我慢してしまう人が多いと思います。妊婦さんはある程度制限がありますが、授乳中のお母さんは特殊な薬を除いてほとんど赤ちゃんに影響することはありません。風邪を引いた時には使える薬がたくさんありますので、薬を我慢せず、きちんと受診をして治療された方が良いと思います。医師に遠慮なく相談してください。例えば花粉症でも妊婦さんは少し我慢してもらわないといけませんが、治療のガイドラインでは、ステロイドの点鼻薬は5ヶ月過ぎたら、症状の酷い時には使っても良いと言われています。かかりつけの産科の先生と相談して使用してもらうこともあります。

最近は、ドラックストアで花粉症の薬を購入する方が増えています。気を付けていただきたいのは、市販の点鼻薬を使いすぎないようにしていただきたいことです。連用により薬剤性鼻炎を起こしている方が非常に多く見受けられます。市販の点鼻薬には血管収縮剤が含まれているものが多く、使い過ぎによりむしろ更に鼻詰まりを起こしてしまいます。我々が使用する医療用のステロイド点鼻薬にはそのような副作用はありません。従って、症状があれば早めに受診していただき、正しい薬剤を正しく使用していただきたいと思います。
仕事や育児などで忙しい方も多いと思いますが、当院ではスマホやパソコンを使ったビデオ通話によるオンライン診療にも取り組んでいますので遠慮なくご相談ください。

最後に花粉症対策は治療よりもセルフケアが大切です。時々聞く話ですが、花粉症の人が、良い天気だからと外で洗濯物を干したり布団を干してしまって、外では平気だったのに帰宅したとたん家の中で調子が悪くなる方がおられます。花粉は山から何十キロもかけて飛んできます。日が昇って、朝方に花が開き気温上昇とともに花粉を飛ばし、気温が下がる夕方まで続きます。その花粉が都会に到達するのはお昼前からです。都会はアスファルトだらけですので、花粉が地面に落ちても車が舞い上げてしまいますから、夜8時~9時頃まで大気中に残り漂(ただよ)い続けます。花粉が少ないのは、人や車の動きが少ない深夜から早朝になります。

花粉症対策
花粉症のシーズンは天気が良くても我慢して洗濯物や布団を干さない、窓を開けるのはできれば早朝に。
買い物などの外出はなるべく花粉の飛散の少ない午前中にする。
スギ花粉は床に落下しやすいので、室内の花粉は掃除機で吸い取るより雑巾がけする。
マンションなどでは花粉が入ってきやすい換気用吸気口にフィルターを装着する。

近年の住宅環境の変化により、室内の気密性が良くなっています。その代わりに、一旦花粉が室内に入ってしまうと、なかなか花粉が減ってくれないという困ったことになります。ですから、花粉を室内に入れないようにする習慣を身に付ければ、薬の効果を高めたり、薬の量や種類を最小限度にすることができると思います。少なくとも家の中ではかなり楽になると思います。家の中の環境は努力してもらえば結構花粉の量を減らすことができると思います。花粉症ではない家族も協力して花粉症の人のために協力してあげるとかなり楽になると思います。もちろん、外出の際にはマスクをしましょう。


――――――本日はありがとうございました。

お話を伺った先生:松田 泰明 先生(医療法人 松田耳鼻咽喉科・大阪市鶴見区

【略歴】

  • 1987年 大阪市立大学医学部卒業
  • 1987年 大阪市立大学附属病院耳鼻咽喉科研修医
  • 1993年 大阪市立大学院医学研究科修了 医学博士取得
  • 1993年 大阪市立城北市民病院耳鼻咽喉科
  • 1993年 大阪市立総合医療センター耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科
  • 1996年 松田耳鼻咽喉科 院長

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