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2018年 「5月病、6月病とその対策」 – 八杉クリニック 医師 八杉 誠 先生

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5月病、6月病とその対策について、八杉クリニックの院長 八杉 誠 先生にお話を伺いました。

長く苦しい受験勉強から解放され意気揚々と大学に通い始めたの新入学生が、連休が終わるころ何となく無気力になるのを「5月病」、卒業して会社に入り新人研修を終え配属先で責任を持たされ始めた新社会人が「このままやっていけるのだろうか」と悩んだり元気がなくなったりするのを「6月病」と呼んだりしていますが、実際にはどのような状態を病気と診断されるのでしょうか?

まず、顔色が悪い。声も沈んでいて活力を感じない。勤務においては、遅刻が多くなる。会社の周囲の人もこれらを感じる。
つまり、このような他覚症状が現れます。

自覚症状としてはどんな状態なのでしょうか?

朝なかなか布団から出られない、食欲も減退、便秘になる人もいる。自律神経がおかしくなるので、どこかしら体調が悪くなる。朝から疲れを感じたりする。
元気な人でも、夕方には疲労感がありますが、エネルギーが高いはずの朝から体がだるいと感じます。他にも肩が凝るとか、あちこちに痛みを感じるようになります。動悸、めまい、頭痛や冷や汗が出たりする人もいます。そして、心の方は小さなことでも不安で不安でたまらなくなります。日中やたら眠たくなったり、夕方になると逆に職場から家に帰るのがイヤになったりします(帰宅困難)。家に帰った後も晩御飯を食べる気になれなかったり、眠れなかったりしますので、そういうことがますます疲れをためて行きます。食欲減退、不眠などで心身両面の蓄積疲労から抜け出せません。

治療はどのように行われますか?

色々なケースがありなかなか難しいのですが、一つは職場環境の改善があります。例えば上司と部下、会社の方針とお客様の要望などとの板挟みになってしまって、悩んでいる状況を、上司が把握できればその状況を改善するように関わることができます。そのためには、普段から部下の話をしっかり聴いてあげたり、日常の様子をよく見てあげるなど、愛情を持って部下と接することが大切です。

新人は先輩が残っているとなかなか自分だけ先に帰るのは難しいので、残業が多い場合は早く帰宅できるよう「○○君、たまには一緒に帰ろう」などと助け船を出します。

他にも仕事以外の趣味を持たせるとか、継続的なスポーツなどを勧めるなど、仕事そのもののアドバイスとともに特に社会人一年生には生活面でのサポートも必要だと思います。スポーツでもしっかり汗をかくようなものは、ストレスの解消、心の病の予防としては大変効果的です。

精神疾患には、薬で治す方法もありますが、最初からそれに依存するのは良くないと考えています。ひどくなる前に、できるだけ周囲の協力を得て改善するよう本人も努力してもらえると良いと思います。

そのためにも、できるだけ体を動かして汗をかいてほしい。

予防するためにはどのようなことを心掛けるとよいですか?

先ほどとダブりますが、とにかく体を動かすこと。それと、家族、同僚などと良い関係をつくること。一人で辛さを抱えるのではなく、周りに元気づけてもらえるように自らも頑張ってコミュニケートしてほしい。周りの人もそこに協力してその人が温かい人が周囲にいることを気付いてそれを心のエネルギーにできるよう関わって下さい。

また、頑張りすぎるタイプの人は、張り切り過ぎていわゆる燃え尽き症候群になったりするので、自分にとって適度な頑張りの加減ができるよう自覚の能力を養うことが必要かと思います。周りの人もその辺を感じたら、本人に声をかけてあげるとか。

その他、職場でのストレスを減らすためにアドバイスをお願いします。

入社前に仕事が自分にピッタリ合っているかどうかを見極めることが大事なのですが、現実的にはその職場で実際に働いてみるまで分かりません。「こんなはずじゃなかった」と感じるのはごく普通だと思います。ですから、大きく落ち込む前に、時々本人から仕事との相性を聞いてあげる気遣いは上司にとって重要だと思います。

また、普段の生活(プライベートタイムを含めて)でスマホの見過ぎに注意してほしい。特にSNSなどは、自分勝手な書き込みで相手を攻撃し相手の不安をあおる人が沢山いる。気にしなければ良いですが、自分に対する書き込みはどうしても気になって見てしまう。その結果自分でネガティブな過剰反応を起してしまうので、普段からSNSなどをできるだけ見ない方が良いのではないでしょうか。また、普段から上司が部下に対して自分の辛かった経験談などを話しておくのも必要だと思います。仕事の上で壁を感じたり、ストレスが多くなった時でも「自分一人だけが不幸な目にあっているのではないんだ」と思い直して自分で自分を元気づけられるよう、上司が意識して関わりを持っておくことが大切だと思います。

逆に、普段からの関わりが少なく信頼関係ができていない状態で、「元気ないぞ、もっと頑張れ!」と激励してもかえって逆効果になったりするので普段から部下に対して元気づけを行うことが大事です。職場環境を改善する点からは、上司次第でかなり心の病は防げると思います。


――――――本日はありがとうございました。

お話を伺った先生:八杉 誠 先生(八杉クリニック・大阪市北区

【専門医・資格等】

  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定スポーツ医
  • 大阪府内科医会認定推薦医
  • 日本臨床内科医会認定医
  • 日本臨床内科医会専門医
  • 元大阪府保険医協会副理事長
  • 元大阪府保険医協会税務経営部部長

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