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2014年 「5月病、6月病について」 – いとうメンタルクリニック 伊藤 毅 先生

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5月病、6月病について、いとうメンタルクリニックの院長 伊藤 毅 先生にお話しを伺います。

まずは5月病、6月病について教えて下さい。

5月病、6月病は、適応障害、または過度のストレスによる反応性うつ病と診断されることの多いストレス関連疾患と考えられています。軽度のうつ病との区別がつきにくく、診断が難しいケースも数多く存在します。

適応障害というのは、過度のストレスに慢性的にさらされることによって引き起こされるストレス障害の一種です。ストレス量に対応できなくなり、抑うつ気分、不安、焦燥感が著名になり情緒不安定に陥ってしまうものです。4月になり、入社、入学などで新しく慣れない環境下で多忙な生活を送った後に、ゴールデンウィークによる長期休暇で一気に気が抜け、その後仕事や大学などに行けなくなることで5月病と呼ばれるようになったのではないでしょうか。

では4月から5月にかけて負担となるストレスについて教えて下さい。

新生活、新たな環境に関する事がほとんどだと思います。また春の陽気で精神的にバランスが崩れる人も多いように感じます。

季節性のうつ病は秋冬に多いのですが、春は新生活が始まることによる環境変化への対応がやはりストレスになるのでしょう。

5月病、6月病や燃え尽き症候群など新入生や新社会人が陥りやすいということですが、陥らないようにするためには、毎日どんな心構えで臨めば良いでしょうか?

まず、燃え尽き症候群は新社会人が陥りやすいという印象ではないですね。過度のストレスを抱え続け適応障害に陥り、それでも頑張り続けた結果、最終的に陥るものが燃え尽き症候群と考えてもらえばわかりやすいでしょうか。よりうつ病に近い、反応性うつ病と言った方が良いかもしれませんね。5月病、6月病とは違って季節性はあまり感じません。

このような状態に陥るのは、その人の性格や環境、ストレスの問題が複雑に絡まっており、毎日の心構えだけでどうにかなる問題かと言われると難しいですね。

実際、例えば新社会人に「頑張りすぎるな」と言っても、「今やらずにいつ頑張るの?」と言われてしまうとどうしようもなく、有効な手立てはあまり思いつかないですね。ただ、ひとつ言えるとすれば、規則正しい生活は大事だと思います。新しい環境で新人歓迎会などの付き合いも多くなり、ついつい無理をしてしまう事もあると思うのですが、睡眠不足や日々の疲れはメンタルに影響するので、次の日に疲れを残さないためにもしっかりと寝て、生活を不規則にしないようにする事は大切です。特に会社はなかなか選んで入社できるものではないでしょうから、新しい環境にどのように適応していくか、ということは非常に重要だと思います。

最近ではサザエさん症候群、ブルーマンデー症候群等も話題になっていますが、現在の日本が抱えるストレス社会とうまく付き合っていくためのアドバイスはありますか?

確かに現代の日本社会はストレス社会とも表現されているように、ストレスの原因となるストレッサーにあふれかえっています。これは私個人の印象ですが、先行き不安や対人関係からストレスを感じている人が多いですね。

人は、自分の欲求を満たすための行動を起こしますが、なんらかの原因によってその欲求を満たすことができないと、不愉快な気分になり不安や緊張を感じます。俗にいうフラストレーションですね。これがストレスとなり、さまざまな障害を引き起こします。このようなストレスを感じやすい人は、完璧主義者や、個人主義でひとりよがりの考え方の持ち主の人が多い印象を受けます。さらに言うと、今まで親や社会に過度に守られて生きてきたために、自分でストレスへの対処法を構築できずに大きくなった若者が増加しているなと思います。

アドバイスとしては、仮に対人関係によるストレスを強く感じているようであれば、まずは相手を理解しようという意識が大切です。自分の気持ちをわかってほしいのに相手がわかってくれない、というフラストレーションがストレスになっていることが多いですが、それは相手にも同じことが言えます。お互いの思いやりが欠けている状態では、とてもじゃないがそのストレスを改善できるとは思えません。気持ちが沈んでしまい、とても相手の事を考え理解する余裕なんてない、という方には、状態によっては抗うつ薬や抗不安薬を服用してもらい、少しでも心に余裕が出来てから改めて対人関係について考えてもらうようにしています。

また、心を許している人(親、友人、恋人)に自分がストレスに感じていることや不安を話し、気持ちを共有してもらうことも効果的です。これだけでスッキリする場合もあるでしょう。仲間を作ることはとても大事です。

家族の誰かがうつや5月病、6月病かもしれないと感じる様な具体的な兆候について

具体的な兆候としては、不安、抑うつ気分のほか、不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感を訴えるようになります。また、女性に多いのは急にイライラする、なんでもない所で涙が出る、といった情緒の不安定性が増悪することですね。

5月病、6月病の場合、一番の治療法はストレスの原因からの回避やその改善になりますが、ストレスの原因が家庭外のことが多く、家庭だけで対処し解決することは難しいでしょうから、まずは受診をおすすめします。

食事や適度なアルコールの摂取は気分を和らげるのに効果的と言われていますが、実際に効果はあるのでしょうか?

飲酒量が多いか少ないかは個人差があると思いますが、少量のアルコール摂取は確かに効果的だと思います。また、アルコールの摂取により寝つきも多少良くはなります。ですが、多量のアルコール摂取は睡眠を浅くし、睡眠の質を下げるために中途覚醒を引き起こすのでお勧めはできません。大勢で明るく楽しく飲む分には深酒もたまには良いかと思いますが、少なくとも連日一人で深酒するのは良くないでしょう。

やはり、外に出て日の光を浴びることや、気の合う仲間や家族、恋人に自分のストレスに感じていることや、不安なことを聞いてもらうという事の方が効果的かもしれません。

最後に、いとうメンタルクリニックでは5月病、6月病やうつ病の患者様に対してどのような診療をされていますか?

5月病,6月病の方へは、まずストレスの原因をある程度はっきりとさせ、その対処法について、抗不安薬などの投薬もまじえながら患者様と一緒に考えていくようにしています。

うつ病の方へは、まずは休むことをご提案し、同時に抗うつ薬などの投薬も開始し、元気になってから先のことを考えてもらうようにしています。


――――――本日はありがとうございました。

お話を伺った先生:伊藤 毅(いとう たけし)先生(日本精神神経学会 精神保健指定医)(いとうメンタルクリニック・兵庫県三田市

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