日本の医療は低下する一方である

ピピピ-、またファックスの音が鳴る。又か。毎日のように入る楽屋からの「欠品」の知らせ。注文した薬が手に入らないのである。必要な薬が患者さんの手に渡せないのである。しかも、患者さん達はこの現実を知らないのである。そしてその現況を仕掛け人の役人達も知らないのである。いやそれが狙い通りなのかもしれない。注文した薬のほぼ8割がまともに入らない原因はいくつかある。その主なものは大きく分けて二つある。
その一つが、日本の薬の安すぎる値段である。この4月にもあったが、毎年行われる「薬価改定(改悪)」において薬の低下がどんどん下げられてしまう事である。今や薬価が製造原価を下回ってしまって、薬屋がバカらしくなって、作らなくなってしまったのである。薬価を決めるお役人達は、そんなことはおかまいなしで、とにかく下げてしまえば、それで役目が果たせて、出世の元になるのである。

二番目に、製造過程に対する、余りにも厳し過ぎる製造認可制度の存在である。少しでも指定された項目から外れたり、とばしてしまったら、お役人さんたちは、鬼の首でも取ったかの如く飛びつき、簡単にその後の製造を認めなかったり、製造過程の新たな管理体制を求めてくるのである。もともとギリギリで製造していたものに新たなコストをかけるとなると、製薬会社としては、またまたバカらしくなって、これも作るのをやめてしまうのである。

このように、立派で非常に役に立っていた優秀な薬が、どれだけ姿を消してしまったことか。「健康」食品などはろくな検査も受けずに楽々と雨後の筍のように、増えていっているのにである。紅麹のように事故を起こしながら。

これまでの、世界に誇る医療を作り上げてきたのもお役人、それを盲目的に潰しにかかっているのも、お役人。一般国民はその現実を何も知らないのである。そして何とか、工夫して、回り道をしながら、患者さんに最良医療を提供しようとしているのが、我々医者達である。

いつかこの役人達の、机上の空論による悪の連鎖を止められないであろうか。現実を見て欲しいのである。

2024年4月20日 八杉 誠






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