日別アーカイブ: 2025年6月11日

男性不妊の代表的な原因「精索静脈瘤」を徹底解説

男性不妊の代表的な原因「精索静脈瘤」を徹底解説

こんにちは。京都市にあるいちおか泌尿器科クリニックです。

当クリニックでは、一般的な泌尿器科疾患をはじめとした幅広い診療を行っています。
泌尿器科や不妊の悩みは、人には相談しにくいと感じる方も多く、インターネット上の情報もさまざまで誤解が生じやすい分野です。
診察の場だけでは十分にお話しできない場合もあるため、このブログを開設いたしました。

この記事では、患者さんやそのご家族が抱える「ちょっと言いにくい」「専門用語が分かりにくい」といった不安や疑問に寄り添い、できるだけやさしい言葉でお伝えすることを心がけています。
治療に関する最新の研究結果に基づいた情報を交えながら、病気に対する恐怖心や不安を和らげられるよう、丁寧に解説してまいります。
もし、ご自身にあてはまる症状や疑問が見つかったら、どうぞお気軽にご相談ください。

はじめに:精索静脈瘤の原因を知る事で不安を解消しよう

不妊というと「女性側の問題」と誤解されることがありますが、実際には不妊の原因の約半数は男性側にあるとされています。
そのなかでも、比較的多く見られるのが「精索静脈瘤」です。
成人男性の約10〜15%に見られ、不妊症の男性ではその割合が40%以上とも言われています。

精索静脈瘤は放置していても命に関わる病気ではありませんが、精子の質に悪影響を及ぼすため妊娠を望むカップルにとっては重大な障害となることがあります。
原因を明らかにし、適切な治療を受けることで改善が期待できる疾患でもあります。

この記事を読めば分かること

  • 精索静脈瘤の原因と仕組み

  • 男性不妊との関連性

  • 気づきにくい症状と見逃しがちなサイン

  • 放置しておくとどうなる?進行によって起こりうるリスクや悪化の症状

  • 専門クリニックで診てもらうべきタイミング

精索静脈瘤とは?仕組みと発生のメカニズム

精索静脈瘤とは?仕組みと発生のメカニズム

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、男性不妊の原因としてもっともよく見られる病気の一つです。
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、実は一般の男性の約15%、不妊で悩む男性に至っては40%以上の方に見つかるとも言われていて、決して珍しい病気ではありません。

精索静脈瘤とは、簡単に言うと「精巣のまわりを取り巻く静脈が拡張し、こぶのようになってしまった状態」のことです。精巣の上には「精索(せいさく)」と呼ばれる管状の構造があり、その中には血管やリンパ管、神経、精管などが通っています。
このうち、血液を心臓へ戻す働きをしているのが「静脈」ですが、本来この静脈には「逆流を防ぐ弁」が備わっており、血液が下から上へと一方向に流れるようになっています。
何らかの理由でこの弁がうまく機能しなくなると、血液が逆流してしまい、静脈の中に滞留することになります。
すると血管がだんだんと膨らんでしまい、やがては外から見たり触ったりしてもわかるほど拡張するのが精索静脈瘤です。

精索静脈瘤が起こる原因

精索静脈瘤が起こる原因

静脈の弁機能不全

血管の中にある「逆流防止弁」が先天的に弱かったり後天的に損傷したりすることで、血液の逆流が起こりやすくなります。

成長期の急激な身体の変化により、静脈の圧力が高まりやすい思春期以降に発症するケースが多いとされています。

 解剖学的な構造の影響

精索静脈瘤は圧倒的に「左側」に多く発生します。
これは左側の精巣静脈が腎静脈という太い血管に直角に合流しているため、血流が滞りやすいという構造上の特徴が関係していると考えられています。

生活習慣や姿勢の影響

長時間の立ち仕事や運動不足によって血流が悪くなると、静脈の中に血液が滞りやすくなり結果として静脈瘤が悪化しやすくなります。
特にデスクワーク中心の生活を送っている方や、運動習慣のない方は注意が必要です。

精索静脈瘤の厄介な点は、自覚症状がないまま静かに進行してしまうことが多いです。
外見上の変化が見られなかったり、痛みがなかったりすると、本人も気づかないまま長年経過してしまうことがあります。
そのため不妊の原因を調べるために精液検査を受けた際、はじめて精索静脈瘤が発覚するというケースも少なくありません。

なぜ精索静脈瘤は男性不妊の原因になるのか?

なぜ精索静脈瘤は男性不妊の原因になるのか?

精索静脈瘤があることで、なぜ「男性不妊」につながってしまうのでしょうか?

答えは精巣が本来の働きを保つための「温度管理」や「血流環境」が乱れてしまうことにあります。
精子はとても繊細な細胞であり、適切な温度と栄養環境が保たれていなければ、正常な形や運動能力を持った精子を作り出すことができません。

主な影響

精巣の「適正温度」が乱れる

私たちの体温は通常約36.5度前後ですが、精巣内の温度はそれよりも1〜2度ほど低い状態が理想的です。
この微妙な温度差が、精子を作る上で非常に重要な役割を果たしています。

しかし精索静脈瘤が起こると、静脈の血液がうまく排出されず、精巣の周囲に熱を持った血液が滞留するようになります。
すると精巣の温度が上昇し、精子の形成過程に悪影響が及ぶのです。

これは「温熱ストレス」と呼ばれる現象で、精子の数が減ったり、運動能力が低下したり、DNAが損傷したりする原因になります。

酸素不足と活性酸素の問題

血液の循環が滞ることで、精巣に酸素や栄養が十分に行き届かなくなるという問題も発生します。
酸素不足によって体内の「活性酸素」が増え、これが精子にダメージを与えることも知られています。
このようなさまざまな要因が重なり合うことで、精索静脈瘤が精子の質を低下させ、不妊につながることが医学的にも明らかになっています。

精索静脈瘤による血流の滞りや活性酸素の増加といった問題は、生活習慣の見直しや適切な医療的対応によって改善が期待できます。
近年では治療法も進歩しており、精子の質の向上や妊娠率の改善につながるケースも多く報告されています。

どんな症状があれば病院に行くべき?

精索静脈瘤は進行するまで自覚症状が出にくい病気ですが、いくつかのサインに気づくことで早期発見が可能です。

ご自身の体に耳を傾け、気になる症状があればなるべく早めに医療機関を受診することが大切です。
ここでは、受診を検討すべき具体的な症状や状況について解説します。

こんな症状があれば要注意!

陰嚢の違和感や重だるさ

最も多い訴えのひとつが、「陰嚢の中に何か違和感がある」というものです。
特に長時間立ちっぱなしだった日や、運動のあと、お風呂上がりなどに「重く感じる」「引っ張られるような痛み」がある場合は注意が必要です。

このような症状は精索静脈瘤により血液がうっ滞し、周囲の組織に負担がかかっていることを示している可能性があります。

 触れると「ぐにゃぐにゃ」した塊がある

自分で陰嚢に触れたときに、「やわらかいチューブのようなものがもつれている」「ぐにゃぐにゃした感触がある」といった場合、拡張した静脈が皮膚の下で感じ取られている状態です。
特に立っているときに目立ち、横になると消えることが多いのが特徴です。

このような所見は、医師による診察で精索静脈瘤と判断される一つの大きな材料になります。

 不妊に悩んでいる

見た目や自覚症状がまったくない場合でも、夫婦で妊活をしているにもかかわらず、1年以上妊娠に至らないといった場合には、精索静脈瘤を含む男性側の原因を一度疑ってみることが大切です。

日本では不妊の原因の約半数が男性側にあるとされているにもかかわらず、女性側ばかりが検査や治療を受けているケースも多く、結果として原因が見つかるまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。

不妊の問題はカップルにとって非常にデリケートな問題ですが、男性も積極的に検査を受けることで、より早く解決に近づくことができるのです。

これらの症状があるからといって必ずしも精索静脈瘤であるとは限りませんが、逆に言えば症状が軽微でも精索静脈瘤が隠れている可能性は十分にあります。
疑わしい症状が少しでもあれば、まずは泌尿器科や男性不妊専門のクリニックでの受診をおすすめします。

自己判断で放置するのではなく、専門家の診断を仰ぐことが早期治療への第一歩です。

放置するとどうなる?リスクと症状の悪化

精索静脈瘤は自然に改善することはほとんどなく、時間とともに悪化していく病気です。
軽度のうちは無症状であっても、次第に以下のような問題が現れてくる可能性があります。

時間の経過とともに進行するリスク

時間の経過とともに進行するリスク

 精巣の萎縮(小さくなる)

精巣の血流が悪くなり酸素や栄養の供給が不足することで、精巣自体が萎縮してしまうことがあります。
これはつまり、精子を作る機能そのものが萎縮していくということであり、回復が困難になる恐れもあります。

慢性的な鈍痛や不快感

精巣や陰嚢の奥に「重だるい感じ」「ひっぱられるような違和感」を覚えることがあります。
とくに立っている時間が長い日や、入浴後・運動後などに症状が強くなることがあります。

仕事や日常生活にも影響を及ぼす場合があるため、生活の質(QOL)を下げる原因にもなります。

不妊状態の長期化・悪化

最も深刻なのは、不妊の状態が固定化してしまうリスクです。
早期に治療を行えば精子の質が改善する可能性がありますが、長期間放置することでそのチャンスが減少し、治療の選択肢も限られてしまうことがあります。

精索静脈瘤は良性の病気であり、命にかかわるものではありませんが「妊娠を望むかどうか」「精子の状態を改善したいかどうか」によって、治療の重要性が大きく変わってきます。

精索静脈瘤は、命に関わるような病気ではありませんが、「放っておいても大丈夫」と安心してしまうのは少し危険です。
時間の経過とともに、精巣の機能低下や慢性的な痛み、そして不妊のリスクが高まっていく可能性があるからです。
特に「将来的に子どもを望んでいる」「原因のわからない違和感が続いている」といった方にとっては、早めの判断がとても大切になります。

すべての人がすぐに治療を必要とするわけではありません。
けれども自分の身体が今どんな状態なのかを知ることは、将来の選択肢を広げるための第一歩です。
症状が軽いうちに専門医に相談し、必要に応じて検査や治療を検討することで、大切な機能を守ることにつながります。

不安を抱えたまま一人で悩むより、少し勇気を出して情報を得て、行動してみることが、未来の安心へとつながるかもしれません。

まとめ:男性不妊の解決に向けて、専門医に相談を!

「精索静脈瘤かもしれない」と感じたとき、気になるのは診断の流れや検査内容ではないでしょうか。
医療機関で「どのように調べるのか」「痛みや恥ずかしさはないのか」こうした疑問を持つ方も多いと思います。

実際にどのようにして精索静脈瘤が診断されるのか、その流れや検査の特徴についてご紹介します。

診断と検査方法

問診と視診・触診

医師による問診と診察(視診・触診)からスタートします。

症状の有無、不妊の有無、以前の検査歴や病歴などを確認したうえで陰嚢を立った状態と寝た状態の両方で観察し、触診します。

このとき「バルサルバ法」と呼ばれる息を止めてお腹に力を入れる動作を患者さんにしてもらうことで、静脈の拡張具合を観察します。
触診だけである程度の重症度(グレード)を判定することも可能です。

超音波検査(エコー検査)

より正確に診断するために行われるのが、陰嚢の超音波検査です。

これは痛みもなく、体外から機器を当てて見るだけなので、身体的負担はほとんどありません。
超音波によって、静脈の太さや逆流の有無・逆流の程度などが数値で確認できます。
これにより、軽度〜重度の精索静脈瘤を正確に評価することが可能です。

また必要に応じて精巣のサイズの左右差や、血流状態の異常も調べることができるため、早期診断に非常に有用です。

精液検査

不妊の検査として最も重要なもののひとつが精液検査です。
精子の数、運動率、奇形率、精液量などを詳しく調べることで、精索静脈瘤によってどの程度影響が出ているのかを知ることができます。

精液検査は自宅やクリニック内で採取し、専用の分析機器で評価されます。
1回の検査で全体像がわかるため、不妊でお悩みの方には必須の検査です。

男性にとって泌尿器科や不妊の検査は、少しハードルが高く感じられるかもしれません。
しかしいまや不妊の半数は男性側にあることが常識になりつつあります。
恥ずかしさよりも、未来の家族のために、まずは一歩踏み出してみることが大切です。

「検査を受けてよかった」と感じる方も多くいますし、結果として安心につながることも少なくありません。
当院では、そんなお悩みに真摯に向き合い、安心してご相談いただける環境を整えています。

クリニックの紹介

いちおか泌尿器科クリニックについて

いちおか泌尿器科クリニックは、京都駅前に位置するアクセス便利な医療機関です。
当院は泌尿器科全般を幅広くカバーしながら特に男性不妊治療において専門性の高い診療を提供しています。

当院の診療理念は「患者様の生活と未来を支える医療」です。男性特有のデリケートな悩みに寄り添い的確で安心できる治療を行うことで、患者様一人ひとりの健康と希望をサポートしています。

当院の特徴

  1. 最新の医療技術を駆使した治療
  • 当院では男性不妊治療において最先端の手術技術を提供しています。
    精索静脈瘤に対する日帰り顕微鏡下手術、無精子症に対する顕微鏡下精巣精子回収術(micro-TESE)、さらに非閉塞性無精子症に対応するFNAマッピングも行っています。
  1. 患者様の生活に配慮した日帰り手術
  • 他院では入院が必要とされる手術も当院では日帰りで対応可能です。
    平日や土曜日にも対応しており、仕事が忙しい方でも安心して治療を受けていただけます。
  1. プライバシーに配慮した診療環境
  • 男性不妊や泌尿器に関するデリケートな悩みは周囲に相談しづらいものです。
    当院では完全予約制を採用し患者様のプライバシーを徹底的に守ります。
  1. 専門性を活かした個別対応
  • 経験豊富な医師が患者様一人ひとりの状況を丁寧に診断し、最適な治療計画をご提案します。
  1. 総合病院並みの設備と柔軟な診療時間
  • 高度な医療機器を備えた院内設備を有し、泌尿器に関するあらゆる疾患に対応可能です。また忙しい方にも通いやすい診療体制を整えています。

診療内容

  • 男性不妊治療(精索静脈瘤手術、micro-TESE、FNAマッピング)
  • 前立腺疾患(前立腺肥大症、前立腺がんの検査・治療)
  • 尿路感染症、性病治療、尿失禁
  • 勃起不全(ED)や射精障害

アクセス情報と問い合わせ先

  • 所在地: 〒601-8001 京都市南区東九条室町47番地3
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