インフルエンザの予防と対策について、京橋さくらクリニックの院長 分野 正敢 先生にお話を伺います。
季節性インフルエンザの原因となるウイルスのうち、大きな流行を起こすものにA型(ソ連型や香港型など)とB型ウイルスがあります。
B型の感染に比べて、A型の感染では熱が高く出たり、症状が強く現れたりします。
それぞれのウイルスは別のもので、それに対する免疫反応(抵抗力)も異なります。そのため同じシーズンにA型とB型の両方にかかったりすることもあります。
風邪もウイルス感染によるものですが、インフルエンザウイルス感染とは異な り、のどの痛み、鼻水や咳などの症状が中心です。
熱はインフルエンザほど高くなく(37℃前後の微熱)、重症化することもほとんどありません。細菌の感染を合併すると、熱は高くなることがあります。
インフルエンザの場合は、一般的に初めの2日間、高熱が出ることが特徴です。
38℃以上の発熱(A型の場合には40℃近い高熱となる場合もあり)、頭痛、悪寒、関節痛、筋肉痛などの症状の後、強いのどの痛みや咳などの症状が見られます。
普通の風邪にかかっている間に、インフルエンザがうつって高熱を来たす場合もあります。
また、呼吸器疾患や心臓病などを持つ人は、肺炎などへ重症化することが多く、小児の場合には、熱性けいれんや急性脳症などを併発することがありますので注意が必要となります。
早めに医療機関を受診してください。迅速診断キットなどによる診断が可能です。
治療は、年齢、症状や体調にあわせて異なります。
抗インフルエンザ薬や、場合によっては解熱薬や抗生剤が処方されることがありますが、飲み方や副作用については十分な説明を受けてください。
ご自宅では安静にして、休養と睡眠を十分とってください。熱が高い期間は、水分(お茶や水だけでなくスポーツ飲料も)を十分補給してください。
小児の場合、熱の高い期間に異常行動を来たしたという報告がありますので、ご自宅内であっても、熱が下がるまでの間は目の届く範囲で看病してあげてください。
学校保健法では、季節性インフルエンザにかかった場合、「解熱した後2日を経過するまで」が出席停止期間となっています。ですが、出欠席については医師の裁量が認められていますのでかかりつけ医とご相談ください。
職場復帰については決まった法律はありませんので、それぞれの職場の方針とかかりつけ医の指示に従ってください。
一般的には、症状がでてから3日から7日間はウイルスを排出すると言われています。熱が下がっても人にうつす可能性がありますので、学校や職場へ行く場合には、マスクをするなどの配慮をしてください。
風邪の予防と同じように、手洗いうがいを徹底したり、マスクを着用したり、のどの乾燥を防いだり、疲労蓄積や睡眠不足にならないように気をつけることは重要です。
ただし、一旦インフルエンザが流行してしまうと、気をつけていてもうつってしまう可能性が高くなります。予防の基本は、インフルエンザが流行する前にワクチン接種を受けることです。
ワクチン接種を受けていてもインフルエンザにかかってしまう可能性はあります が、重症化の防止に対しても効果があると報告されています。
季節性インフルエンザワクチンの接種後、その効果が現れるのに通常は約2週間程度かかります。その効果は約5ヶ月間持続するとされています。
季節性インフルエンザの流行は12月下旬 から3月が中心となりますので、遅くとも12月上旬までに接種されることをお勧めします。
季節性インフルエンザワクチンの接種には、定期接種と任意接種があります。
定期予防接種の対象者は、65歳以上の方および、60歳以上64歳以下の方で心臓、 腎臓、呼吸器の機能に障害があり日常生活を極度に制限される方、またはヒト免疫不全ウイルス感染による免疫低下のため日常生活がほとんど不可能な方です。
予防接種法に基づく定期接種には、接種期間や、医療機関が限られている場合がありますので、住民登録をしている地域の保険所または医療機関にお問い合わせ下さい。
任意接種は接種期間や受診する医療機関に制限はありませんので、かかりつけ医にお問い合わせ下さい。
ワクチン接種には1回目の接種から一定期間をおいて、2回目の接種を行う場合があります。
これは免疫強化に関する効果(ブースター効果)を期待するものです。
65歳以上の方に対しては、インフルエンザワクチン1回接種により、接種後の抗体価上昇は良好で、重症化を阻止することも可能であったという結果に基づいて、現在は1回接種が推奨されています。
13歳以上64歳以下の方でも、数年以内にインフルエンザにかかっていたり、前年にワクチン接種を受けたりしている方は、1回接種でも十分な効果があると考えられています。
1回接種か2回接種かの最終判断は、時期や体調など医師と十分相談した上で決定してください。
インフルエンザワクチンはウイルスの病原性をなくした不活化ワクチンです。
病原性をなくしたウイルスの成分を用いているため、ウイルスが体内で増えることはありません。 不活化ワクチンが胎児に影響を与えるとは考えられていませんが、国内での調査成績が十分に集積されていないのが現状です。
現在は、接種による利益が、不明の危険性を上回ると考えられた場合に接種するとされています。
授乳期間中でも季節性インフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。
ワクチンは不活化ワクチンですのでウイルスが体内で増えることもありませんし、母乳を介してお子 さんに影響を与えることもありません。
日本小児神経学会の見解によれば、「熱性けいれんの既往があっても、現行の予防接種はすべて行って差し支えない」とされています。
保護者の方は予防接種の有用性や副反応などについての十分な説明を医師から受けた上で、ワクチン接種を受けるかどうかを判断してください。
また、ワクチン接種を受ける場合、接種による発熱時の具体的な対策(けいれん予防を中心に)や、万一けいれんがおこった時の対策について十分説明を受けてください。
季節性インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、接種によってインフルエンザになることはありません。
一般的に副反応は軽く、接種部の発赤、痛み、熱感、腫脹などがありますが通常2~3 日で消失します。全身性の反応として、発熱、頭痛、関節痛、めまい、吐き気などがみられますがこれらも2~3日で消失します。
じん麻疹などのアレルギー反応が現れた場合は、すぐに接種を受けた医療機関へご相談ください。
インフルエンザワクチンは皮下接種ですので、接種部はもまないようにして下さい。
当日は普段通りの日常生活を送って頂いて構いませんが、激しい運動や飲酒は控えるようにして下さい。
お風呂に入って頂いても構いませんが、接種部を強くこすったりしないようにして下さい。
――――――本日はありがとうございました。
お話を伺った先生:分野 正敢 先生(京橋さくらクリニック・大阪市都島区)
【プロフィール】
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