コロナ禍でのストレスについて、みちのクリニックの理事長、道野 博史 先生にお話しを伺いました。
整形外科でリハビリを行っていますが、お薬がないと診療に来ない等、不要不急でないと来院されない方が増えました。実際、会って話を聞かないとわからないこともありますし、お互い声を掛け合うということで安心されるケースもあります。当クリニックでは再診の方であれば電話で容態を伺い、お薬を用意するなどの対応も行っています。
ストレスには様々な要因があります。
今回は3つの視点で立ち向かうべき事柄をお話します。
1つめは、「コロナウイルス感染症への対応」です。
うがいや手洗い、マスクの着用といったことです。また「人と話さない、接しない」のは、社会から排除されるという形になりストレスとなります。在宅勤務をしていると食べ過ぎて血糖値が上がる、コレステロールの増加も起こっています。家事をポイント制にして楽しむ(一日の目標を決め、お風呂掃除は〇ポイントなど)方法や家で出来る運動のアドバイスも行っています。
2つめは、「社会との闘い」です。
「もしもコロナに感染したらどうしよう。」、「家にウイルスを持ち込んだらどうしよう。」などと考えると不安になります。
また感染した場合、言う必要はないのですが、周りの眼も気になります。
会社員であれば、風邪をひいたとき出社しても良いのか、症状が出ていない時に会社からPCR検査を受けて休むように指示された場合の費用負担の心配や休むと仕事が溜まる、同僚に迷惑をかける等、自責の念による不安が生じます。また花粉症の人はマスクに貼るシールなどがありますが、「信じてもらえないかもしれない」、「肩身がせまい」という人もいます。
人は「自分のわからない物」、「どうなるかわからない事」に対して、強い恐怖心が起こるのだと思います。コロナについては、「自分が病気についてわからない」という恐怖心です。それによって起こる過剰な行動が「いじめ」、「村八分」、「自粛警察」のような社会との対策をしなければいけないストレスになります。
3つめは、「行政との闘い」です。
コロナについての新しい方針や制度が出てくる度に、会社では業務が増え、医療現場では対策も変わります。
医師やスタッフは「コロナに感染したらどうしよう。病院が閉鎖になってしまう。」というストレスを抱えています。
当クリニックでは、昨年の3月頃にクラスターを防ぐ為の対策として、「一般の患者さん」と「コロナの疑いのある患者さん」の窓口を分けた診療を実施しました。今は奈良市内でも外にテントを張って診療をしているクリニックも何軒かおられます。テントを張るスペースがあるのは良かったですが、近隣の方に感染予防のためだと理解してもらうにはかなり時間がかかりました。2020年11月に感染症指定医療機関の指定を取りました。それまでは、かかりつけの患者さんの安全の意味合いでの「空間的なトリアージ」をしていました。今はテレビ等で情報を得ることができますが、当時は情報がなく「患者さんの不安をどう取り除くか」を考えて行いました。
患者さんの不安に対しては「周知していくしかない」と考えています。テントでの診療についての説明を行う、予約診療や待ち時間は車で待機して頂く、かかりつけの患者さんには電話診療等、様々な対応を行い、患者さんの院内での滞在時間を極力減らすようにしました。
内科、小児科を受診される発熱のある患者さんは事前に予約をしてもらい、受診はテントで行うなどの対応をしています。今は感染経路が不明な患者さんが増えているので、ドライブスルー形式で診察しています。テントでの診察は、歩いてしか来院できない患者さんに対してのみ時間を決めて行っています。ただ、「人手が足りない」、「防護服に着替える」等の手間がかかりますので、テント診察の患者さんが多い場合は一般診察の前後に時間を分けて、診察を行います。「わからない」事が患者さんの不安を一番煽るので、理解していただけるよう説明しています。
看護師は採血時に、受付は金銭や保険証の受け渡し時に患者さんとの接触があります。対策としては、「ビニールの垂れ幕で間仕切り」、「窓を開けて換気する」、「発熱患者さんの保険証は玄関に設置したポストに投函してもらい、スタッフはジップロックに入れて運ぶ」などの対策を行っています。クリニックで保管するものは、ウイルスが死滅するとされている期間である3日間、ジップロックに入れて保管しています。 当クリニックでは、ミーティングでお互いの不安や意見を出し合い、新しい知識は勉強会で周知しています。
「コロナ疲れ」じゃないですが、手洗いをそんなにしなくてよいだろう、という人もいます。一部のコロナ疲れが強い方は、重症化しないからマスクもしなくてよいだろう、という人たちも見受けられます。そんな時こそ立ち止まって考えて頂いて、自分の家族や大切な人に対して、もしかしたら自分が感染者で人に感染させてしまうかもしれない、という気持ちを忘れずに持ち続けてほしいです。
――――――本日は、ありがとうございました。
お話を伺った先生:道野 博史 先生
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