花粉症の症状と治療について、ひだ耳鼻咽喉科の院長 肥田 宏一郎 先生にお話しを伺います。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりが発症する花粉症、その原因物質として、スギ・ヒノキがあります。関西はヒノキ花粉、関東地方はスギ花粉が多く、昭和40~50年代に盛んに行われた植林の影響で、これらの花粉飛散量が増加しています。関西ではスギは3月、ヒノキは4月がピークです。例えば、山梨県が花粉症の発症率(人口当たりの花粉症の発症数)が最も高く、関西の3~4倍の花粉が飛散します。
花粉の飛散は気候、風向き、地形などによって大きく左右されます。関東平野は北、東、西の三方面から風が吹くので花粉の飛散量が多く東京には花粉症の患者さんの割合が多いようです。東海地方も関東と同じく風の影響で花粉が多く集まってきます。
関西は丹波地方からの北風が運んでくるヒノキ花粉が主体ですので、関東より花粉症の発症率は低いようです。北海道・九州・沖縄も発症率は低いです。
体質もありますが、花粉症は花粉にさらされ続けるにつれて、抗体も蓄積されていき、やがて許容量を越えたときに発症します。昔は発症する前に寿命を迎えていたのと、大気汚染・食物アレルギー・生活習慣の変化が花粉症の増加に影響しています。昭和40年代は今よりスギが多かったにもかかわらず花粉症が報告されなかったのはこれらによると推測されます。
今の花粉症の大きな問題は、低年齢化が明らかに進んでいることです。花粉症の発症年齢は、早くて2歳からで、血液検査でIgE抗体を調べると、2歳で最高値に上がっている症例があります。こうなると幼い頃から一生花粉症に悩まされ続けるという辛いことになります。
はい。花粉を吸い込むことで、ヒスタミンという物質が体内に放出されますので、『抗ヒスタミン剤』というヒスタミンを抑える作用の薬を服用します。
一度ヒスタミンが体内に放出されてしまうと、それを抑える薬をいくらのんでも症状がなかなか治まらず、効果は半分以下となります。そういった理由から、発症前から飲んでおくと、ヒスタミンが放出されるのを抑えることが出来るのです。
薬の血中濃度が有効濃度に達するのに約2週間かかるので、抗アレルギー剤は約1~2週間前に飲み始めるのが効果的です。症状が出てから薬をのむということではなく、症状が出る前にのむことが大切です。さらに継続的な治療が大切ですので、途中で止めてしまうと効果が半減してしまいます。
レーザー治療は副作用のない有効な予防治療のひとつです。レーザー治療でアレルギー体質が治るわけではありませんが、アレルギー物質を吸い込んでも比較的軽い症状で抑えられるという治療です。個人差はありますが、およそ8割~9割の患者さんに効果が表れます。レーザー治療により、花粉症の症状が1年間出なかったという患者さんもおられますし、例年だと薬を3錠のんでも治まらなかった方が、1錠で済んだという患者さんもおられます。また、マスクをするのを忘れて出かけても、それほど症状が出なかったという患者さんもおられます。このように、レーザー治療は減薬にも繋がります。
レーザーで鼻の粘膜を焼くことで、花粉をブロックします。鼻の粘膜を焼くということは、いわば軽い火傷のような状態ですので普通の火傷と同様時間の経過とともに自然治癒力で正常な粘膜に戻っていきます。その為毎年レーザーを当てる必要があるのですが、何年か治療していると、徐々に鼻の粘膜がアレルギーに反応しなくなってきます。手術の所要時間は簡単な麻酔を含めて30~40分で済みます。またほとんど痛みや出血も伴いません。術後も全くいつもの日常生活をおくれます。一昨年から耳鼻科特有の治療であるレーザー治療(下甲介粘膜レーザー焼灼術(かこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ))の保険適用が認められ、3割負担だと手術1回につき9,000円くらいで済みます。レーザー治療の対象は、小学校4年生くらいから75歳くらいまでの方です。ちなみに花粉症のレーザー治療は耳鼻科でしか出来ません。
1週間後に再診していただいて経過を診ます。メインはレーザー治療ですが、症状のひどい患者さんにはステロイド注射による局所治療も併用することがあります。ステロイド注射がよく効くといわれますが、個人差があるとはいえ副作用(血圧上昇・不眠・閉経等)も多いので注意深く治療する必要があります。治療のステップは、薬治療、レーザー治療、ステロイド注射となります。
薬は体質・症状による個人差があるため、ある薬が誰にでも有効とは言えません。知り合いからの口コミなどで「Aさんは効いたらしいから私も効くだろう」という判断はよくありません。個人差が大きいので、その人の仕事や生活習慣、体調などを総合的に医師の診断を受けた上で、薬の組み合わせ、量、回数など適切な治療を受けましょう。手間と時間はかかりますが、きちんと医療機関で受診することで、初めてその人に合ったベストな薬が見つかるのです。薬局で市販薬を購入して服用してもその人にあった薬を見つけるのは難しく、保険の適用もないのでお金もかかります。
眼科と耳鼻科の両方に通院するのは、時間的にも経済的にも大変です。重い眼病を患ってらっしゃる方以外は、耳鼻科でも点眼薬を処方しています。もちろん、眼科での専門治療が必要な患者さんは眼科へ紹介いたします。
花粉症だと思い込んでいても、実は鼻の軟骨が曲がっていたり副鼻腔炎であったりと、違う病気による場合があります。一度は専門の医療機関で受診されることが大切です。
――――――本日はありがとうございました。
お話を伺った先生:肥田 宏一郎(こういちろう)先生(日本内科学会 総合内科専門医 精神科専門医、指導医)(ひだ耳鼻咽喉科・兵庫県西宮市)
【専門医・資格等】
https://hida-ear.com/
https://www.ddmap.jp/0798393788
お知らせ
現在、ホームページ内において、X(旧Twitter)の埋め込み箇所が「通知はまだ届いていません」と表示されている場合があります。
X社の対応待ちになりますので、お手数をおかけしますが、表示下の「Twitterで表示」をクリックし、ログインしてご覧ください。
@ddmap_jp からのツイート