歯周病の予防と治療について 谷口歯科クリニック(JR久宝寺インプラントセンター) の院長 谷口 善三郎 先生にお話しを伺いました。
どちらも、口の中の汚れからくる感染症ですが、虫歯は歯を壊していくもので、歯周病は歯を支える土台となる骨を壊していくものです。
虫歯の場合、最初の頃は冷たいものが沁みたり、甘いものが沁みたりします。その内に穴が空いたり、痛みで夜眠れなくなったり早い段階から自覚できる症状が色々出てきます。つまり、自覚症状や見た目により患者さんが自分で発見し易い疾患です。
これに対して、歯周病は疾患がかなり進んでからでないと歯茎が腫れたり、出血や痛みが出たり、歯がぐらぐらしたりしません。つまり、骨がかなり溶けてしまって、病気がかなり進んでからでないと自分では気付かない疾患なのです。
殆どの患者さんが、「歯茎が腫れてきたので」とか「噛むと痛みがあるので」と言う状態になってようやく診察に来られるわけですが、すでにかなりの骨が溶けてしまっています。溶けた骨は殆ど元には戻らないので、早期発見早期治療が大事なのですが、このような状態になってからでは、できる処置もかなり限定的になります。
虫歯の治療の場合、削ったり、詰めたり、被せたりして形の上で元に近い状態に戻す治療ができるのですが、歯周病の治療としては、僅かに歯周再生療法で骨を造るという方法もあり当院でも行っていますが、適用出来ないケースの方がかなり多いです。 つまり大半は、歯周病の進行をストップして、これ以上悪くならないような処置を施すことになります。
歯周病菌は、他の病気と同じように早く発見して、早く治療することが大切なのですが、その為には歯医者さんへ行って定期的に検査するしかないと思います。先ほど説明したように、初期には自覚症状が殆どないのです。ですから、凡そ3ヶ月に1回位検査を受けるのが良いと思います。歯周病菌も大体3ヶ月で歯茎にダメージを及ぼす位多くなります。また、歯周病は虫歯以上に再発しやすい病気でもありますので、治療をされた後も定期検査を受けられることをお勧めします。
虫歯は歯という堅い組織を破壊するので、簡単に発症するものではありません。しかし、歯周病は歯の周りにある柔らかい組織、歯根膜を攻撃するので、再発しやすいのです。
また、仮に治療中は抗生物質などを飲んでもらって、一時的に菌を減らしたとしても、治療を終了するとまた菌が増えだします。治療により口の中の菌をゼロにすることは殆どできません。お腹にいる腸内細菌と同じですね。
予防のための歯磨きはもちろん有効なのですが、虫歯菌や歯周病菌をゼロにして完全に予防することは、お家だけではできないのです。
その為、健康な歯と歯茎を守るためには、歯磨きの習慣と定期検査をセットで考えていただけると良いと思います。
歯周病が進んでいてもできるだけ歯が抜けないように歯周病の進行を抑えることが第一です。
まず、歯周病の検査を行い、その結果を元に歯石の除去や歯磨きの方法を伝えたり、歯周ポケットが深くなると麻酔をして歯石を取ったり外科処置を行う事もあります。
それでも不幸にも歯を失うことになってしまったら、先に全体の歯周病の治療を行います。虫歯は、虫歯の歯の隣ぐらいまでが病気の範囲ですが、歯周病は口の中の歯茎全体が歯周病にかかっています。
その為、全体の歯周病治療を最初に行います。
それからインプラントや、前後の歯が残っていればブリッジなどで、代りの歯を入れることになります。歯の本数が減ってしまうと、残っている歯への負担が大きくなり、それらの歯も次第にダメージが大きくなって行きますので、それを防ぐためにもインプラントなどの処置を行います。インプラントができない場合は入れ歯などの処置をします。
インプラント手術による治療も、先に歯周病の治療を行ってから行うことが大事です。
特に歯周病は、歯と歯茎の境目と歯と歯の間を清潔にする必要があります。そのためには、ヘッドの小さい歯ブラシが適しています。ヘッドの小さい歯ブラシを、歯と歯茎の境目を意識してそこに45度の角度で磨くのが効果的です。また歯ブラシだけでは、歯と歯の間や歯茎との境目を完全に磨くことは難しいですから、糸ようじや、歯間ブラシなどの補助具を使って磨くのが予防には一層効果があります。高級歯ブラシは、ヘッドが大きくて毛も大量にありますので、歯の表面を磨くのには楽かと思います。また、電動歯ブラシなども同じように歯磨きの時間を短くするのには、便利だと思います。
それでも、歯と歯の間の隙間や、歯茎との境目などの掃除が要らなくなくなるわけではありません。時間がかかるのが面倒な方はテレビを見たり、音楽を聴きながらで構わないので、丁寧にメンテナンスをしてください。
この他の用事をしながら歯磨きを丁寧に行う、「ながら歯磨き」は私のお勧めです。糸ようじや歯間ブラシなど補助器具も使って、ニュースや朝ドラなど観ながら毎日丁寧に磨きましょう。
虫歯菌は小さい頃から変わりなく活発に活動していますが、歯周病菌は30歳を超えたあたりから多くなります。
30歳を超える頃は、どなたも仕事もプライベートも一番忙しい時期だとは思いますが、3ヶ月ごとの定期検査を受けるようにやりくりしてもらえたらいいなあと歯科医をやっていて強く願うところです。
繰り返しになりますが、歯の健康を保つためには、をお願いします。
そうすれば、よく言われる「8020」(ハチマルニーマル:80歳になっても20本以上の自分の歯で食事がおいしく出来る)が実現できると思います。
――――――私も、「ながら磨き」で、8020めざしてがんばりたいと思います。
本日は、ありがとうございました。
お話を伺った先生:谷口 善三郎 先生(谷口歯科クリニック)
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