今年は東京オリンピックの開催年ということで、スポーツ選手の怪我について、こじまクリニック 院長の小島 研太郎先生にお話をお伺いしました。
まず、今回の東京オリンピックについては、コロナ禍という状況の中でいろいろありましたが、私は大変感動しました。いろいろと苦労の多かった選手・関係者には、賞賛の拍手を送りたいと思います。
(本題に戻って)
「痛み」についてですが、「痛み」というのは神経が走っているところに生じるもので、例えば骨自体には神経がありませんので骨から直接痛みを感じることはないのですが、骨の周りにある「
「痛み止め注射」については、ペインクリニックでは「神経ブロック法」という言い方をします。「神経ブロック法」とは、神経を一旦遮断して痛みを止める方法です。
スポーツ選手が打つ「痛み止め注射」は、「神経ブロック法」の一つである「トリガーポイント注射」といって、基本的にテーピングをしながら痛みのトリガーポイント(痛みを感じるポイント)に注射を打つことで、試合中一時的に痛みを和らげる治療法です。もし、完全に痛みをとってしまうと力が入らなくなり、動かなくなって競技自体ができなくなってしまいます。ですから、力は入るけれども我慢できる程度で痛みを緩和する治療法と思って頂ければ良いと思います。
この「痛み止め注射」については、トライアスロンなど一部の競技によっては、ドーピングとみなされる場合もあり、競技ごとにルールが違いますので、使う場合はよく確認された方が良いと思います。
まず筋肉のメンテナンスには、局所を冷やす(アイシング)、マッサージ、ストレッチの3つの方法が考えられます。
局所を冷やす「アイシング」は15年ほど前に導入されたメンテナンス法で、現在では一般にも広まってきました。ピッチャーが投球後に肩から腕にかけて氷や冷却剤を当てている場面をよく見かけますね。
アイシングの効果として
があります。
組織はダメージを受けると、腫れたり、神経が興奮するので熱が出たりします。
痛みや腫れは炎症からくるものなので、炎症を抑えないと痛みや腫れが治まらないという考え方がベースになって進化した方法が「アイシング」と言われています。
ただ、アイシングを長時間し過ぎると体全体を冷やしてしまうことになります。そうなると、血液の温度も下がってきますのでしんどくなってしまい、回復もしません。ですから、アイシングを行う場合は肩とか肘とかを中心に、だいたい15分から20分ぐらいを目途にしましょう。それから、アイシングは体の表面の熱は下げますが、体の奥に熱(
ストレッチの効果としては
があります。
運動をしている時には、交感神経が優位になり、アドレナリンが出て戦う体になっているので痛みを感じにくくなっています。運動が終わる時にストレッチをすることで、体のダメージを回復させる役割を果たす副交感神経を徐々に優位にし、急な痛みや疲れを感じることなく体全体をリラックスさせることになります。運動中に受けたダメージをストレッチによって回復させるのです。
※近年ではスポーツに対する考え方も、選手の体を極限まで疲労させて運動するという考えから、疲労の一歩手前で制限する、また、疲労を回復させて次に挑むという考え方に変化してきています。昔は何試合も一人で投げ抜いていた高校野球でもルールが変わり、一人のピッチャーの投球数に制限を設けて、選手の健康を守っています。それらによって、何人かの投手が継投する試合が多くみられるようになりました。東京オリンピックの野球でも投手に投球制限がありました。
マッサージというのは、皮膚に直接触れて末梢から中心に向かって圧迫することにより、静脈やリンパの流れを改善することです。
特にスポーツマッサージと呼ばれるものは、競技前に短時間(3~5分)緩い刺激を与えることによって筋肉を活性化させることや、競技後の心身をリラクゼーションさせる目的で行われています。
マッサージについては色々な意見がありますが、機械によるマッサージとは大きく異なり、人は他人から触れられることによって、メンタル的に大きなリラックス効果を得ることが出来ます。プロスポーツの世界でも導入されていますので、使い方によって心身のリラクゼーションとして十分効果が期待できるのではないでしょうか。
以上、スポーツ選手のメンテナンスは、アイシング、ストレッチ、マッサージの3つをうまく組み合わせ、複合的に用いることによって心身の状態をベストに保つことが可能となります。
プロ選手のようにトレーナーに依頼するのは難しいかと思いますが、現在では動画などで調べることもできますので、スポーツをなさっている方はご自分に合った方法で行うことも良いと思います。
――――――本日は、ありがとうございました。
お話を伺った先生:小島 研太郎 先生(こじまクリニック・大阪市此花区)
【略歴】
https://kojima-medicalcenter.com/
https://www.ddmap.jp/0664661717
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