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動かしにくい、痛い肩の治療へ(いわゆる四十肩・五十肩)

 

皆さんこんにちは。ついにふたたび、新型コロナウイルス対策としての非常事態宣言が我々の大阪の街にも出てしまいましたね。非常事態の発令に関しては巷でも諸説渦巻いており、どれも一理あるように思います。最も恐ろしいのは過剰に恐怖をあおられて、本当に必要なことを後回しにしてしまうことだと思います。寒い中ですが、からだの維持のために、ウォーキングなどの最低限の運動することや、疾患をお持ちの方はご自分の疾患のケアをきちんと医療機関でなさることが大切だと考えます。コンディションをしっかり整えておかないと、感染症に負けてしまいますのでからだのメンテナンスだけには最小限で結構ですので気を付けていただきたいと願います。

さて、本題ですが、今回は何度もお話ししましたが、理学療法士のリハビリテーションも本格的に始まったこともあり、当院が特に力を入れています四十肩・五十肩の治療に関するお話をあらためてしようと思います。
以前から申し上げていることなのですが、四十肩・五十肩といってもからだのなかで起きている変化は様々です。


加齢や外傷、オーバーユースなどで生ずる上腕骨を肩関節に固定釣りあげるための筋肉である肩腱板の損傷、上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の腱の断裂や炎症、肩関節自体の変形(変形性肩関節症)、肩関節周囲の筋肉や腱に持続する炎症が続くために生じる腱板石灰化など、あげるとたくさんの病態があります。それぞれに対処法が異なってきますので、細やかなケアが必要に思います。
肩関節周辺の炎症のため、運動痛があったり、運動制限が起こったりしているので、炎症による癒着をはがしたり、炎症を抑えて状況を改善したりという治療を行っています。
実際の患者さんの例を何例か挙げてお話ししようと思います。


【症例】
理由なく、肩の痛みと運動制限が生じた。腕は60度程度しか上に上がらず、帯を締めるような動作もできない。夜間に痛みが強い。という主訴で来院された方がいます。もっともよくお見受けする症状です。
疼痛が強めで、運動制限も強いので、このような場合は、肩関節内にステロイドもしくはヒアルロン酸を注入し理学療法士に肩関節の可動域改善運動治療をお願いしています。


おおくの方はこの処置で可動域が回復し痛みがコントロールされるのですが、中には周囲の筋肉や靱帯のこわばりが伴っている方もおられます。肩甲骨と胸郭の関節(肩の裏側)の可動性がなくなっているために、肩の運動が損なわれている場合も多く、肩甲骨と胸郭の筋肉の間を注射液でハイドロリリースしさらに理学療法士に手で肩甲骨の可動性を整えていってもらいます。


また、肩前方の痛みを伴う方も多く、この場合は肩前方から情報にかけての靱帯の周囲の癒着をハイドロリリースで剥離し、その後理学療法士に同じ部分の可動性の調整をしてもらっています。
もちろん、ハイドロリリースは用いる針が細いといっても注射ですので、注射はちょっと、という方もおられます。その場合は、温熱療法や低周波療法と、理学療法士の用手的治療を組み合わせて受けていただいています。
ただ、残念なことに理学療法のみでは、のぞむ可動性に到達しないことも少なくありません。これは、私が注射単独で治療していた時と同様な結果と考えます。

 

長年、私が従事していましたがん治療においては、手術単独、抗がん剤単独、緩和ケア単独のいずれも単独の治療では十分な治療効果を出すことが困難で、相乗効果を狙って複数の治療を同時に行うことが一般的でした。これを集学的治療といいます。
肩関節のトラブルも、同じことで複数の治療を並行することでより高い相乗効果を狙っています。『運動器疾患における集学的治療』と呼んでもよいと思います。

より、困難な症例の方、いわゆる凍結肩のような腕が全く上がらない患者さんの場合はまさにこの『運動器集学的治療』がふさわしい病態だと認識しています。自らの診療経験としてお話しするとすれば、運動制限の強い肩関節障害の場合はなかなかハイドロリリースを駆使しても望む治療点に到達するまでに至らなかったり、ものすごく時間がかかってしまったりしていました。昨年の夏より、理学療法士と共同治療を開始して運動制限の改善が認められ、日常生活の支障がなくなった方が増えてまいりました。

たとえば、来院時に肩が40°ぐらいしか回せなくて、注射治療でも110°程度までの改善だったのが、合わせて治療し始めてから160°以上回る(こうなれば高いところのものが無理なく取れます)ようになったという具合です。
以前は治療限界に阻まれて、肩関節の癒着剥離などの手術をお勧めすることも多かったのですが、理学療法を合わせて治療を行うようになってから何とか日常使用に足りるだけの肩の可動域を獲得してもらえるようになっています。
院内でも、私と理学療法士2名とで治療の方向性に関して頻繁に討論しております。このようなことも治療に奏功しているのではないかと思います。
ふるやまクリニックとしては今後も、肩の治療に力を入れてまいります。お困りの際にはぜひ相談においでください。


エコーで診る四十肩

私どものクリニックには、からだのあちこちが痛くて仕方のない方がよく訪れてくださいます。外傷や年齢に伴う骨や筋肉の変化にともない、様々な症状をお伺いします。


体の痛みの中で最もポピュラーなものの一つに肩の痛みがあります。
おそらく人生の中で一度は、すべての人が体験するのでないかと思うのが、いわゆる四十肩、五十肩というものではないでしょうか。

私自身、40台半ばに差し掛かるころにある日突然肩が痛くなって肩より上に腕があげられなくなったことがありました。その当時は毎日大きな手術をしておりましたので、腕が上がらないことは大変困ったことでした。当時は専門のDrに相談しても、基本的に運動療法であると指導されましたので、痛みに耐えながら教えていただいた運動を繰り返しておりました。

しばらくすると嘘のように痛みが消えたので大変驚いたのを覚えています。ただ、そのあとに肩の運動制限が残っていることはあまり意識しませんでした。今でも肩の運動制限(可動域制限)は残り、十分に腕を回すことはできませんし、帯むすびなども苦手です。そういうものだと思っていましたが、ハイドロリリースの治療を通じて四十肩・五十肩のケアに触れてみると全く違う世界はあることに驚きました。

一般に四十肩・五十肩で語られてしまう肩の痛みを伴う運動制限ですが中身は結構多彩です。

従来のX線のみの診断だと石灰沈着性腱板炎と変形性肩関節症しか診断できませんが、超音波検査を用いると、骨ではない軟部組織の異常である腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、腱板疎部炎などの障害を認知することが可能になります。
これだけある肩の障害にに対して、四十肩五十肩でのくくりならば画一的な治療しかできません。

当院では、以上のことから、診断にはX線と超音波を併用し、超音波ガイドによる注射療法と、薬物療法、物理療法を同時に行っています。

以前のハイドロリリースの項でも申し上げましたが、超音波診断装置(エコー)を用いることは、注射薬を入れたい場所に入れることができるという意味で従来のランドマーク法をはるかにしのぐ方法です。

また、ランドマーク法では到達しにくい、微妙な構造物へのターゲッティングも可能で、関節内注入だけでなく、腱鞘や靭帯などに必要なだけ注入できるメリットは非常に大きいものです。

上記の多彩な疾患に対しても、それぞれに必要な治療部位を選択して注射を行います。

非常に多くの人が人生の過程で経験する四十肩・五十肩を的確な治療でできるだけ早く軽快させ、より長く肩の痛みの少ない人生を送っていただきたいと思います。
肩の治療は、診療時間内であればいつでも施行いたしますので、ご相談ください。